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故事成語


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春秋左氏伝(春秋・左丘明):病入膏肓

晋景公疾病。
晋の景公疾(やまひ)病(へい)なり。

求医于秦。
医を秦に求む。

秦伯使医緩為之。
秦伯医緩をしてこれを為(をさ)めしむ。

未至、公夢、疾為二豎子、曰、「彼良医也。
未だ至らざるに、公の夢に、疾二豎子と為りて、曰はく、「彼は良医なり。

懼傷我。
我を傷つけんことを懼る。

焉逃之。」
焉くにかこれを逃れん。」と。

其一曰、「居肓之上、膏之下、若我何。」
その一曰はく、「肓の上、膏の下に居らば、我をいかんせん。」と。

医至曰、「疾不可為也。
医至りて曰はく、「疾為むべからざるなり。

在肓之上、膏之下、攻之不可。
肓の上、膏の下に在り、これを攻むるは不可なり。

達之不及、薬不至焉。
これに達せんとするも及ばず、薬至らず。

不可為也。」
為むべからざるなり。」と。

公曰、「良医也。」
公曰はく、「良医なり。」と。

厚為之礼而帰之。
厚くこれが礼を為してこれを帰らしむ。
【注】 ○晋景公(在位 599-581B.C.) 春秋時代の晋君。公は爵位。 ○疾病 病気が重い。 ○秦伯 秦君。伯は爵位。 ○医緩 緩という医者。 ○豎子 子ども。 ○肓之上、膏之下 胸元。心臓の下、横隔膜の上の隠れた部分。 ○達之不及 針を打っても届かない。

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孟子(戦国・孟軻):助長

宋人有閔其苗之不長而■(手偏+堰の旁:あつ::大漢和12363)之者。
宋人にその苗の長ぜざるを閔(うれ)へてこれを■(手偏+堰の旁:あつ::大漢和12363)く者有り。

茫茫然帰、謂其人曰、「今日病矣。
茫茫然として帰りて、その人に謂ひて曰はく、「今日病(つか)れたり。

予助苗長矣。」
予(われ)苗を助けて長ぜしむ。」と。

其子趨而往視之、苗則槁矣。
その子趨りて往きてこれを視れば、苗は則ち槁れたり。
【注】 ○閔 気にかける。 ○■(手偏+堰の旁:あつ::大漢和12363)之 草木を引き抜く。 ○茫茫然 疲れきった様子。 ○病 疲れる。 ○趨 駆けつける。

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列子(戦国・列禦寇):朝三暮四

宋有狙公者。
宋に狙公なる者有り。

愛狙、養之成群。
狙を愛し、これを養ひて群れを成す。

能解狙之意、狙亦得公之心。
能く狙の意を解し、狙もまた公の心を得たり。

損其家口、充狙之欲。
その家口を損じ、狙の欲に充つ。

俄而匱焉。
俄かにして匱し。

将限其食。
将にその食を限らんとす。

恐衆狙之不馴於己也、先誑之曰、「与若■(艸冠/予:ちょ::大漢和30717)、朝三而暮四、足乎。」
衆狙の己に馴れざらんことを恐るるや、先づこれを誑(あざむ)きて曰はく、「若に■(艸冠/予:ちょ::大漢和30717)を与ふるに、朝に三にして暮れに四にせば、足るか。」と。

衆狙皆起而怒。
衆狙皆起ちて怒る。

俄而曰、「与若■(艸冠/予:ちょ::大漢和30717)、朝四而暮三、足乎。」
俄かにして曰はく、「若に■(艸冠/予:ちょ::大漢和30717)を与ふるに、朝に四にして暮れに三にせば、足るか。」と。

