外来をやりながら、こう考えた。医に働けば角が立つ、情に棹差せば流される、医事を通せば窮屈だ。とかく医の世は住みにくい。

 

いやいや、マイりますなァ。保険改正。何がマイるかというと、改正する奴が、とりあえず取れるとこから取って置こうとしか考えてないからです。つまり、こうしたら医療が良くなるとか、患者さんのためになるとか、そういう事ではまったく無い!!そのことが、見え見えだから腹立たしい。「議会制民主主義のもとでは、国民のレベル以上の政府はもてない」と言われるが、医療についても「国民皆保険制度のもとでは、国民のレベル以上の医療は求められない」というのが、本当のところではないでしょうか?

 

 だから、私は主張するのです。自分の健康は自分で考えてくださいと。医者任せにしてはいけませんと。もっと、医者にきちんと質問をせよと。医療を過剰に評価してはいけません。結局、治るのは自分であって、誰かが治してくれるわけではないのです。もし、医者が何かをしてくれたなら、それは、自分が治るための手伝いをしてくれたと言う事なのです。そう言う認識をもって、医療と対面するならば、もっと、患者さんの立場から政府に対して、保険組合に対して、医師会に対して非難が出るはずなのです。それが、全てなんとなく決まってしまって、医者もやりにくくなる患者さんの負担も増える。一体誰のための皆保険制度なんだ?政府やマスコミは、医者が悪いといいたげですが、それを言うなら、医師会の意見を通してから言ってくれ。という感じです。なぜ、医師会嫌いの私が、そんな事を言うかというと、まだ、自分の保身しか考えていない政府よりは、医師会の方が医者の利益、ひいては患者さんの利益につながる考え方をする事が多いと思うからです。つまり、患者さんが満足しなければ、患者さんが減って困るのは個々の医者であって、政府としては、患者さんが、医療費が高い!といって、病院に行かないほうが、医療費がかからなくて得なのですから。

 

医師会があなたの健康を考えていないと言う以上に、政府があなたの健康について考えてくれているわけではない。坂口厚生労働大臣のコメントを聞きましたか?「このままでは、少子化のため日本の民族は滅亡する。厚生年金の負担もどんどん増えて大変な事になる。」おいおい、オヤジ、お前みたいな奴がくたばってしまえば、若い人たちに余計な負担をしなくてすむんだよ!と、思ってしまうのは、私だけ?

 

そうそう、坂口大臣は余談ですが(それにしても、あのうっとうしい髪の毛はなんとかならんのか?)しかし、政府、官僚なんて医療のことなんて何にも考えていないんだな。と、つくづく思う今日この頃であります。医者をもっとうまく活用できれば、皆が損する事無く幸せになれるのにな。官僚主義というのは、日本の諸悪の根源である。なんていうのは、昔から言われている事。大前研一氏も、声を大にして叫んでいる。

 

 何故、そんな事を言い出したかというと、本当に、医療のため患者さんのためと思ってやった事は、決して保険点数には反映されないと実感したからです。

 

 30台前半の細身の女性。まだ結婚していらっしゃらないけれど、3〜4cmの子宮筋腫がある。ご本人は、いつも体調が悪く、内科にも通っているが悪い所は発見されない。とても子宮筋腫の症状とは考えられないのですが、ご本人は、子宮筋腫以外の異常が見つからないので、子宮筋腫が原因だと思っていらっしゃる。そこで、ご本人の口から出たのは、「子宮筋腫の手術をしたら良くなると思う。」と言う言葉でした。しかし、症状からいっても、おそらく筋腫の手術をしても治らないのです。それどころか、手術の合併症によって、ますます状態が悪くなる可能性がある。そこで、私は、30分以上にわたって筋腫の治療は手術だけではないと言う事、筋腫だけをとっても再発の可能性があること、今の症状は筋腫の症状とは考えにくい事など、延々と説明し続けました。自作のプリントを渡して、とにかく、早まって手術に踏み切る事なくこれからの状態によっていろいろな治療の選択があると言う事をお話しました。さて、診療時間が終了して30分以上、専門的知識を駆使して話したこの診療費はいくら?診療所、再診、一回目=810円。その30分の職員の残業手当にも足りません。でも、もし、この方が血液検査をしたら幾らになるでしょう?「体調悪いのねぇ。ん〜、じゃ、血液検査してみましょうか?」この一言で、例えば貧血の検査、肝機能の検査、甲状腺の検査、血糖値の検査など一般に「易疲労感」などでやる検査を行うと…検査料で約3400円+判断料で約4100円、つまり7500円が加算される。その上、「とりあえず注射しときましょう」なんて更年期障害の注射でもして180円+薬剤費、「元気のつく薬ね」などといいながらビタミン剤でも出して430円(院外処方)その上指導なんかした事無いのに薬剤情報提供料100円。つまり、30分間一生懸命話をするよりも、3分間採血して注射・処方する方が、合計8210円も高くなるのだ。でも、支払い額は2463円。

