癌検診していれば
癌にならないのか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


先日、NHKで癌検診の見逃しという問題を取り上げていました。毎年癌検診を受けていたのに、癌の発見が遅れたという話題でした。でも、本当に毎年癌検診を受けていたからって癌の早期発見ができる保障があるのでしょうか?

 

1.         癌検診のほとんどは癌そのものを見ているわけではない。

 肺がん検診、乳癌検診、胃がん検診、大腸がん検診、子宮癌検診など様々な癌検診がありますが、子宮癌検診以外は癌そのものを見ているわけではないのです。肺がんはレントゲンで癌の影を見ているだけですし、乳癌検診は癌の塊りを表面から触っているだけですし、大腸がんは便に血液が混じっているかどうかの検査です。胃がんの検査は、最近では血液中の酵素の量を見る検査です。唯一、子宮癌検査は、細胞を採取して顕微鏡で検査をしています。つまり、癌検診といっても、癌そのものを見ているわけではなくて、癌が大きくなってきたときに見える影や出血、癌によって少なくなる酵素などの症状を見ているに過ぎないのです。         

 

2.         癌検診の効果は統計的に検討される

 当然のことですけれども、癌検診というのは多数の人に対して行われることで、その効果は、集団の統計的な結果より検討されます。つまり、検診を受けたある人の癌が治るかどうかとういう問題ではなくて、何万人といる人たちの中の死亡率がどれだけ下がるかという事です。本来なら、死亡率0%になるのが理想的ですが、癌という病気の性質上、そううまくいくはずがありません。従って、癌検診を受けた集団と受けていない集団との間で、癌の死亡率がどれくらい下がったかという事で効果をみるのです。つまり、個々をみれば、癌検診を受けようが受けまいが関係なく癌で亡くなった方もいたというわけです。しかし、個々の問題は統計上の処理では関係ありません。例えていうなら、エアバッグで助かるか助からないかという問題と同じような物です。エアバッグがあれば、統計的に助かる可能性は高くなりますが、死ぬか死なないかは個々の事故によって違うわけです。

 

3.         集団検診はコストベネフィットが優先される

 集団検診は、たくさんの人を対象に公のお金を使って行う物ですから、当然お金がかりすぎてはいけません。いっくら精度の高い検査でも、時間がかかりすぎたりお金がかかりすぎたりすれば、たくさんの人に検査を受けてもらうことはできません。また、難しい検査を受ければ、それだけ検査のための合併症が起こる可能性も増えるわけでです。そうなれば、集団検診の意味は無くなってしまうのです。したがって、安くて手間がかからず誰でも受けられる検査というのが集団検診の条件です。そのためには、精度が低くても、より、安い検査を選ばなくてはならないこともあります。極端な話し、発病率が10%の病気として、精度は高くても手間がかかって高価な検査で100人しか受けられないが10人助かるより、精度は低くても1000人の人が受けられて70人の人が助かる方がより良い癌検診と考えられるわけです。(前者では未発見者は0人だが、後者は未発見者が30人となる。)

 

4.         しかも、検診の方法そのものに問題がある

 と、ここまで書いてしまうのが、このH.Pのやばいところです。アメリカでは、すでに、乳癌の検診はマンモグラフィーを中心にしています。触診では、発見率が低いからです。アグレッシブな研究者は、マンモグラフィを3ヶ月に一回受けるべきだとも行っています。それによるX線の被爆の影響は、乳癌の影響に比べれば低いというのです。最近、やっと日本でもマンモグラフィを取り入れることが検討され始めましたが、機械が高いこともあってなかなか普及はしなさそうです。懸命な方は、乳癌検査とは触診ではなくてマンモグラフィであると考えるべきです。また、肺のレントゲンも、元をたどれば、肺結核の検査であって、肺がんの検査ではありませんでした。一方向からレントゲンをとって、どんなに熟練した医者が見ても、見つからない物は見つからないのです。確かに、別の異常があって、肺を調べる場合には有効かもしれませんが、何も症状がなくてレントゲンをとっても、あまり意味はないのです。(証拠に、肺癌検診の誤診率は25%くらいあるといわれています)胃がん検診も、萎縮性胃炎の状態をみているだけで、癌をみているのではないので、必ずしも癌が見つかるとは限りません。また、癌検診で陽性とされた方も萎縮性胃炎であることがほとんどです。大腸がん検診も、便の中の血液を調べるだけで、昨日食べた血の滴るステーキから痔まで、とにかく消化管の中に血があれば陽性に出るわけです。また、ごく初期の小さな癌では、出血はないもありますので、診断できないことになります。子宮癌検診も、いわゆるバス検診や自己検診などでは十分に必要な部分の細胞が取れないため、精度が落ちます。また、癌検診に使う器具によっても精度が落ちる事があります。

