とかくこの世は悪党だらけ。悪党に徹してる奴ほど、悪そうには見えないのが世の常。ニコニコしながらたんまりいただく。これは、一般企業でも医者でも同じ事。だから、ニコニコ都合のいいことばっかり言う医者は怪しいって言うんだ!言語道断、魑魅魍魎、悪霊退散、奇奇怪怪。さぁてお立会い、一体、本物の悪党はだれ?

 

日本医療犯罪ファイル 不正請求をしているのは誰だ!

1.     近所のあまり評判の良くないクリニック。けっこううっとうしいオヤジ医者が院長で、昔かたぎにいばりくさっている。あまり行きたくはないけれど、近くに他にクリニックもないし大学病院は待たされるし、ま、癌検診くらいなら、しかたないっか。事務的な受付を通って診察室へ。あまり混んでないし、ここのいいところはそれだけかしら?オヤジ医者に呼ばれて中に入ると、ふてぶてしい態度。「はい、今日はどうしたの?」「癌検診をお願いしたいんですけど。」「何か、症状は?」「いいえ、何も症状はないですけど。」「じゃぁ、自費の検査ね。」「え?他の病院は、保険でやってくれましたよ。」「いや、何も症状がないときの検診の保険診療は認められてませんよ。」「ええ!じゃぁ、やめます!」結局、何もせずに帰ってきちゃったけど、やっぱり、遠くても評判のいい医者に行かなきゃね。ああやって、患者さんが少ないから、自費診療をして儲けようとするんだわ。いやな医者。値段聞いたら、保険で払う代金の2倍くらいの値段だったし。あれが不正請求って言うのね!!

2.     と、言うわけで、次の日、遠くの評判のいい病院に行ってみたら、やっぱりいいわねぇ。ホテルと見まがうほどの立派な玄関、大理石のフロア、待合室じゃなくてロビーって感じだわ。うっとり。受付の女の子も皆ニコニコしながら様付けで呼んでくれる。さすがに、人気の病院だけあるわ。これだけのサービスなら、ちょっと待たされてもぜんぜん気にならない。診察室に入ると、パリッと糊のきいた白衣を着た優しそうな先生。物腰も柔らかいし、何でも話せそう。「あの、子宮癌検診をお願いします。」「はい。何か、具合の悪いところはありませんか?」「いいえ。何もありません。あ、他の病院で、保険は使えないって言われたんですけど。」「はい、当院では患者様の負担を少なくする為に、できる限り保険診療をさせていただいています。」ほ~らごらんなさい。やっぱり、あの医院はいんちきなんだわ!!値段も、あっちの医院の約半分。やっぱり人気の病院はサービスが違うわね!!

3.     しばらくしてから、生理痛がひどくなっちゃって。でも、旦那もいないし、交通手段もないから、結局、近くの、あの気に入らない医院に行くことになっちゃった。まったく、嫌になるわ。電話の対応もなんだかふてくされた年寄りの看護婦が出て、やなかんじぃ。行ってみると、その年寄り看護婦が出てきて、「はい、電話の方ね。どぉぞぉ。」ふぅ。お腹痛いのに嫌になっちゃう。診察室に入ると「はい、どおしたの?」ああ、時間外にかかるとますますふてぶてしくなる。よれよれの白衣着ちゃって、あの病院、見習いなさいよ!でも、とにかく痛み止めもらわなきゃ。「生理痛がひどくて…、痛み止めください。」「生理痛ねぇ。いつも、ひどいの?」「はい、だんだんひどくなってくる感じです。とにかく痛くって…。」「う〜ん、じゃぁ診察するから。」ええ!このお腹痛いのにしんさつぅ?いやだぁ、薬をちょうだい!でも、有無を言わさず診察台にあげられて超音波。「ん〜、もしかすると内膜症かなぁ。少し卵巣が腫れてる。」そんなこといいから、薬くれぇ~!「うちは院外処方で、今日は、ここにある分の痛み止めだけ出しておくから。明日また新たに処方箋を出します。」ええ〜!何で、明日また来なきゃならないのよぉ~。こんなお腹が痛いのに、また、明日も再診料取る為に来させるなんて、サイテー。やっぱ、来なきゃ良かった!

4.     次の日も、やっぱり、お腹痛くなってきた。旦那に早く帰ってきてもらって、あの、サービスの良い病院へ!お薬もしっかりもらってこなきゃ。病院に行くと、時間外でもきちんと対応。ニコニコして事務の人が迎えてくれる。先生も、やっぱり親切。「生理痛ですか。つらいですねぇ。お薬を出しましょう。」ああ、これこれ、私の望んでいた診療はこれなのよ!「うちは院外処方ですから、1日分だけ病院にある薬をお出ししておきます。処方箋もお渡ししておきますから、明日、薬局が開いているときに取りにいかれてください。」ああ~、まさに完璧だわ。不正請求いんちき病院とは、ぜんぜん違うわね!

