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近世叢語　序・凡例・目録

角田九華
（『近世叢語』　　加賀屋善蔵他　1828.1.－）
※ 扉「三都書林〔慶元堂・玉枝軒・松根堂〕蔵梓」。
国会図書館デジタルコレクション
（http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2602914）掲出文（保護期間満了）より転載。
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　　近世叢語序（佐藤一齋）　　近世樷語序（賴山陽）　　

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近世叢語序

正史^ノ之體^タル、著-_二明^シ一代^ノ治亂興亡^ノ之跡、紀綱法度^ノ之概^ヲ_一、與^ルモノ_二夫^ノ人倫^ノ賢否忠姦、淑慝邪正^ニ_一、率^ネ皆於^テハ_二其^ノ大^ナル者^ニ_一焉^ニ記^ス_レ之^ヲ。至^ツテハ_二於零碎^ノ之言語、瑣屑^ノ之事蹟^ニ_一者、史家^ノ所^ノ_レ不^ル_レ載^セ者^ナレドモ、而猶^ホ_シ _レ有^ルガ_レ可^キモノ_三以^テ見^ル_二夫^ノ風俗人心^ノ之徽醜^ヲ_一。從^ツテ_三其^ノ所^ニ_二傳聞^スル_一而録^ス_レ之^ヲ。是^レ則^チ稗官小説^ノ之所-_二以^ナルカ竟^ニ不^ル_一レ可^カラ_レ廢^ス也歟。劉宋^ノ臨川王^ノ之著^セル世説新語^タルヤ也、單辭隻行、標新領奇、文既^ニ雋快、事鮮^シ_レ乖^クコト_レ實^ニ。足^ル_レ見^ルニ_二江左一時^ノ之風尚^ヲ_一。則^チ謂^フモ_三之^ヲ羽-_二翼^{スルモノト}史書^ヲ_一可^ナリ矣。後^ノ之規-_二摹^トスル臨川^ヲ_一者^ニ、有^リ_二華亭何氏_一、有^リ_二雲間李氏_一。皆能^ク摭（ひろ）^ヒ_二逸事^ヲ_一、攟（と）^ルニ_二異聞^ヲ_一、不^ルノミ_二第^ダニ以^テセ_一レ文^ヲ而已也。属者（このごろ）、友人角田大可、撰^ス_二近世叢語八巻^ヲ_一。我^ガ　朝建櫜以來、文武^ノ賢豪、奇偉^タル異能、與夫・名緇・閨秀、奕〻^トシテ相望^ミ、代不_レ乏^シカラ_レ人^ニ。其^ノ言語^ト事蹟^ト、可^キ_二以^テ觀_レ風^ヲ考^フ_一レ德^ヲ者、或^ハ得_二諸^ヲ故老^ノ之談^ニ_一、或^ハ取^リ_二諸^ヲ碑誌^ノ之勒^ニ_一、或^ハ采^ル_二諸^ヲ家乗・剳記^ノ之所^ニ_一レ傳^フル。蒐獵綜叙、洪纎悉擧、殆^ド亦華亭・雲間^ノ之亞^ナリ也。　昭代^ノ史書^モ猶^ホ未^ダ_二全^クハ備^ハラ_一。則^チ如^キノ_レ斯^クノ編^ハ者、或^ハ可^シ_三以^テ資^ク_二修史^ノ之用^ヲ_一。豈^ニ特^ダニ羽-_二翼^スルト之^ヲ_一云^フノミ已^ナランヤ乎。先輩【服子遷】〔注丨服部南郭〕^モ、亦嘗^テ採-_二擷^シ中古^ノ人物^ノ言行^ヲ_一、為^ス_二【世語^ノ一書】〔注丨大東世語〕^ヲ_一。其^ノ文辭^ハ可^シ_レ謂^フ_三善^ク摹-_二倣^スト臨川^ヲ_一矣。而^レドモ余^ハ獨^リ惜^ムノミ_下其^ノ事蹟^ノ、一^モ不_レ出^デ_二於國記^ノ所^ノ_レ載^スル之外^ニ_一、徒^ラニ示^スヲ_中其^ノ辭^ノ之工^ミナルヲ_上而已。今大可^ノ之撰^スルヤ、文采雖^モ_二或^ハ有^リト_一レ不^ル_レ及^バ、而至^ツテハ_二其^ノ逸事異聞^ニ_一、足^ル_二以^テ表見^シテ而傳^フルニ_一レ之^ヲ。况^ヤ乎俟^ツヲヤ_二史料^ヲ於他日^ニ_一。則^チ吾^ハ寧^ロ取^ツテ_レ此^ヲ而不^ルナリ_レ取^ラ_レ彼^ヲ也。諸友^ニ慫慂^シテ授^ク_レ梓^ニ。梓既^ニ成^リ、将^ニ_下俟^ツテ_二余^ガ序^ヲ_一以^テ公^ニセント_中諸^ヲ世^ニ_上。輙^チ卒^カニ引^クコト_二其^ノ端^ヲ_一如^シ_レ此^クノ。