 

5.つまり、癌検診は格安のセット料金なのである

 癌検診は、マクドナルドのバリューセットです。確かに、混んでいるときに一つ一つ選ばなくてすむし、全部合わせるとちょっと安いし、ということでお得な気分がしますが、よぉく考えてみると、本当はシャカシャカポテトが欲しかったのに一緒につけることができなかったり、シェークを飲みたかったのにコーラを飲まざるを得なかったりと、だいぶ自分の意志を曲げて頼んでいるというところがあります。癌検診も、本当は家族に乳癌の人がいるので詳しく検査したいんだけどとか、工場地帯にすんでいて肺がんが心配なんだけど、なんてことは、ほとんど無視。ただ、誰でも同じように検査を受けるし、その結果を診るわけです。マックのシェークを飲めなかったのなら、損した気分だけですみますが、癌検診をきちんと受けられなかったら、命を失うかもしれないのです。こんな大切なことを、安いからという理由だけで、自治体の検診だけに任せてしまってよいのでしょうか?自分のシェークは自分で選ぶ。自分の検査は自分で選ぶ。というくらいの意気込みでいなければ、当然のように(統計的に)癌が発見されない可能性があるのです。

 

6.        やっぱちょっとお金はかかっても信頼できる医者に頼もう!

 あくまでも、検診はバリューセット。やっぱ、自分の好みを考えるなら、主治医に頼むしかないでしょう。おまけがついてなくたって食べたい物を頼まなきゃ。おまけは食べらんないしネ。もちろん、症状があれば保険を使うことができます。だから、いつも行っているちょっと小太りでメガネかけたさえない駅前の医者。でも、まじめで、医学的なことになるとちょっと融通が利かないけれど、一生懸命やってくれる自分の主治医。を見つけて、一度きちんと検診を受けてみると良いでしょう。それで、安心なら、しばらくは自治体の検診で診てもらう。でも、自治体の検診なんて、たいてい研修医のこずかい稼ぎだったりしますから要注意。まぁ、買い物のついでに受けておくくらいに考えておきましょう。本当に心配なときには、やっぱり、近所の信頼できる自分の主治医でしょう。そして、自治体の検診を受けても、何かおかしいと思ったら、いつもの医者のところに行って相談してみた方が良いでしょう。本当です。何せ、これまで書いてきたように、自治体の集団検診はあなた個人のことを考えているわけではなく、自治体が受け持つ集団全体のことを考えているに過ぎないのです。利用はするけど、それに頼りきってしまえば、裏切られることもあるということ。よぉく頭にいれておいてください。

 

番外.癌検診の心構え

 癌検診に行くときに、自分が癌になったらどうするかよぉく考えておいてください。なにせ、癌が有るか無いかを調べに行くんです。万が一癌の疑いがあったときにうろたえないように、癌になったらどうするか。一番信頼できる方と話し合っておくべきです。そして、もし、癌といわれたらどうするか、よぉく考えておく必要があります。癌検診の結果が必ずしも「陰性」と返ってくる保障は無いのですから。

 

やぁねぇ、癌検診てそんなものなのぉ?と、不信感を抱きつつHOMEへ。