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常山樓筆餘 卷一

湯淺常山
(『少年必讀日本文庫』第1編 博文館 1891.6.15
〔原文注記〕(*入力者注記)。鈎括弧等は入力者が補充した。(2011.9)

  解題(内藤耻叟)   序(赤松国鸞)   序(富士谷成章)   巻1   巻2   巻3
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解題

※ 日本文庫編者による解題。
此書は備前岡山世臣常山先生湯淺元禎の著書也。先生字之祥、通稱新兵衛、未だ弱冠ならざるに江戸に於て業を服部南郭に受け、其同門ゥ子に交る。其聞く所を録して文會雜記と云ふ。家を嗣て要職に居り、方正獨立、身を忘れて國に殉ず。危言正論、忌諱する所なし。蓋之に因て罪を得て貶黜せられ、是より後杜門著書。天明元年沒す、年七十四。先生雅に武事を好み、古への名將勇士の事跡を集録して常山記談を編す。庫(*未詳)好んで左傳を讀む。左傳解、及兵革圖を著す。此書の如きも亦多く本朝の武事を論ず。引據鉛獅ノして議論識見あり。其爲人を想見仰慕するに足れり。今之を文庫中に收む。


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常山樓筆餘序

常山樓筆餘者、備藩湯之祥所著也。湯氏世爲備名臣、而之祥爲人C廉端直、其忠君愛民之誠、觀於生平所爲詩賦文章而可見也。至於博聞強記卓識明見則當今列國士大夫蓋鮮其比焉。備大國也。其人才亦不多、然以余所聞見之、先有熊澤子(*注─熊沢蕃山)、今乃湯子、是其杰然(*注─傑然)者也。余嘗竊謂、曰仁曰文、曰先王之ヘ、曰仲尼之道、其道雖爾異、均之謂治國安民之術已。丈夫不爲則已、苟讀書學古、而無國安民之志之百家衆技之流、碌々乎鄙哉。君子不取焉。世之學者、誰不六經子史、誰不詩賦文章。至之論-説吾
大邦古今事體、民俗好尚、往往鉗口、而不一語。是無它、其志不於治國安民也。傳曰、齊其政其俗。吾邦人欲吾國家吾人民、而不其邦俗事體、安能有爲哉。讀其書其志。余讀筆餘而u知湯子所-以爲湯子云。 或曰、甚矣子之賢湯子也。湯子誠賢、然何遽與熊澤子竝稱也。熊澤子事業之盛、恐非湯子所得而望也。曰越哉子之言。何見之遲。古人有云、譬之雁聲也。-々乎春而唳-々乎秋何也。時使之然。且夫三脊之茅、可以藉欝鬯、以之作羹、則藜之不如矣。百莖之蓍、可以供占筮、以之樹籬、則杞棘之不如矣。唯在其所一レ遇爾。若夫湯子詩賦文章之美、則實非熊澤子所得而望也。雖然此固屬文藝末伎、其在熊澤子亦何傷。迺在湯子安知不幸而然哉。要之二子易地皆然。余雖汚亦不敢阿一レ好。識者或味乎余言焉。
安永甲午孟春
播磨赤松鴻(*滄州赤松国鸞)


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常山樓筆餘序

備前の高田維亨、くによりのぼりもてきて、ふところよりさうしひとつをひきいでゝ、しめしていふ、「これは岡山の湯淺ぬしのつくれるふみなり。名を筆餘といふ。かのぬしぞこの序をこはむとするに、またくはいまだうるはしくもかきたてねば、かつ/〃\これをだにとて、なにがしにつけたり。『これはみつがひとつなり。のこりをば、今かきはてゝなむ、みすべき』とあり。」といふ。維亨かへりてのち、かたはしづゝみるに、大むねいにしへをひきて今をしるし、かしこをかよはしてこゝをあかせり。見きくことひろからず、思ふことくはしからざらむ人は、いかでかこのおもぶきをもて、このことわりをもしらむ。さて道々につけたるさだめ、くに/〃\にわたれるものがたりなど、めづらかにけふあることもおほかれば、いつゝかとのこりゆかしけれど、「かのぬし、これが序をおなじくははやくえばやと、うち/\にいへり。」と、維亨もいひいそめれば、「さはれ、かのぬしは、名たかくきゝおける人ぞかし。いまだそのおもてをしらねど、その名とそのいさをしとを、はやくいひつたへたり。さばかりの人のいはむこと、まさにおろかならむや。このふみをばむげにみねども、ありぬべし。ましてみつがひとつを見しをや。こと人のこはましかば、まづそのふみをよみはてゝぞ序はかくべし(*原文「かくまし」)。これをばたゞ序かきてのちにこそ、のこりをばみめ。」とて、いさゝかそのよしばかりをしるしおきて、三四日ばかりありて、維亨かへりく(*ママ)たるにつく。
明和九年(*1772年)七月
富士谷成章


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常山樓筆餘 卷一


  太伯の後といふは無稽なる事    神武天皇の行宮の事    天柱の事  
  日本の稱號の事    冕旒の事    古の士と今の士と異なる事  
  物部の事    軍團    大番    兵をさむらゐといふ事  
  北面の士の事    名こそ惜けれといふ詞    古の武人は皆文學ありし事  
  ョ信父子馬盜を射し事    舊事記の事    日本紀の事    日本紀の疑  
  王仁の事    龜卜の事    射法    樂の事(*原文「射法」)  
  家の制(*原文「樂の事」)       神皇正統紀(*ママ)・源氏物語  
  鳥居・華表の事    封建の事    釜甑の事    石經・版書の事  
  擇其次者而從之といふ言の事    聖人の事    鬯草・軟刀の事  
  武内大臣の年壽    肅愼の事    六佛の事    髯剃る事    齒染る事  
 


常山樓筆餘 卷之一 

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