 

 さて、あなたが医者なら、どちらを選びますか?ねぇ、少なくとも、これじゃァ仕事する気にならんね。しかも、検査料のほとんどは、検査室が取ってちゃうし。あ〜あ、やってらんねぇぞぉ。もし、必要の無い手術を思いとどまらせたら幾らとか、不要な薬を減らしたから幾らとか、そう言う規定があれば、誰だって薬や検査に傾倒しねーやね。いっそのこと、タクシーのメーターでも診療室の机につけとこうかしら?話を始めたら、「空車」の札ををギっと下ろして、3分ごとにカチャッ・カチャッと上がっていく。でも、そうすると、必ず四方山話で時間稼ごうとする医者がいるんだろうな。浜の真砂は尽きるとも、悪徳医者のネタはつきまじ。ってね。

 

 こんな社会保険だから、いまだに検査漬け薬漬けがなくならないんですよ。相変わらず、内科でもらう風邪薬の種類、多いからねぇ。で、それをもらった患者さんが、全て、まともにのんでいるのを聞いた事がない。大抵は、治ってきたので中止しましたとか、咳止めだけのんでおきました、とか。時には、その薬は胃が痛くなってのめないといって、全部捨ててるなんて言う人もある。笑いごっちゃ無いですよ。その薬代の7割は破産しかけている社会保険から出てるんですからねぇ。せめて、医者に「その薬は胃に障るのでのめない。」と言って欲しいものです。

 

それと、よくあるのは、同じような症状でかかったときに出してもらった薬が、残っていたのでのんだという人。しかも、薬の名前がわからなかったりして。まいっちゃうなぁ。薬は、お菓子じゃないのだから。ちゃんと管理してもらわないと。いずれにせよ、出された薬の多くは、のまれていない可能性が高い。一説によれば、処方された薬の8割は指示通りのまれていないとも言われています。「この薬、効かないなァ」と、悩んでいたら、「ちょっとかぜひいたので、その間のむのやめてました。」なんて、平気で言っちゃいますからねぇ。そんな事の為に社会保険を使って薬を処方しているなんて信じられませんよ。そんな薬ののみ方するならマツキヨで市販薬買ってきたほうが、まだましというもんです。

 

だいたい、へぼ医者が薬を乱売するもんだから、患者さんが医者の出す薬を信用しなくなったのがいかんですね。そういえば、動悸がひどいといって来院した患者さん。前の医者に「習慣性があるから、いざというときしかのんではいけない」と、言い渡されて薬を出されたもので、その薬は、ビビッてのんでませんでしたね。それでいながら、役に立ちそうも無い心筋梗塞に使うような薬はしっかりのまされて。で、余計な薬使わなくていいから、この薬をのむようにと、「習慣性がある」薬の方を薦めたら、「前の医者が続けてのんだらダメだというのに、何でそんなものを薦めるんだ!」とけんか腰。何とか説得して、とにかく一週間試してみる事になりました。案の定、次の来院の時にはすっかり症状がなくなってゴキゲンでした。でも、薬が効いちゃったもんで、二度と当院には来なくなっちゃいましたけど。一生懸命説得した私には初診料と再診料。前医はたっぷり薬出して、検査して。ああ、馬鹿馬鹿しくて、やってらんね。その人、どっちがヤブ医者だかは理解していないんだろうなぁ…。

 

ちなみに「習慣性のある」その薬、大量投与で依存性があるといわれているけれど、通常は半年や1年は続ける薬です。何勘違いしてんだか?要するに、誤診しているから、その薬の有用性に気がつかない。なんだか違う原因があるみたいだから、一応出しとくけど、副作用が出たら大変だから、牽制しておこう!というのが、その医者の考えでしょう。そんないい加減な診断で薬出してるから、やたらに薬の種類が増えるんだって。通常、薬は3種類まで。だって、それ以上出すと、なに出したか忘れちゃうじゃない!(実は、薬というのは3種類以上の相互作用は分かっていない。)

 

でも、そんな事言っていると医者は儲からないんです。技術料はどんどん下げられるし。私の知り合い、手術料が3万円安くなったって嘆いてました。手術って、そのときの手技料だけではなくて、手術をするための設備や機械、人員への投資が大変なんです。手術が多くても少なくても、同じだけの投資は必要なんですから。一ヶ月に数回しかない手術の為に、手伝いをする技術を持った看護師は一年中雇っておかなくてはならない。手術のときだけ手伝ってくれる看護師なんて、そうは見つかりませんから。手術のときだけ手術に必要な機器を借りられればいいけど、残念ながら、そう言うシステムもない。その上、値段下げられて、一体どうするんだ?で、やむなく、毎日少しづつ取りはぐれのない処方料や検査料に重点が置かれるわけです。

