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 なーんて広告が新聞にはさまってたら、びっくりしちゃいますよねぇ。何考えてんだ、この病院は?でも、今、産科病院はこんなサービスを、今にもやりそうな勢いです。そうしなきゃ、客が集らない。客が集らなきゃ、デザイナーまでいれて建築したでかいビルの借金が返せない。だから、みんな必死です。この、少子時代、病院きれいにしなかったら、すぐに近くのライバルに客取られちゃいますし。だから、みんな、とにかく借りられるだけ借金して、勝負に出るわけです。それが、今流行りのホテルみたいな産婦人科です。いや、産婦人科もついているホテルと言った方が良いでしょうか?

 医療はサービス業だ!こんな事がマスコミで話題になるようになって久しい事です。でも、医療のサービスって何でしょう?医療は何の為にあるの?極論を言えば、いっくら待合室をロビーと言い換えて、アクタスのデザイナーにコーディネートさせたって、病気は治りません。例え、院長が素敵なバリトンボイスを耳元でささやいてくれたって、病気は治らないのです。(まぁ、そういった事で治ってしまう病気もあるのですが…。)正しい診断と、正確な治療によって病気と言うのは治るのです。心因的な病気だって、それなりのセオリーがあって治療できるわけであって、ただ漫然と日常会話をしているだけでは治療できないのです。(時々、できもしないのに、コンサルテーションだなどとほざく医者もいるのでご注意を)

 まぁ、お産は通常病気ではないので、要するにホテルに泊まってお産ができればいいわけだ。と、割り切ってしまえばよいのですが、しかし、そこには大きな落とし穴があります。もし、そこが本当にホテルであるならば、少しでも異常のある患者さんは、直ちに本当の病院に送ってもらえるでしょう。しかし、事はややこしいのです。いつもは経営に入れ込んでいる院長も、いざとなると、医者としてのプライドが出てきます。そうすると、その病院で手におえないのに、自分は医者なんだからできるなんて勘違いして…。結局、かなり重症化してから、他の病院にお願いすることになって、悪くすると…。

たしかに、研修医でもなければ、ある程度の経験があるのですから、必要な処置をすることができるでしょう。しかし、医者の仕事なんて、八割方は自分の能力よりも、十分な設備と有能なスタッフに支えられているのです。正直言って、小児科の医者も麻酔科の医者も新生児の人工呼吸器もそろわない病院で、しかも、夜勤当直の看護婦だけで何ができるでしょうか?ほとんど、何にもできないのです。いっくら、その医師に能力があったとしても、十分な機材とスタッフがいなければ手が出せないのです。悪いことには、金儲け院長達は、大抵経営に大忙しで診療なんかそっちのけですから、いざといったってそうそう簡単に昔の勘が取り戻せるわけではないのです。そうこうしているうちに、どんどん自体は悪化して、転院したときにはどうしょうもない状態に…。あなおそろしや。

最近、いろいろなところで、病院の選び方を指南した記事を目にします。どの本にも書いてあるのは、「患者離れの悪い医者はやめよう。」ということです。患者離れというのは何?まさかねぇ。患者さんが帰る時に医者がくっついていっちゃうわけじゃぁあるまいに。でも、最近は、その手のストーカーまがいの医者もいるようですからご注意。いやいや、そんなことじゃぁなくて、自分の手におえなくなったときに(技術的な問題じゃなくても、設備が足りないとかスタッフが揃ってないとか。)他の病院にすぐ紹介してくれる医者を、患者離れの良い医者と言います。金儲け医者は、なんだかんだいいながら、知ったかぶりして薬出して検査して、もうちょっと様子を見てみようなんていっちゃうわけです。だって、少し引き伸ばしておけば、検査料に薬剤処方料に再診料を何回分か取れるわけですから。