　文政十一年【龍集】〔注丨歳次〕【箸雍】〔注丨戊〕【困敦】〔注丨子〕孟冬月【下澣】〔注丨下旬〕

江都一齋老人佐藤担識

【白文】　正史之體、著明一代治亂興亡之跡、紀綱法度之概、與夫人倫賢否忠姦、淑慝邪正、率皆於其大者焉記之。至於零碎之言語、瑣屑之事蹟者、史家所不載者、而猶有可以見夫風俗人心之徽醜。從其所傳聞而録之。是則稗官小説之所以竟不可廢也歟。劉宋臨川王之著世説新語也、單辭隻行、標新領奇、文既雋快、事鮮乖實。足見江左一時之風尚。則謂之羽翼史書可矣。後之規摹臨川者、有華亭何氏、有雲間李氏。皆能摭逸事、攟異聞、不第以文而已也。属者、友人角田大可、撰近世叢語八巻。我朝建櫜以來、文武賢豪、奇偉異能、與夫・名緇・閨秀、奕〻相望、代不乏人。其言語事蹟、可以觀風考德者、或得諸故老之談、或取諸碑誌之勒、或采諸家乗・剳記之所傳。蒐獵綜叙、洪纎悉擧、殆亦華亭・雲間之亞也。昭代史書猶未全備。則如斯編者、或可以資修史之用。豈特羽翼之云已乎。先輩服子遷、亦嘗採擷中古人物言行、為世語一書。其文辭可謂善摹倣臨川矣。而余獨惜其事蹟、一不出於國記所載之外、徒示其辭之工而已。今大可之撰、文采雖或有不及、而至其逸事異聞、足以表見而傳之。况乎俟史料於他日。則吾寧取此而不取彼也。諸友慫慂授梓。梓既成、将俟余序以公諸世。輙卒引其端如此。
文政十一年龍集箸雍困敦孟冬月下澣
江都一齋老人佐藤担識

【書き下し文】　正史の之體たる、一代の治亂興亡の之跡、紀綱法度の之概を著明し、かの人倫の賢否忠姦、淑慝邪正に與るもの、率ね皆その大なる者に於ては焉にこれを記す。於零碎の之言語、瑣屑の之事蹟に至つては、史家の載せざる所の者なれども、なほもつてかの風俗人心の之徽醜を見るべきもの有るがごとし。その傳聞する所に從つてこれを録す。これすなはち稗官小説の之竟に廢すべからざる所以なるか也歟。劉宋の臨川王の之著せる世説新語たるや、單辭隻行、標新領奇、文既に雋快、事實に乖くこと鮮し。江左一時の之風尚を見るに足る。すなはちこれを史書を羽翼するものと謂ふも可なり。後の之臨川を規摹とする者に、華亭何氏有り、雲間李氏有り。皆よく逸事を摭（ひろ）ひ、異聞を攟（と）るに、ただに文をもつてせざるのみ而已也。属者（このごろ）、友人角田大可、近世叢語八巻を撰す。我が　朝建櫜以來、文武の賢豪、奇偉たる異能、與夫・名緇・閨秀、奕〻として相望み、代人に乏しからず。その言語と事蹟と、もつて風を觀德を考ふべき者、或は諸を故老の之談に得、或は諸を碑誌の之勒に取り、或は諸を家乗・剳記の之傳ふる所に采る。蒐獵綜叙、洪纎悉擧、殆ど亦華亭・雲間の之亞なり。　昭代の史書もなほいまだ全くは備はらず。すなはちかくのごときの編は、或はもつて修史の之用を資くべし。豈にただにこれを羽翼すると云ふのみ已ならんや。先輩服子遷も、亦嘗て中古の人物の言行を採擷し、世語の一書を為す。その文辭はよく臨川を摹倣すと謂ふべし。しかれども余はひとりその事蹟の、一も於國記の載する所の之外に出でず、徒らにその辭の之工みなるを示すを惜むのみ。今大可の之撰するや、文采或は及ばざる有りといへども、その逸事異聞に至つては、もつて表見してこれを傳ふるに足る。况や乎史料を於他日に俟つをや。すなはち吾は寧ろ此を取つて彼を取らざるなり。諸友に慫慂して梓に授く。梓既に成り、まさに余が序を俟つてもつて諸を世に公にせんとす。すなはち卒かにその端を引くことかくのごとし。

