▼村上龍『最後の家族』(幻冬舎)
大学に入学した頃、女の子に無視されたことが原因で引きこもり生活を続けている長男秀樹、やはり引きこもりの経験を持っていた宝石デザイナー近藤とつきあっている長女知美、秀樹のためにカウンセラーに通い、その一方で家族に知られず大工の延江とつきあっている母昭子、そして機械部品会社の営業として、リストラの陰にまとわりつかれながら家のローンのために会社にしがみつこうとする父秀吉――。
内山家の人々を取り巻く環境はやがて、それぞれのかたちで揺さぶりをかけられる。もっとも揺さぶりの激しかったのは秀樹。隣の家の奥さんが虐待を受けている現場を目撃して、無気力に囚われていた秀樹は彼女を救うために奔走する――。
村上龍がテレビドラマに進出するのが是か非か問われ、物語の出来としては「村上龍の作品にしては小品」と言われたり、いろいろ議論を呼んだようだが、自分の作品が新しい分野に届くことに関して自覚的になったことには、素直に拍手を送りたいし、「四人が希望を求め続ける物語」に少なくとも爽快感を味わえた。爽快感のすぐ後に、もっといろんなことを考えなければならないと戒められる物語、というのも世間で数少ないだろう。(2002/04/07)
戻る