 

問 さて、不正請求いんちき悪党病院はどちらでしょう?

答 サービス満点の人気のある病院

な、なんでよぉ!そんなのおかしいじゃないのぉ!!でも、保険診療というのはそういうものです。

 

保険診療では、予防的な検査・治療や、健康診断などはカバーしていません。ですから、癌検診を保険で支払うのは、明らかに不正診療です。人気の病院は、子宮膣部糜爛や子宮ガンの疑いという病名を無理やりつけて保険診療にしているのです。また、自費の値段が保険の自己負担の2倍というのも、インチキではありません。なぜなら、本来、保険の自己負担は3割(社会保険本人は2割)になりますから、自費で請求されると3.3倍になるはずです。つまり、近所の医院は、良心的な事に、保険で行う料金の2/3の値段で診療しているということなのです。

 

さらに、診療として、生理痛だとしても、きちんと診察するというのは大切な事です。時には、生理痛と思っていた症状が、子宮内膜症による卵巣嚢腫の破裂である事もあります。また、他の疾患が、偶然、生理の時に重なっているかもしれません。今まで、定期的にその病院で検査を受けていた方ならまだしも、緊急で飛び込んできた患者さんに、痛み止めだけを出すというのは、正しい診療とはいえません。さらに、薬の処方は、自分の病院で処方したものと院外処方を同時には出せません。ですから、翌日、新たに院外処方箋を出すというのは、正しいやり方です。(他の日に来院した事にすれば良いとの反論はあるかもしれませんが、それは、来院日の詐称になります。)さらに、詳しい検査などは、診療時間中にきていただいて、きちんと行う必要がありますので、翌日来院という指示は良心的といえましょう。

 

緊急で時間外に病院にかかっても、それで診療がすむ訳ではありません。夜間診療は、あくまでも緊急の処置のみで、

検査も治療も十分にできるわけではありませんから、きちんと、診療時間にもう一回かかって、しっかりと診てもらうべきです。ただでさえ、夜間は人員が足りない上に、労働基準法の改正が行われると週44時間労働になって、今まで病院の都合で無理やり働かされていた看護師や検査技師まで、きちんと休まなくてはいけなくなります。当然、さらなる人員不足となり、時間外の救急などは、それこそ阿鼻叫喚、酒池肉林(?)。血ほとばしり肉引きちぎれる事態となるでしょう。今現在であっても、救急指定の名を掲げながら、当直は大学から手伝いにきた研修医一人、定年過ぎた看護師一人。検査技師を呼べば1時間でようやく到着。といった病院も多いのですから。手術のために担当医師を呼ぼうと思ったら、病院到着まで1時間以上(大学医局からの派遣などでは1~2年で他の病院に変わるので、そのたびに引越しをしたりしない。そのため、けっこう遠くから通っていたりする)なんてことも、よく聞く話です。

 

 いつも書いていますように、医療はサービスだなんていっても、本当のサービスとは何か?果たして、マクドナルドのように、スマイルと「いらっしゃいませぇ〜」という掛け声だけでサービスが成り立つのか?というのは、大きな問題であります。もちろん、医者はすべて熟練していて間違えのない医療を行うという前提のもとで、もっとサービスを良くしようということなのでしょうが、医療として成り立っていないような事をやっていながら、サービスだけはマクドナルドに勝るとも劣らないというような病院が、少なくないというのも事実です。そして、多くの患者さんが、スマイルと「いらっしゃいませぇ〜」に騙されて、病院の良し悪しを判断をしている限り、その手の病院は増殖し続けるのです。

 

 それにしても、小泉さんよぉ、負担を3割に増やして、医者の技術料を減らすのはいいけど、そんな薄利多売の医療じゃ、まともな医者は育たんぜ。それより、医療費の5割を占める高額医療を、現行の保険以外のところから出す事を考えたり、複雑化した保険制度を見直して縮小を行ったり、つぎはぎだらけの保険点数を、抜本から見直して、新しい医療に対応したり、医者の能力によって技術料を変えたり、慢性疾患でなければ、早く治る方が点数が高くなるように設定したり、患者さんのニーズによって自由診療を行えるようにしたり、インチキ病院をちゃんと見張るようにしたり、色々やる事があんだろうよ。こんなやり方じゃぁ、そのうち世の中、ぜぇ~んぶ、ケンタッキーフライド病院になっちゃうぜ。「いらっしゃいませぇ、本日は血清コレステロール検査がお安くなっております。癌検診とセットにされると、さらにお安くなりまぁす。胃内視鏡検査はいかがですかぁ?」やってろ、やってろ!

 

病院に行って、いらっしゃいませぇは、ちょっとキモイかなぁ?などと悩みつつHOME