衆狙皆伏而喜。
衆狙皆伏して喜ぶ。
物之以能鄙相籠、皆猶此也。
物の能鄙をもって相籠(ろう)すること、皆猶ほ此くのごときなり。

聖人以知籠群愚、亦猶狙公之以知籠衆狙也。
聖人の知をもって群愚を籠するは、また猶ほ狙公の知をもって衆狙を籠するがごときなり。

名実不虧、使其喜怒哉。
名実虧けずして、それをして喜怒せしむるかな。
【注】 ○狙 猿。 ○家口 家族(使用人)の人数。 ○匱 乏しい。貧しくなる。 ○食 食糧。餌。 ○誑 たぶらかす。 ○■(艸冠/予:ちょ::大漢和30717) どんぐり。 ○能鄙 優劣。 ○籠 籠絡する。言いくるめる。 ○聖人 理想的人格者。 ○名実 名目と実質。建前と本音。 ○虧 損なう。

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呂氏春秋(戦国・呂不韋):知音

伯牙鼓琴、鍾子期聴之。
伯牙琴を鼓し、鍾子期これを聴く。

方鼓琴而志在太山、鍾子期曰、「善哉乎、鼓琴。
琴を鼓して志太山に在るに方(あ)たりては、鍾子期曰はく、「善きかな、琴を鼓するや。

巍巍乎若太山。」
巍巍乎として太山の若し。」と。

少選之間、而志在流水、鍾子期又曰、「善哉乎、鼓琴。
少選の間にして、志流水に在れば、鍾子期又曰はく、「善きかな、琴を鼓するや。

湯湯乎若流水。」
湯湯乎(しやうしやうこ)として流水の若し。」と。

鍾子期死。
鍾子期死す。

伯牙破琴絶絃、終身不復鼓琴。
伯牙琴を破り絃を絶ち、終身復た琴を鼓せず。

以為世無足復為鼓琴者。
以為へらく世に復た為に琴を鼓するに足る者無しと。
【注】 ○伯牙 春秋時代の琴の名手。この故事から「伯牙絶絃」の語もある。 ○鼓琴 琴を奏でる。 ○鍾子期 伯牙の親友。 ○太山 泰山。 ○巍巍乎 雄大に聳える様子。 ○少選之間 しばらくして。 ○湯湯乎 奔流の様子。

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戦国策(前漢・劉向):百発百中

楚有養由基者。
楚に養由基といふ者有り。

善射、去柳葉者百歩而射之、百発百中。
射を善くし、柳葉を去ること百歩にしてこれを射、百発百中す。

左右皆曰、「善。」
左右皆曰はく、「善し。」と。

有一人、過曰、「善射。可教射也矣。」
一人有り、過りて曰はく、「善く射る。射を教ふべきなり。」と。

養由基曰、「人皆善、子乃曰、『可教射。』子何不代我射之也。」
養由基曰く、「人皆善しとするに、子乃ち曰はく、『射を教ふべし。』と。子何ぞ我に代はりてこれを射ざるや。」と。

客曰、「我不能教子支左屈右。
客曰はく、「我子に左を支へ右を屈(ま)ぐるを教ふること能はず。

夫射柳葉者、百発百中、而不以善息、少焉気力倦、弓撥矢鉤。
それ柳葉を射ること、百発百中するも、しかも善をもって息(や)めずんば、少焉くして気力倦み、弓撥(そ)り矢鉤(ま)がらん。

一発不中、前功尽矣。」
一発中たらずんば、前功尽きん。」と。
【注】 ○養由基 春秋時代の弓の名手。 ○弓撥矢鉤 弓がはねかえり(反り)、矢が曲がる(逸れる)。

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淮南子(前漢・劉安):蟷螂之斧

斉荘公出猟。
斉の荘公出でて猟す。

有一虫。
一虫有り。

挙足将搏其輪。
足を挙げて将にその輪を搏たんとす。

問其御曰、「此何虫也。」
その御に問ひて曰はく、「これ何の虫ぞや。」と。

対曰、「此所謂蟷螂者也。
対へて曰はく、「これいはゆる蟷螂なるものなり。

其為虫也、知進而不知却。

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