辻仁成『目下の恋人』(光文社)
 恋愛短編集。
 少年漫画の画風で無理に少女漫画を書いたような、ごつごつした手のひらで意中の人の肌を撫でているような、いびつさが若干見て取れるようだ。著者としてはいろいろ実験しているのだとわかるのだが……。この人が女性の一人称で書いている短編など、何かしら奇妙な気がする。それくらいこの人の小説は「辻仁成が書いた文章」という、本人の生身を思わせる(と自分では勝手に思っているのだが)
 その中で救いは、『目下の恋人』という表題作がある意味、寓話的な作用を持っていたところだ。でもこの作品の「私」という女性は、それこそ女性から見たら「男にとって都合よく考えられた妄想の中のヒロイン」扱いされそう。(2002/03/12)
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