【漢文エディタ原文】　正史ノ之體タル、著- 2( 明シ一代ノ治亂興亡ノ之跡、紀綱法度ノ之概ヲ )1 、與ルモノ 2( 夫ノ人倫ノ賢否忠姦、淑慝邪正ニ )1 、率ネ皆於テハ 2( 其ノ大ナル者ニ )1 焉ニ記ス^之ヲ。至ツテハ 2( 於零碎ノ之言語、瑣屑ノ之事蹟ニ )1 者、史家ノ所ノ^不ル^載セ者ナレドモ、而猶ホ _シ_ ^有ルガ^可キモノ 3( 以テ見ル 2( 夫ノ風俗人心ノ之徽醜ヲ )1 。從ツテ 3( 其ノ所ニ 2( 傳聞スル )1 而録ス^之ヲ。是レ則チ稗官小説ノ之所- 2( 以ナルカ竟ニ不ル )1^可カラ^廢ス也歟。劉宋ノ臨川王ノ之著セル世説新語タルヤ也、單辭隻行、標新領奇、文既ニ雋快、事鮮シ^乖クコト^實ニ。足ル^見ルニ 2( 江左一時ノ之風尚ヲ )1 。則チ謂フモ 3( 之ヲ羽- 2( 翼スルモノト史書ヲ )1 可ナリ矣。後ノ之規- 2( 摹トスル臨川ヲ )1 者ニ、有リ 2( 華亭何氏 )1 、有リ 2( 雲間李氏 )1 。皆能ク｜摭（ひろ）ヒ 2( 逸事ヲ )1 、｜攟（と）ルニ 2( 異聞ヲ )1 、不ルノミ 2( 第ダニ以テセ )1^文ヲ而已也。｜属者（このごろ）、友人角田大可、撰ス 2( 近世叢語八巻ヲ )1 。我ガ　朝建櫜以來、文武ノ賢豪、奇偉タル異能、與夫・名緇・閨秀、奕〻トシテ相望ミ、代不^乏シカラ^人ニ。其ノ言語ト事蹟ト、可キ 2( 以テ觀^風ヲ考フ )1^德ヲ者、或ハ得 2( 諸ヲ故老ノ之談ニ )1 、或ハ取リ 2( 諸ヲ碑誌ノ之勒ニ )1 、或ハ采ル 2( 諸ヲ家乗・剳記ノ之所ニ )1^傳フル。蒐獵綜叙、洪纎悉擧、殆ド亦華亭・雲間ノ之亞ナリ也。　昭代ノ史書モ猶ホ未ダ 2( 全クハ備ハラ )1 。則チ如キノ^斯クノ編ハ者、或ハ可シ 3( 以テ資ク 2( 修史ノ之用ヲ )1 。豈ニ特ダニ羽- 2( 翼スルト之ヲ )1 云フノミ已ナランヤ乎。先輩【服子遷】〈NOTE 服部南郭〉モ、亦嘗テ採- 2( 擷シ中古ノ人物ノ言行ヲ )1 、為ス 2( 【世語ノ一書】〈NOTE 大東世語〉ヲ )1 。其ノ文辭ハ可シ^謂フ 3( 善ク摹- 2( 倣スト臨川ヲ )1 矣。而レドモ余ハ獨リ惜ムノミ 2{ 其ノ事蹟ノ、一モ不^出デ 2( 於國記ノ所ノ^載スル之外ニ )1 、徒ラニ示スヲ ┤其ノ辭ノ之工ミナルヲ }1 而已。今大可ノ之撰スルヤ、文采雖モ 2( 或ハ有リト )1^不ル^及バ、而至ツテハ 2( 其ノ逸事異聞ニ )1 、足ル 2( 以テ表見シテ而傳フルニ )1^之ヲ。况ヤ乎俟ツヲヤ 2( 史料ヲ於他日ニ )1 。則チ吾ハ寧ロ取ツテ^此ヲ而不ルナリ^取ラ^彼ヲ也。諸友ニ慫慂シテ授ク^梓ニ。梓既ニ成リ、将ニ 2{ 俟ツテ 2( 余ガ序ヲ )1 以テ公ニセント ┤諸ヲ世ニ }1 。輙チ卒カニ引クコト 2( 其ノ端ヲ )1 如シ^此クノ。文政十一年【龍集】〈NOTE 歳次〉【箸雍】〈NOTE 戊〉【困敦】〈NOTE 子〉孟冬月【下澣】〈NOTE 下旬〉江都一齋老人佐藤担識

