佐藤正午『ジャンプ』(光文社)
 読み終わったときの後味の悪さ。
 失踪してしまう自分の彼女。そしてその真相を知るのが事件発生から五年後。
 ミステリの構造を持ち合わせておきながら、「自分」「他人」「人生の巡り合わせ」について深く考えさせられる。純文学畑から出てきた人なので、物的状況をただ重ね合わせているだけでなく、「運命を変えてしまった何か」という部分に焦点を当て(この小説の場合はカクテル)その何かに対して翻弄されてしまった自分の人生の儚さが、ひ弱そうな主人公(佐藤正午の小説はたいてい男子の一人称形式で「僕」が喋り、しかも現実に対してあまり積極的でない言動を時折、あるいは頻繁に行う。村上春樹の主人公とはまたちょっと違う)が彼女を探し続けて求めたひとつの結論が、二十代後半の僕をまた大人にさせている過程を文面から吸収できる。(2002/03/06)
戻る