一体どういう事なんだか?
 

 

 

 

 

 

 

 


インターネットやら、雑誌やら、はたまた医者の間のうわさやらで、あの医者がとても流行っているという話しを良く聞きます。そういう医者のほとんどは、「何で、あんな医者にかかる人がいるんだか、わかんねぇよなぁ?」と、医者仲間が首をかしげる医者だなんてことは、かかっている人は知る由もないでしょう。よもや、何か医療事故が起こった時、知っている医者仲間からは「やっぱねぇ。あの医者にかかるという事が、すでに自殺行為なんだよなぁ。」なんて思われているなんて、思いますまい。

 

 どこの、何病院の何という医者なんだかなんて無粋な事は言いますまい。一応、公共の媒体ですから、そういうルール違反はいけません。まぁ、私、貧乏医者ですから、あちこちの病院にちょこちょこお手伝いしに行くわけです。そうすると、その病院の院長の考えている事が、よく分かる。へぇ、なんて感心して、ちょっと方法をパクったりさせてもらう病院もあれば、あまりにもあからさまに金儲けを考えていて、吐き気を催すような病院もあります。でも、患者さんはけなげに通っている。かわいそうだけど、院長の方針ですしね。まぁ、質問されても「いやぁ、私は臨時ですから。院長のときにいらして、良く聞いてみてください。」なんていっちゃうことが良くあります。人によっては、かなりいいとこ付いている方もいらっしゃいますが、しかし、そうそうそのとぉり!なんて言ってしまうと、あとでこっちが大変な事になってしまうし、まぁ、ちょっと気が付かせてあげるようなことを言います。気がついてくれればいいんですが、大抵、院長の意見にしがみついて、私のいう事をおかしいと思う事が多いようですね。

 

 そういえば、医療保険の制度の複雑さも問題があります。この間、某医院の院長と話しをしていたら、「せっかく保険を使ってあげようと思ってるのに、俺のいう事に気がつかないんだよなぁ。」と、ぼやいていました。保険診療は、何かの症状があるときにしかできません。つまり、ただの検診であるとか妊娠などは自費診療にしなくてはいけないことになっているのです。しかし、初診料からすべて自費診療だと相当お金がかかる。それで、その院長は、患者さんの負担を減らすために、何か症状があるといって欲しいので、いろんな事を根掘り葉掘り聞くわけです。しかし、患者さんはそんなに根掘り葉掘り聞く事をかえっていぶかしがる。結局、何もありませんという事で、自費診療になってしまう。もちろん、人間としての良心に欠ける様な医者は、躊躇せずに勝手に保険を使って、しかも、分からない事をいいことに、やっても無い診療まで追加したりしておいたり、自費診療で多額の診療費を払わせて何食わぬ顔。のどちらかです。それでも、あの先生はいろんな検査をしてくれるの、安くやってくれるのと、平気で不当な評価をしていると言うのが事実なのです。

 

 まったくやりにくいやねぇ。保険組合の言うとおりにしていたら、ウチの診療所に来る患者さんの3分の1は自費診療じゃないですか?でも、われわれは努力しているんですよ。何とか、症状を聞き出したり、ばあいによっちゃ、「生理痛、あるでしょう?」なんて、誘導尋問までしちゃいますからね。症状さえあれば、保険診療しても良いわけですからね。苦労しますよ。ほんとに。

 

 しかし、悪徳医者にとっちゃそんなことは関係ないのです。何でも良いんです。病名さえつきゃ。なぜなら、保険の監査のやり方がそうだから。ただ単に、レセプト(保険の請求書)に書かれた病名と治療や薬があっているかどうか?診療に役立っているかじゃなくて、机上で決定された保険の基準に合っているかどうか?という事だけが問題となるわけです。まったく、アレは何とかならんのかね。要するに、世の中には悪徳医者なんて一人も居なくて、みんな、きちんと診療して、きちんと病名をつけている。だから、レセプトに書いてある事項を確認すればよい。という事なんですよ。でも、保険で決めているのは、最低限の事ですから。保険どおりの診療をしていたら、いくつ医師免許があっても足りない。それで、しゃぁないから治療にそった病名を、無理やり入れる。そんなんばっかです。それで、何とかなっている(と勘違いしている)ので、誰も何とかしようとしない。中には、やむを得ずじゃなくて、保険の監査で何も言わないからといって、やっても無い検査を入れてしまう。ところが、それもまた、ひどい話しで、暗黙の了解になっているような処置もあったりで、もう、何が悪くて何が良いのやら良く分からない。その道のプロに聞いても、「それは、保険の解釈の仕方によって、請求の仕方が違いますから。」なんて始まっちゃう。おいおい、憲法9条の問題じゃねぇんだぞ!