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近世樷語序

余嘗^テ謂^ヘリ_下士氣^ハ與_二世運_一相随^フト_上。自^リ_二慶長_一施^シ_二於正德^ニ_一、於^テ_二天明^ニ_一其^ノ運可^シ_レ謂^フ_レ盛^ンナリト矣。士^ノ生^クル_二其^ノ間^ニ_一、雖^モ_二粹駁不^ト_一レ同^ジカラ、要^スルニ自^ラ磊落・奇偉^ニシテ、言語・文章各具^フ_二一己^ノ風骨^ヲ_一。爾來^ノ人物^ハ、諧^シク能^ク自^ラ修^ムルノ餘、無^シ_レ恥。君子人^ノ為^スコト_二文詞^ヲ_一綿密^ニシテ罕^ナルモ_レ見^ルコト_二疵瑕^ヲ_一、而^モ終^ニ不_レ免^レ_二於輕薄・猥瑣^ヲ_一。譬^ヘバ若^シ_下方剛之夫^ハ、雖^モ_レ有^リト_二病癖_一不^ルニ_レ害^ハ、為^{ラントスル}_二強壮_一病^ノ袪^キテ_二體^ノ和^ヲ_一而衰侯見^ユルガ_上矣。憂^フル_レ世^ヲ者不^ランヤ_二當^ニ留^メ_一レ心^ヲ邪。士^ノ之氣概・議論^ハ如^クシテ_レ無^キガ_三關-_二係^スル於世^ニ_一、而有^リ_二大^イニ不^ル_レ然^ラ者_一。是^レ可^シ_下与^スル_二知者^ニ_一道^タル_上。角田九華^ノ之著近世叢語^ハ、有^ルカナ_レ見^ルコト_二於此^ニ_一哉。善^ク倣^ヘドモ_二體^ヲ劉氏^ノ世説^ニ_一、而意^ハ自^ラ有^リ_レ在^ル_レ焉^ニ。特^ダ依^ツテ_二其^ノ目^ニ_一而部-_二分^スルノミ之^ヲ_一云爾。然^レバ昔時^ノ士^ノ多^ク可^キ_レ入^ル_二此^ノ目^ニ_一者^モ、今^ハ則^チ不_レ然^ラ已。【昌黎曰^ク、】〔注丨韓愈『調（からか）^フ_二張籍_一』〕李杜^ハ文章在^リ、光燄萬丈^ノ長^キ、不_レ知^ラ羣児^ハ愚^ニシテ、那^ンゾ用^イン_二故^キ謗傷^ヲ_一、伊^レ我生^キテ_二其^ノ後^ニ_一、擧^ゲテ_レ頸^ヲ遥^カニ相望^ム、夜^ノ梦^ニ多^シ_レ見^ルコト_レ之^ヲ、晝【視^レバ】〔注丨原詩「思^ヘバ」〕反^リテ微茫^ナリト。【山谷】〔注丨黄山谷〕【題^シテ_二大蘇^ノ像^ニ_一曰^ク】〔注丨黄山谷『題東坡像』、『豫章黄先生文集』八所収〕、東坡先生^ハ天下^ノ士^ナリ、嗟乎【可^シ_レ惜^ム】〔注丨原文「惜^シイ哉〕今蚤^クス_レ世^ヲ、蠢^〻^トシテ【猶^ホ】〔注丨原文「尚^ホ」〕誚^リテ短^クスト_二人^ノ氣^ヲ_一。