HRT

 

HRT(ホルモン補充療法)は危険な薬だって知っていました?例によって、欧米の10年は遅れている日本では、最近になってHRTについて騒がれているようですが、すでに欧米では、HRTを見直す時期に来ているのです。それなのに、このブームに乗っかって、「欧米では50歳を過ぎたらHRTをやるのが常識だ」とか「HRTは若返りの薬です」とか「ビタミン剤のように気軽に毎日のみましょう」などと調子に乗っている医者が山ほどいます。それも、婦人科医に限らず内科医まで。もっとも、クロロキンやサリドマイド、非加熱製剤なんかも平気で処方し続けた人たちですからね、その安直な考え方はいまだに変わっていません。

 

この話題については、書くタイミングを逸していました。なにせ、この事を書こうと思うと、テレビで「HRTは更年期障害の特効薬」だとか、雑誌で「更年期障害特集、もっとHRTをうけましょう」だとかやり出すんですもの。まったく、やりにくいったらありゃしない。

欧米でもようやくHRTが始まって15〜20年くらい経ったので、やっと正当な評価がされるようになってきたところです。で、アメリカの公的機関が調査した結果は「HRTは危険すぎて、これ以上研究は続けられない!!」げっ!つー事は、皆さん毒を飲んでいたってわけ?いやいや、こんな恐ろしい治療すぐに止めましょう。骨粗しょう症の予防や動脈硬化の予防には、もっといい薬がたくさんあるんです。それよか、生活習慣の改善がもっとも大切。薬に頼っていても、いままでの不摂生のつけは、簡単に返せないって事なんです。

そもそも、HRTなんていうのは「更年期障害はホルモンの欠乏から起る。だから、ホルモンを足してやればいいんだ!」という、あまりにも単純すぎる発想から出てきた治療です。しかし、体の方は、閉経の時期になってくれば閉経の体になっていく。それに対して無理やりホルモンを投与したって、体に無理がかかると言うのは、誰もが心配する所。研究していくにしたがって、子宮体癌の確率が増える事がわかった。そこでひるまないのがアメリカ人のすごい所。それなら、もう一つホルモン加えちゃえ!ついでに、効能も更年期障害だけじゃなくて骨租しょう症と血栓症の予防も入れちゃえ!そうすれば副作用も減るはずだし、副作用に対して、効能も大きくなるじゃないの。しかも、更年期の人がみ〜んな5年から10年のんでくれれば、安い薬だって大きな利益になる。これぞ一石二鳥。ガッハッハァ!

しかして、アメリカでは多数のHRT犠牲者がでた訳です。それに比べて日本人は賢い。まず、アメリカ人と比べてヒステリックでないから、多少更年期の症状が出ても、じっと耐え忍んでいる。したがって、くだらない薬をのんで副作用におびえる事が無い。そのうえ、大豆製品を良く食べる。納豆や豆腐などは植物性の女性ホルモン類似物質が入っているので、骨粗しょう症になりにくいとは昔から言われていたことです。(今更アメリカ人はイソフラボンなどという大豆の成分を、豆腐や納豆の何倍ものお金を払って買っている。)しかも日本人はレベルが高いので、ホルモンの副作用の話をすると、すぐに、怪しい薬だと気がついて薬をのまない事を選択する人が多い。(私のクリニックでの印象)そのうえ、漢方薬と言う強い味方があるので、そちらを使って安全に治療を続けられる。

いやぁ、日本人万歳。やっぱ、日本の女性はエライ。だから、やたらとホルモンなんかに手を出さないようにしましょう。ただし、卵巣機能不全の治療のために半年程度のむホルモン剤は、基礎疾患が無い限り危険は少ないので、ご安心を。

だいたい、命に関わるような重症な病気でもないのに、何年も薬(漢方以外)をのまなきゃいけないなんておかしいと疑ってかからなければいけません。もともと、生活習慣病なんてその名の通り生活習慣が悪いから起る病気なんだから、まず、生活習慣の改善が必要でしょう。それをしないで、薬で治そうというのは、ダイエットするのに薬に頼っているのと同じです。そういえば、中国製のダイエットの薬で亡くなりましたねぇ。くすりって、ホント、怖いんです。むやみにのむもんじゃありません。マジで。

HRTについて言えば、5年以上くすりを続けた人は乳癌のリスクが40%以上増える。とか、心筋梗塞は60%以上、鬱病のための自殺は通常の2.5倍に増えるなどのデータが有ります。こんなの、10年も前に言われていたけど・・・。よく、雑誌やテレビで「ホルモンを二種類(エストロゲンとプロゲステロン)にして子宮体癌は減った」などといっていますが、これも、追加したホルモンで更に癌の可能性を増やしていると言う説や、追加したホルモンの量では子宮体癌を予防できない(癌の治療に使うのはHRT治療の40倍以上)とも、いわれています。

さらに、HRTでは骨塩量(骨のカルシウム量)を増やす事は出来ませんが、最近の骨租しょう症治療薬では、骨塩量を増やす事が確認されています。コレステロールについても、HRTでは長期続けるとコレステロールは元の値に戻ると言われたり、動脈硬化がすでにある人はかえって血栓をひどくする事があるので使えないと言われています。つまり、骨粗しょう症や血栓症の予防にはあまり役に立たないのです。

と、いう事は、せいぜい汗をかいたり顔がほてったりの治療をするのに乳癌や心筋梗塞や鬱病のリスクを背負うという事なのです。ウ〜ン、少なくとも、わたしゃ家族には薦めないな。まぁ、癌になると言うのは分かっていても煙草を吸う人もいるくらいだから、それを考えれば、乳癌になっても汗はかきたくないと言う人も居ておかしくないので、HRTを使うかどうかの選択は自由だと思いますが・・・。でも、きちんと副作用を知って使うようにしてください。10年先に後悔しないように。

結論!HRTは、顔のほてり、発汗を抑えるのに有効です。しかし、心筋梗塞・脳梗塞などの血栓症、乳癌、鬱病などの危険性を高めます。決して、「ビタミン剤のように気軽に」のめる薬ではないという事です。

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