村上龍『村上龍対談集 存在の耐えがたきサルサ』(文春文庫)
 故人となった中上健次との対談のオチの部分がタイトルとなっている。以下、柄谷行人・坂本龍一・浅田彰・河合隼雄・蓮實重彦・庵野秀明・奥村康・渡部直己・妙木浩之・黒沼克史・小山鉄郎・田口ランディ・小熊英二との対談が続く。
 文芸畑の人間や坂本龍一などの昔なじみの友人との対談は、あまり気持ちよく読めなかった。というのも、相手が気心知れているので村上龍自身が安心して毒舌を吐く位置にいられるし、村上龍に対して「その考え方は間違っている」などと言うことがあまりない。もっと言ってしまえば「なあなあ」の雰囲気が多い。
 それに比べて、文芸以外の分野(田口ランディは文芸に加えられるかどうか疑問の余地はあるが、この対談の時期では異分野の人に加えられる)の人は村上龍自身が詳しくないことに精通している分、村上龍に対して提言もできるし、異分野ゆえの新しい考え方を対談中で導き出しているので、そこに読者は新たな価値観を見いだせる。
 ここ十年くらい村上龍作品をこれから読もうと思っている人にとっては、ネタばれになるような内容が含まれていることに注意。また、村上龍が『最後の家族』を手がけたとき、「村上龍がなんで家族をテーマに?」と思った人が多かったようだが、本書を読むと村上龍があの作品を必然として書いていたことがわかる。村上龍がこれから何を書こうとしているのか、この対談集の言葉の端々には、そんなヒントがまだ隠されているかもしれない。(2002/02/18)
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