以下に記述するのは、私が不動産管理会社の立場で原告代理人になり携わった、多賀城市内某アパートの建物明け渡し

 訴訟及び強制執行のてん末です。


 物 件 所 在  宮城県多賀城市

 対 象 物 件  家主自主管理のアパートの1室(3DK)

 訴 訟 理 由  数年間に及ぶ家賃滞納(数百万円)、一時は「契約解除及び債務返済スケジュール」の覚書にサインするも
           実行に至らず、家賃を回収に訪れる家主に対し居直り恫喝、物件を不法に占拠している。

 管     轄  仙台簡易裁判所

 原     告  家 主
 (代 理 人)   不動産管理会社(TOM企画)代表者

 被     告  賃借人及び当初保証人だった同居人

 請求の趣旨  1.被告らは、原告に対して、物件目録記載の建物を明け渡せ
           2.被告らは、原告に対して、滞納時から明け渡し済みまでの家賃相当額の金員を支払え
           3.訴訟費用は被告の負担とする


以下、建物明け渡し訴訟手続きのてん末です。

年月日 場 所 内 容 備考及び提出書類 費 用
09/09/25 仙台簡易裁判所
1F訴訟受付係
訴状提出 提出書類
1.訴状(裁判所交付・被告の数+1部)
2.証拠書類(被告の数+1部)
  ・賃貸借契約書
  ・重要事項説明書
  ・家賃入金関係書類
  ・支払い催告の内容証明等
  ・覚書等
3.当該不動産評価額証明書(1部)
4.当該不動産登記簿謄本(1部)
*代理人許可申請書
1.手数料
  収入印紙にて3,000
  (訴額により異なる、建物
   明け渡しの場合不動産
   評価額により決定)

2.郵便切手7,000
  (訴状・期日呼出状送達用
   2名分)
09/09/29   期日呼出状
送達
答弁書提出
裁判所より原告・被告双方に09/11/02の期日呼出
状が送達される、言い分があれば答弁書を提出 
 
09/10/30   所在調査報告 被告が訴状・期日呼出状を受取らない為、物件内に
本当に被告が居住しているかどうか調査
提出書類(郵送)
1.所在等調査報告書
2.被告2名分の住民票
1.郵便切手4,660
09/11/02 仙台簡易裁判所
第1号法廷 
第1回
口頭弁論
前述、被告が呼出状を受取らない為、口頭弁論は
09/12/07に延期、期日変更通知を被告に送達、
次回は被告が受取るか否かに関わらず開催
 
09/12/07 仙台簡易裁判所
第1号法廷 
第2回
口頭弁論
口頭弁論の場合、不動産管理会社の立場では
代理人になれず(ここが弁護士との唯一の違い)
原告である家主と共に出頭、被告は出頭しなか
ったため、裁判官が内容を確認30秒程で結審する
 
09/12/07   判 決 口頭弁論が午前中に行われ、同日の夕方に判決
の言い渡し、裁判所で待っている訳ではなく、後日
判決文が郵送されて来るのを待つ
判決主文
1.被告らは、原告に対し物件目録記載の建物を
  明け渡せ
2.被告らは、原告に対し滞納時から明け渡し済み
  までの家賃相当額の金員を支払え
3.訴訟費用は被告らの負担とする
 



後日、原告・被告双方に判決文が送られてくるものの、心臓に毛が生えた被告にとってはただの紙切れ。

債務名義(判決文)に強制力を持たせるには、強制執行の手続きを取らなければなりません。

裁判所は役所なので、事務的であり受け身です、次はこうしなさいという積極的なアドバイスは貰えません。

尚且つ、訴訟と強制執行は扱う部署が違うので、流れ作業という訳には行かず自身で手続きを取ります。

以下、強制執行手続きのてん末です。

(因みに訴訟にあっては原告・被告、強制執行にあっては債権者・債務者と呼ぶことにします)



年月日 場 所 内 容 備考及び提出書類 費 用
10/01/06 仙台簡易裁判所
1F民事訟廷係
債務名義の
執行文付与
及び送達証明
申請
前述、訴訟と強制執行は扱う部署が違うので、債務
名義により強制執行を行うことが出来るという付与
文と、債務名義が間違いなく債務者に送達されたと
いう証明書を発行してもらう
提出書類
1.執行文付与申請書(ダウンロード)
2.送達証明申請書(ダウンロード)
3.債務名義
1.手数料
  収入印紙にて600
  
2.郵便切手90
  (証明書郵送代)
10/01/21 仙台地方裁判所
1F執行官室
強制執行申立 提出書類
1.強制執行申立書(裁判所交付)
2.債務者に関する調査表(裁判所交付)
3.執行文及び送達証明付きの債務名義
4.委任状
1.執行費用の予納
  現金にて90,000
  (1名6万円、債務者
   1名増すごと3万円)
10/02/02 目的物件現地 強制執行催告 目的物件現地で債務者に、断行予定日における
目的外動産の売却の決定を公告
実際には債務者不在、合鍵にて入室、部屋の中に
公告文を貼り付ける
1.執行官1名
2.債権者(代理人)
3.立会人1名
4.運送業者(動産の搬出・運送・保管の見積りの為)
執行官が用意した立会書に
立会人並びに債権者(代理人)が自署・押印
 
10/02/25 目的物件現地 現地状況確認 断行日前日、現地の最終確認を行う
催告から断行日までの間に、債務者の90%は観念し
物件を明け渡すらしい
今回の債務者も、大事な物だけ持ち出し「夜逃げ」した
模様、それを執行官に伝える
 
10/02/26 目的物件現地 強制執行断行 設定した時刻、部屋に入室(施錠されておらず)
やはり本人不在「夜逃げ」した模様、残置物はかなり
あるも、いずれもゴミと見なす
保管庫の準備もしていたが、廃棄処分と決定
残置物の搬出・廃棄と、シリンダー交換
1.執行官1名
2.債権者(代理人)
3.立会人1名
4.運送業者4名
  (ある程度持ち出し済みだった為、結果的には
   4名は多かったかも知れない)
5.鍵交換業者
執行官が用意した立会書に
立会人並びに債権者(代理人)が自署・押印
1.残置物搬出・運送・
  廃棄処分代金
  150,000円程度
  (価値がある物の
   保管が伴えば
   保管料別途)

2.シリンダー交換代
  10,000円程度



以上、私が経験した訴訟及び強制執行のてん末ですが、空になった部屋は当然荒れ放題、リフォーム代金も数十万単位で

掛かると思います。

訴訟費用から強制執行費用、残置物の処分代からリフォーム代まで、本来は当然債務者が負担すべきものですが、

現実的には回収は難しいと思います。

債権回収の強制執行を別途手続きする、という方法もありますが、執行する所得等が無いのが大半でしょう。

一つの考え方は、過去のことはしょうがないと諦め未来に向かって部屋をリフォーム、新しい入居者を募集するという考え。

そして、並行してもう一つの考え方は、入口のところで重大なことにならないように危険回避するということです。

(具体的に言うと、入居時に保証会社に加入してもらうとか、滞納が始まったらとにかく早めに対処する等)

今回、家主からは建物明け渡しに係る不動産コンサル料として100,000円頂戴したのと(弁護士に同じ事を依頼すると

300,000円程度掛かるようです)これを機に物件の管理業務を任せてもらうことになりました。

上記以外にも、裁判所に書式を取りに行ったり、書類不備で突き返されたり(これは自分の責任ですが)非常に手間と

時間とお金が掛かる作業ですが、もし同じような事案でお困りの家主様がいましたら、是非ご相談下さい。

一緒に最善の方法を考えていきたいと思います。