今^ノ之士較^ベテ_二其^ノ為^リヲ_レ人^ト於前輩^ト_一、光芒・氣魄孰^レカ大^ニ孰^レカ小^ナル。不^ルナリ_二唯^ニ文章^{ノミニアラ}_一也。乃^チ動^モスレバ嗤-_二誚^シテ之^ヲ_一、以^テ賣^ル_二已^レガ名聲^ヲ_一。聞^ケバ_レ嗤^ヒ-_二喚^バフヲ焉^ヲ_一、而短^クスル_二其^ノ氣^ヲ_一者^モ亦無^シ_レ知^ル_レ為^スヲ_レ恥^ト。九華^ノ之夜^ノ夢^ニ數^バ視、随^テ而筆_レ之^ヲ書^ス。其^ノ不^ル_三終^ニ堕^セ_二微茫^ニ_一者幾載^ゾ。嗚呼余^モ亦蠢^〻^タル羣児^ノ中^ノ之一^ナルノミ耳。然^レドモ猶^ホ知^ル_二余^ガ頸^ノ望^ムヲ_一レ之^ヲ。及^ビ_レ讀^ムニ_二此^ノ編^ヲ_一、前輩^ノ氣願風旨、躍〻^トシテ欲^シ_レ出^デント、足^リ_二以^テ起^シ_レ懦^ヲ敦^クスルニ_一レ薄^キヲ、使^メ_二我^ヲシテ忘^レ_一レ生^ヲ、其^レ復^タ意^ハシム_二佗人^ヲ_一。讀^ム者^モ亦皆然^ルノミ爾。九華^ノ所_レ為^ス、益^スルコト_二於世道^ニ_一如^シ_レ此^クノ。其^ノ請^フニ_レ序^ヲ烏^クンゾ得^ンヤ_レ不^ルヲ_二慨然^トシテ言^ハ_一哉。

文政戊子梅雨月二十六日山陽外史賴襄子成撰并書

【白文】　余嘗謂士氣與世運相随。自慶長施於正德、於天明其運可謂盛矣。士生其間、雖粹駁不同、要自磊落・奇偉、言語・文章各具一己風骨。爾來人物、諧能自修餘、無恥。君子人為文詞綿密罕見疵瑕、而終不免於輕薄・猥瑣。譬若方剛之夫、雖有病癖不害、為強壮病袪體和而衰侯見矣。憂世者不當留心邪。士之氣概・議論如無關係於世、而有大不然者。是可与知者道。角田九華之著近世叢語、有見於此哉。善倣體劉氏世説、而意自有在焉。特依其目而部分之云爾。然昔時士多可入此目者、今則不然已。昌黎曰、李杜文章在、光燄萬丈長、不知羣児愚、那用故謗傷、伊我生其後、擧頸遥相望、夜梦多見之、晝視反微茫。山谷題大蘇像曰、東坡先生天下士、嗟乎可惜今蚤世、蠢^〻猶誚短人氣。今之士較其為人於前輩、光芒・氣魄孰大孰小。不唯文章也。乃動嗤誚之、以賣已名聲。聞嗤喚焉、而短其氣者亦無知為恥。九華之夜夢數視、随而筆之書。其不終堕微茫者幾載。嗚呼余亦蠢^〻羣児中之一耳。然猶知余頸望之。及讀此編、前輩氣願風旨、躍^〻欲出、足以起懦敦薄、使我忘生、其復意佗人。讀者亦皆然爾。九華所為、益於世道如此。其請序烏得不慨然言哉。
文政戊子梅雨月二十六日山陽外史賴襄子成撰并書

