▼滝本竜彦『NHKにようこそ!』(角川書店)
『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』の刊行時に「1978年北海道生まれ・大学中退・引きこもり」という、決して輝かしいとは言えないプロフィールを明かした著者の二作目。それも自らの引きこもり体験を生かした作品だという。
ここには文系男子の大半が体感しているであろう、やるせなさの世界がある。主人公と後輩山崎の、己の不甲斐なさ加減をクスリと自己肥大妄想で無理矢理盛り上げていく、どうしようもない姿によって、読む人を自己嫌悪の渦に巻き込んでいく。この渦は強力だ。ロリコンにはまろうが、エロゲーで一攫千金を狙おうが、それはすべて無慈悲な青春の断片でしかない。それでも語り口調が熱い。本当に酒やクスリでトリップした瞬間に書いているんじゃないか。そうなのか?
「このやるせなさは自分のせいじゃない。誰かが自分をはめようとしているだ」という手前勝手な理論によってNHK(ニホン・ヒキコモリ・キョウカイ)の陰謀である、という理屈をでっちあげるところは、「自分が哀しくて退屈なのは敵がいるから」という理屈の元に世界が回転している前作と同じ。
前作と違うのは、今回のヒロインがお人形さんでしかなかったのに対して、「育ての親が新興宗教にはまっているのを嫌々ながらにつきあっている」ヒロイン岬には躍動感がある。ただ主人公にべったりの関係になるだけでなく、心の闇を持ちながら宗教にもライフスタイルにも一家言を持つ。「あたしよりも惨めな人」と常に主人公を格下の視点で見つめる。サディスティックな言いようは最後の最後まで変わらない。小説世界の中で、不思議少女の概観を備えながらも生き生きしている。そして主人公の泣き所を攻め続ける。著者の卑屈な感覚がヒロインのリアル感を、主人公との対峙から浮かび上がらせている。
大きなお世話ながら、三作目がどうなるか楽しみです。(2002/03/10)
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