 

 そう、それで、悪徳医者はそういうあいまいなところにつけこんで、患者さんに無茶苦茶な請求をするわけです。でも、3割負担だったら、5000円余計に請求したって、1500円窓口で払うだけですからねぇ。そりゃぁ、気がつきにくいでさぁねぇ。ああ、おそろし。じゃ、いつもより高く払ったから、おかしいかと言うと、一ヶ月に一回しか請求できないというのもあるし、一回に二つは請求できないけど、二回に分けたときには二回とも請求できるなんてものもあったり、二週間に一回までとか、一ヶ月に3回程度とか。とにかく、ややこしい。やってる方も、よくわかんない。だから、よっぽど大きな違いがある場合でないと、患者さんには分からないのです。下手すると、その医者が良心的にやったことが値段に跳ね返ってきて、抗議をしたらかえって恨まれるなんてこともありうるわけで。まぁ、そういうところを狙って、分からないように請求するのが悪徳なんですがね。

 

 しかし、保険診療の違法請求なんていうのは、まだ、可愛い方で。医者も技術職ですから、センスの有る無しは、結構、大切なんです。ところが、何をやっても、失敗ばかりしてしまう奴が居る。よく見ると、分かってないのに分かっている気になってやっていたり、うまくできたつもりで間違えていたり。それは、目を覆うばかりです。そういう人が、他人の話しを聞く人ならいいですけどね。大抵、自分のやっていることが正しくて、他のやつらは俺を馬鹿にしているなんて思って、聞く耳もたないやつ多いんです。そうすると、どうなるか。分かりもしないのに、いつのまにか年だけとって、お偉い先生になられてしまうわけです。お偉くなられても、やはり失敗ばかりでね。でも、そうなると、今度は裸の王様。時には、そういう人が教授になったり、院長になったりすると、もう、止められない。医療事故の大量生産。「医療保険各種取り扱い・医療事故各種取り扱い」みたいな。けれど、悲しい(?)事に、多くの場合、人間は自然に治りますから、患者さんは「あの先生のお蔭で治った」などと勘違いしてしまうのです。しかも、そういう医者は、医療はできないくせに、宣伝にはたけていて、あちこちで宣伝するもんだから、もう、腕とは裏腹に大人気。かくして、知っている医者が皆あきれる人気病院が誕生するわけです。いろいろな宣伝で有名な某病院の院長だって、当時の同級生に聞いてみれば、「あの馬鹿いいかげんな事ばっかやってたのに、今じゃ院長様々だ。相変わらずいい加減やってんのに、儲けるだけ儲けてんねぇ。」なんて言われている訳です。

 

 そういう医者、多いんですよ。実は。ちょっとした駅前のクリニックなんかで、人気のあるところ。周りの医者からは、「あそこでへんな治療されて、逃げてくる人多いんだけど、人気あるんだよねぇ。」なんて評判なんですけど、当の患者さんはどこからどう聞いてくるのか、いい病院だと思っている。なにをどう評価しているんだかさっぱりね?医者になれば、どの科でも看板に書けるけど、本当は、せいぜい似かよった二つの科をやるのが限界ですよ。特に、外科系は何年も研修しなかったら、絶対にうまくならない。でも、平気でいくつもの科を掲げている病院あります。もちろん、各課ごとに専門医が居ればいいですが、小さなとこだとすべて一人の医者が切り盛りしている。今の医療は、一人で何でもできるほど甘くはありませんや。そういうの、ほとんどインチキです。患者さんにとっては、一つの医院で全部診てもらえるのは、いいかもしれませんけど、医者はスーパーマーケットじゃないんだから、やめといた方がいいですぜ。

 

 流行っている医者と言うのは、昔一緒にやっていた医者に話しを聞くと、「ああ、アイツが開業できたの。よかったねぇ。」と、言うような医者が少なくない。(もちろん、そうでない場合も多いけど)で、事故なんかも結構多いんだけど、闇から闇へと葬り去って患者さんには知られない事が多いんだな。大体、良心的な医者は、自分のできる範囲をわかっているから、ある程度患者さんがふえると、予約制にしたりして患者さんの数を絞る事が多いんです。ある程度以上増えると、目が行き届かなくなるから、十分な医療ができなくなる。それをしない医者は、医療より金儲け中心と考えてよいでしょう。別に、診てくれないからと言って、意地悪なわけじゃないんですよ。無理して診て誤診したりする方が、よっぽど意地悪だと思うんですがねぇ。それが、分からない方が多いようで。あそこは、混んでいるから、きっと人気のある良い病院よ!なんて思っちゃうんだろうなぁ。ま、そういう考えでかかるのなら、そういう病院にかかってみれば?とも思います。って言っている私が意地悪?

 

 何回も、いろんなとこに書いてますけど、少なくとも、医者を選ぶときには、人気で選んだら大変な事になります。地道にやっている、まぁ、そこそこ流行っている医者が一番。おおはやりしている(ように見える)医者は、どこか怪しいと思ったほうが無難です。大体、そういう病院は、待ち時間長くて、ろくに診療してくれないし…。ろくに診察できてないのに、「ワハワハ、患者が沢山来てる!もうかってまっせー!」などと考えている医者なんて言うのは、ろくな奴ではありません。そういう医者とは、話すだけでも胸糞悪くなる。ホント、やめといた方がいいですって。思い当たる病院にしこしこと通っているようなら、是非、他の医者にも尋ねてみるといいでしょう。(あ、これ見て「お・おれのことかぁ!」と、怒っている方。そう思うという事は、そうではないという事です。そういう人は、誰に言われても、そんな事してるって、自分じゃまったく気付ていないですから。ハイ。)

 

じゃ、そういう事って結局どういう事なんだ?という疑問を残しながらHOME