【書き下し文】余嘗て士氣は世運と相随ふと謂へり。慶長より於正德に施し、天明に於てその運盛んなりと謂ふべし。士のその間に生くる、粹駁同じからずといへども、要するに自ら磊落・奇偉にして、言語・文章各一己の風骨を具ふ。爾來の人物は、諧しくよく自ら修むるの餘、恥なし。君子人の文詞を為すこと綿密にして疵瑕を見ること罕なるも、而も終に於輕薄・猥瑣を免れず。譬へば方剛之夫は、病癖有りといへども害はざるに、強壮為らんとする病の體の和を袪きて衰侯見ゆるがごとし。世を憂ふる者まさに心を留めざらんや邪。士の之氣概・議論は於世に關係する無きがごとくして、而大いに然らざる者有り。これ知者に与する道たるべし。角田九華の之著近世叢語は、於此に見ること有るかな。よく體を劉氏の世説に倣へども、而意は自ら焉に在る有り。ただその目に依つてこれを部分するのみ云爾。然れば昔時の士の多くこの目に入るべき者も、今はすなはち然らず已。昌黎曰く、李杜は文章在り、光燄萬丈の長き、知らず羣児は愚にして、那んぞ故き謗傷を用いん、伊れ我その後に生きて、頸を擧げて遥かに相望む、夜の梦にこれを見ること多し、晝視れば反りて微茫なりと。山谷大蘇の像に題して曰く、東坡先生は天下の士なり、嗟乎惜むべし今世を蚤くす、蠢^〻としてなほ誚りて人の氣を短くすと。今の之士その人と為りを於前輩と較べて、光芒・氣魄孰れか大に孰れか小なる。唯に文章のみにあらざるなり。すなはち動もすればこれを嗤誚して、もつて已れが名聲を賣る。焉を嗤ひ喚ばふを聞けば、而その氣を短くする者もまた恥と為すを知るなし。九華の之夜の夢に數ば視、随てこれを筆書す。その終に微茫に堕せざる者幾載ぞ。嗚呼余もまた蠢^〻たる羣児の中の之一なるのみ。しかれどもなほ余が頸のこれを望むを知る。この編を讀むに及び、前輩の氣願風旨、躍^〻として出でんと欲し、もつて懦を起し薄きを敦くするに足り、我をして生を忘れしめ、それ復た佗人を意はしむ。讀む者もまた皆然るのみ。九華の為す所、於世道に益することかくのごとし。その序を請ふに烏くんぞ慨然として言はざるを得んや。
文政戊子梅雨月二十六日山陽外史賴襄子成撰并書