 

まぁだ、医療機器屋さんに「たけーよ。型古くていいから安いのもってきてよ!」なんていえる人はいいですけど、結構、みなさん豪勢に、機械屋さんの言い値で機器を買ってますからねぇ。そんなことしたら幾ら借金しても金が足らんよ。医療器機器屋さんも普通のセールスと同じですから。「こちらが最新式で自動**がついていますので手間が省けます。」だとか、「最新のデジタル式で、従来のアナログ式の10倍の精度があります。」なんて言って薦めるわけです。でも、「じゃ、今までのは精度が悪くて使い物にならなかったってこと?」と、聞くと「いや、そう言うわけでは…。」「じゃ、古いやつ持ってきてよ。型が古いんだから、当然安くしてくれるんでしょ?」なんて…車買うのと大差ありません。

 

だから、もう、保険使ったら自費診療はできんとか、院外処方箋と院内処方箋は一緒に出せないとか、料金表を出しちゃイカンとか、つまらん規制はとっぱらっていただいて、自由診療にしましょうや。その代わり、料金明示と宣伝の制限を設けることですよ。いま、こういう抜本的な事は考えずに、宣伝の規制を緩和しようだとか言ってますが、緩和の仕方が、はっきり言って馬鹿。医者の経歴を宣伝してもいいだなんて、アナクロもいいとこです。そういう事を考える奴らが、いまだに学閥とか言ってるからだろうな。そういう事を緩和するのではなくて、自由診療をきちんと明示するというようにすれば良いのです。いまだに、不妊症治療は広告に入れてはいけないし、不妊治療の値段も書いてはいけない。で、皆さん、かかってみてビックリです。体外受精なんて、百万以上するところもあれば数十万ですむところもある。そう言うのを明示しないで、なにが、医療の公正を期するんですか?ホント、建前だけで、小泉の弁明を聞いているようで腹立たしい。もう、分かってる事なんだから、人の為になるような情報開示をして、自由診療を明示するようにしましょう!

 

って書くと、必ず、「医療は誰にでも公平であるべきだ!」なんて、厚生省の役人よりさらにアナクロなクレームをつける人が出てくるのですが、必要な医療は、当然、保険で保護された上での問題です。だいたい、今の制度では、自費診療を安くやっているところが分かりませんから、皆さん比べようがない。それをいい事に、医師会の年寄りなんていうのは「**病院では□□の治療を○○万円なんて破格値でやってる。まったくバカヤロウだ!」と、非難しながら、自分はその数倍の値段を取って、でも、よその病院に行ったことのある人しか値段の比べようがないんだから、全然平気です。しかし、そこに自由競争の原理が働くのなら、もっと効率よく安く出来るはずです。まぁ、安かろう悪かろうと言う問題も出るかもしれませんが、そのあたりこそ、各学会や医師会が基準を設けて、きちんと管理をするべきことでしょう。

 

もっとも、諏訪クリニックの件で、産婦人科学会は、ドナーの卵子を使った体外受精を散々非難して、院長を除名したあげく、半年後には、ドナー卵子の使用を認めてましたからね。あそこの院長は、学会の権威を示すための生贄にされたわけです。そう言体質の学会は少なくありませんから、ま、そう簡単には自由診療の緩和はできないかもしれませんねぇ。

 

いつも書いていることですが、現行のアナクロ保険制度を隅々まで利用できる医者が一番肥えて、本当に医療を考えている医者は、細々とかろうじて生きていると言うのが、今の医療のあり方です。ほら、国会議員だって、「私は、何も悪い事はしていません。選挙民の皆さんにお願いされたから、皆さんのためにやったんです。」なんて言いながら、開発途上国の支援金を隅々まで利用して、私腹を肥やしていいた人いるじゃありませんか。医者も、あんなもんですって。中村敦夫氏のように、本当に日本の将来を考えている国会議員は、野次を飛ばしたり、官僚を恫喝したり、賄賂を受け取ったりせずに、ただ、もくもくと目標に向かって努力しているものであります。

 

私?私は、はっはっは。ま、ま、そういう事で…。イカン、また、墓穴を掘ってしまった。ま、こう言う事をああだこうだ言っている奴は、碌な奴がいないってこって…。(o)

 

やっぱ、お前はそう言う奴だったかぁ!!!と、おこりつつHOME