開業医の役目というのは、そういうところにあると思うのですよ。つまり、新生児集中治療室も緊急検査の器械も小児科医も麻酔科医も小児科の専門の看護婦も産科の看護婦も十分揃えられるなら理想的ですが、開業医はそうはいかない。でも、大抵のお産は、例え帝王切開になるような症例でも産科医と看護婦がいれば何とかなってしまうわけです。ところが、時に、すべてが揃ってないと、赤ちゃんの命が助からないこともある。開業医の使命は自分で何とかできる症例なのか、大きな設備の整った病院に紹介する必要がある症例なのかを判断することにあると思うのです。

ところが、そう言った判断のできない開業医がときにいます。それが、患者離れの悪い医者ということです。他の病院に紹介すると自分の腕が悪いと疑われるのではないかと恐れたり、できるだけぎりぎりまで入院させて、入院料を稼ごうとしたり、もしくは、必要のないプライドが頭をもたげて、自分にできると勘違いしたり。いろいろな理由はありますが、きちんと、判断をしない医者がいるというのは事実です。

なにせ、今まで書いてきたように、私の勤めていた病院(もう、やめた!)の院長がまさにそうだったのですから。雑誌なんかに紹介されるかっこいい病院を建てたまでは良いですけれど、医療までが人気取り医療になってしまって、結局は患者さんに不利益をもたらすことになるというパターンです。何せ、国立大学の医学部を卒業して、プライドはありますし、ここまで、人気病院になったという自信もありますし、他の医者が何言っても聞きやしません。そういっているうちに、患者さんの状態は悪化して、慌てて手術をしたけれど…。なんて事が、私の知っているだけでも年に数回あるのです(内緒だけどネ)。

確かに、私が大学に勤めていたとききちんとした判断ができなくて、手遅れになってから大学病院に送ってくるという常習犯的な病院が何件かありました。そういう病院って、結構、雑誌に載ったり、テレビの取材を受けたりして有名な所が多いんですけど…。ま、兎に角そういう産婦人科の開業医があるということです。でも、私の周りの先生は違います。話をしていると、実にあっさり見切りをつける。変なプライドは持たないで、何かあれば、近所の大きな病院に紹介してくれます。何も無いと診断されてもいいんです。万が一でも、自分の判断ミスのために赤ちゃんやおかぁさんが危険にさらされたら大変じゃぁ無いですか。だから、患者さんが減ってもいいから、大きな病院に送ってきちんと診て貰うわけです。

だから、あまり事故はおこらない。極端な話、きちんとした施設の無い産科病院なら、全く正常と思われるお産しか扱わない。というくらいでもいいのではないかと思っています。そうしたとしても、お産の寸前になって、赤ちゃんの具合が悪くなって帝王切開という症例が数パーセント出て来るはずです。それくらい、お産というのは、どういう展開になるか分からないものなのです。場合によっては、肩甲難産と言って、赤ちゃんの首まで出てきたんだけれども、そのあとが出ない、なんてこともあります。

産科というのは、実は、産科医だけで成り立っているわけではありません。もちろん優秀な看護婦が必要なのはいうまでもありませんが、助産婦も必要だし、小児科医や麻酔医の手助けだって必要なのです。だから、最近では、大きな病院で周産期センターを作る所が増えています。つまり、お産というのは産科だけのテリトリーではなくて、いろいろな科のエキスパートが揃って、初めて完全な治療ができると言う事なのです。

そういう面で見ると、開業の産科なんて何もできないに等しいと言えます。ですから、一般の産科開業医でお産をできるおかぁさんというのは、実は非常に限定されていると思います。合併症がなくて、妊娠経過が順調ならどこの医院でも問題なくお産できるでしょう。しかし、合併症があったり妊娠経過に異常が生じてきた場合には、危険なことがあります。私の考えでは、そう言った方々は早く気がついて大きな病院で、専門家に診てもらいながらお産をするのが良いと思うのです。