【漢文エディタ原文】　余嘗テ謂ヘリ 2{ 士氣ハ與 2( 世運 )1 相随フト }1 。自リ 2( 慶長 )1 施シ 2( 於正德ニ )1 、於テ 2( 天明ニ )1 其ノ運可シ^謂フ^盛ンナリト矣。士ノ生クル 2( 其ノ間ニ )1 、雖モ 2( 粹駁不ト )1^同ジカラ、要スルニ自ラ磊落・奇偉ニシテ、言語・文章各具フ 2( 一己ノ風骨ヲ )1 。爾來ノ人物ハ、諧シク能ク自ラ修ムルノ餘、無シ^恥。君子人ノ為スコト 2( 文詞ヲ )1 綿密ニシテ罕ナルモ^見ルコト 2( 疵瑕ヲ )1 、而モ終ニ不^免レ 2( 於輕薄・猥瑣ヲ )1 。譬ヘバ若シ 2{ 方剛之夫ハ、雖モ^有リト 2( 病癖 )1 不ルニ^害ハ、為ラントスル 2( 強壮 )1 病ノ袪キテ 2( 體ノ和ヲ )1 而衰侯見ユルガ }1 矣。憂フル^世ヲ者不ランヤ 2( 當ニ留メ )1^心ヲ邪。士ノ之氣概・議論ハ如クシテ^無キガ 3( 關- 2( 係スル於世ニ )1 、而有リ 2( 大イニ不ル^然ラ者 )1 。是レ可シ 2{ 与スル 2( 知者ニ )1 道タル }1 。角田九華ノ之著近世叢語ハ、有ルカナ^見ルコト 2( 於此ニ )1 哉。善ク倣ヘドモ 2( 體ヲ劉氏ノ世説ニ )1 、而意ハ自ラ有リ^在ル^焉ニ。特ダ依ツテ 2( 其ノ目ニ )1 而部- 2( 分スルノミ之ヲ )1 云爾。然レバ昔時ノ士ノ多ク可キ^入ル 2( 此ノ目ニ )1 者モ、今ハ則チ不^然ラ已。【昌黎曰ク、】〈NOTE 韓愈『｜調（からか）フ 2( 張籍 )1 』〉李杜ハ文章在リ、光燄萬丈ノ長キ、不^知ラ羣児ハ愚ニシテ、那ンゾ用イン 2( 故キ謗傷ヲ )1 、伊レ我生キテ 2( 其ノ後ニ )1 、擧ゲテ^頸ヲ遥カニ相望ム、夜ノ梦ニ多シ^見ルコト^之ヲ、晝【視レバ】〈NOTE 原詩「思ヘバ」〉反リテ微茫ナリト。【山谷】〈NOTE 黄山谷〉【題シテ 2( 大蘇ノ像ニ )1 曰ク】〈NOTE 黄山谷『題東坡像』、『豫章黄先生文集』八所収〉、東坡先生ハ天下ノ士ナリ、嗟乎【可シ^惜ム】〈NOTE 原文「惜シイ哉〉今蚤クス^世ヲ、蠢^〻トシテ【猶ホ】〈NOTE 原文「尚ホ」〉誚リテ短クスト 2( 人ノ氣ヲ )1 。今ノ之士較ベテ 2( 其ノ為リヲ^人ト於前輩ト )1 、光芒・氣魄孰レカ大ニ孰レカ小ナル。不ルナリ 2( 唯ニ文章ノミニアラ )1 也。乃チ動モスレバ嗤- 2( 誚シテ之ヲ )1 、以テ賣ル 2( 已レガ名聲ヲ )1 。聞ケバ^嗤ヒ- 2( 喚バフヲ焉ヲ )1 、而短クスル 2( 其ノ氣ヲ )1 者モ亦無シ^知ル^為スヲ^恥ト。九華ノ之夜ノ夢ニ數バ視、随テ而筆^之ヲ書ス。其ノ不ル 3( 終ニ堕セ 2( 微茫ニ )1 者幾載ゾ。嗚呼余モ亦蠢^〻タル羣児ノ中ノ之一ナルノミ耳。然レドモ猶ホ知ル 2( 余ガ頸ノ望ムヲ )1^之ヲ。及ビ^讀ムニ 2( 此ノ編ヲ )1 、前輩ノ氣願風旨、躍^〻トシテ欲シ^出デント、足リ 2( 以テ起シ^懦ヲ敦クスルニ )1^薄キヲ、使メ 2( 我ヲシテ忘レ )1^生ヲ、其レ復タ意ハシム 2( 佗人ヲ )1 。讀ム者モ亦皆然ルノミ爾。九華ノ所^為ス、益スルコト 2( 於世道ニ )1 如シ^此クノ。其ノ請フニ^序ヲ烏クンゾ得ンヤ^不ルヲ 2( 慨然トシテ言ハ )1 哉。【文政戊子梅雨月二十六日山陽外史賴襄子成撰并書】〈NOTE 序記〉

【白文】　

【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

【白文】　

【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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【漢文エディタ原文】　

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【漢文エディタ原文】　

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【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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【書き下し文】

【漢文エディタ原文】　

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近世叢語　序・凡例・目録