『ニューヨーク育ち ―わが心の60年代―』アラム・サロイヤン(中上哲夫訳/晶文社)
 実際に読み始めるまでウィリアム・サロイヤンの本だと思ってました。
 息子アラムも、著名人を親に持った人の常で、頻繁に父との比較をされたことが記述されています。
 1960年代、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の音源が街中に流れる頃(ってこのアルバムの音が流れているだけで「サイケだ」という感触がありますが)、ニューヨークにて大学をドロップアウトしたアラムは文学雑誌の運営を通じて、ジャック・ケルアックなど当時の芸術家たちと交流を深め、結婚・出産を迎えて一歩ずつ大人になっていく。それは離婚した両親を持つというひとつの傷から離れる作業でもあったが、やがて父親の死を迎える――。
「六十年代がすでにして郷愁を持って語られ始めているが、六十年代をノスタルジーの対象にしてはならないと思う。それは六十年代に成人に達した人間たちの責任でもある」と訳者はあとがきで述べている。郷愁にしてさらに商売に結びつける人間に対して眉をひそめていた僕にとっては心強い言葉だ。アラムも、あくまで個人の心の声を書き留めているにとどまっている。(2002/03/28)
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