そういう点で考えると、産科はもっとクラス分けされるべきではないでしょうか?少なくとも、産科医が一人しかいないのか、ふたリ以上いてすぐに手術をできる体制なのか。新生児を診られる小児科の医者が常駐しているか、それとも緊急時だけ来てくれるのか、または、他院に転送が必要なのか。新生児の集中管理施設があるのか、それとも、転院が必要なのか。麻酔科医が常駐しているのか、緊急時だけ来てくれるのか、それとも、産科医が兼ねているのか。そんなことをはっきりとして、きちんと表示したほうが良いと思うのです。

そういえば、最近、病院に対する宣伝広告の規制緩和がささやかれています。これからは、医者の出身校や研究テーマ、病院の特徴などさまざまな宣伝ができるようになるそうです。そうすることによって、患者さんが、より、病院を選びやすくするのだそうです。本当でしょうか?いまだって、人気のある豪華な病院ではあらゆる手段を使って、規制をすり抜けて宣伝をしているのです。規制緩和になったら、そういう医者達は、さながら美容整形や医療エステのような宣伝を始めるでしょう。

大体、出身大学で何がわかりますか?よく、ニュースに出てくる、有名国立大学病院の医者達。みーんな、立派な経歴をお持ちです。社会に出たら、出身大学なんて大した問題ではないなんてことは、一般社会では常識になりつつあるではありませんか。研究テーマなんて、笑っちゃう。私の研究テーマは、成人型白血病ウイルスの垂直感染に関する研究です。まず、日常診療で役に立ったことはありません。病院の特徴?私は、医療を真面目に考えて一人一人の患者さんを大切にします。なんて書くのでしょうか?でも、きっと、マタニティスイミング用プール、マタニティビクス用スタジオ完備!退院時には一流ホテル出身のシェフがあなたのためにフランス料理をご用意!なんて方が、人気が出るんでしょうね。実際そうなっているのですから。結局は、冒頭のような宣伝をうった病院が勝つのです。

だから、規制緩和なんてしなくてもいいと思います。やりたい人は、うまくやっているわけで、そういうことにあまり関わらないで、寡黙に医療を極めている医者だって沢山いるのですから。それより、前述したような、本当に医療に関わるような重要な情報を宣伝に出させるようにしたほうが、どれほど役に立つ事か。広告には、必ず、(産科では)産科医師**名、麻酔科医師**名、小児科医師**名、(すべて常勤)新生児管理施設有り。なんて書いておけば、その施設の能力は大体わかろうというものです。(もちろん、医者の能力も大切なんです。時々、施設は立派でもろくもない病院もありますので、ご注意。)たとえ、院長がヤブ医者であったとしても、複数の専門医がいることによって、カバーできることが少なくありませんから。

もちろん、経過に何も問題がない方なら、近所の医者一人で運営している病院で問題ないでしょう。しかし、前回のお産が大変だったとか、別の病気を合併しているとか、そんな状態なら少なくとも、高度医療施設へすぐ移れるようなつもりでいなくてはいけません。当然きちんとした開業医なら、そう言ったことをきちんと指導してくれるのですがねぇ。

冒頭の宣伝文を読んだ時、きっと皆さんは、「そんな病院あるはずないじゃないのぉ。あったとしても、怪しすぎてそんな病院行かないわよぉ。」と、思ったに違いありません。でも、結局は流行っている病院て、それに近いことやっているんですよ。ただ、巧妙に医療的な理由をでっち上げて、それらしくカモフラージュしてるから、気がつかないだけなんです。冒頭の宣伝をみて、「変なの!」と、思った方なら、おそらく医療のサービスと言うのは、本当はどこに重点を置くべきかなんていうのは十分に承知のはずです。良く、目を皿にして、耳をダンボにして、医者の言うこと、スタッフの言うこと、病院の雰囲気、周りの評判などを感じ取ってください。そして、どうも、この病院は、医療のサービスと商売のサービスを勘違いしているようだと思ったら、止めた方がいいでしょう。悪徳業者にだまされても、取られるのは、せいぜいお金くらいなものですが、悪徳医者にだまされると、うっかりすると命まで取られてしまいますぜ。オーコワ。

いやぁぁぁ。もう、おうちに帰りた〜い方はこちらへ。