3,手作りアンプ1号機(AKG#1) 

 

 

02.06.17

 

世の中でいわれている高級アンプ、ビンテージアンプというのは、基板を使わずに、point to point

配線で仕上げられているらしい。WEBでいろいろ探していると、ご自分でギターアンプを作成している方

がおられて、「これは、おもしろいかも・・・」と思って、参考書を買ってきて、WEBでいろいろ調べて勉強しました。

とりあえずどんな物か実験的要素で作り始めましたので、シャーシに組み替えが2回とキャビネット作成2

を経て現在に至っています。

 

とりあえず、オーディオアンプの世界では最初はシングルアンプからはじめるようですので、これに従い

シングルを作ります。

シングルアンプの利点を列挙してみましょう。

 

1,シングルアンプでは、パワー管が1つでスピーカーを駆動します。(パラレルという方法があり、シングルでも

 複数個のパワー管でドライブする方法もあります)プッシュプルアンプでは2つのパワー管がそれぞれ逆位相

 でスピーカをドライブします。プリ部はシングルでも、パラレルでも変わらないのでパラレルの場合は、プリの

 信号を2つの位相が反転した信号に分ける回路が必要になります。

  これをPhaseInverterといいます。シングルアンプの場合はPhaseInverterが不要ですので、参考書の

 PhaseInverterの項を飛ばし読みしてokです。

 

2,また、パワーもそれほどとれないでしょうからNFBの項も飛ばし読みして結構です。(NFBとは

 NegatibeFeedBackの略で、日本語では負帰還といいます。実際の回路ではパワー管の後アウトプットトランス

 というトランスが、直接スピーカーを駆動しますが、このトランスの出力の位相の反転した信号を、プリ部に戻し

 てあげる事によって歪みを押さえて周波数特性をよくします。しかしギターアンプの場合、ハイファイな音がギター

 アンプとして良い音かという問題があり、一概にそうはいえません。その証拠にオーディオアンプでは歪まない

 アンプを作るのに腕を競いますが、ギターアンプはいかに甘くて美しい歪みを作るかに腕を競うわけですよね。

 これがまた、たまらなく深くて魅力的世界なわけですが、、、)ちなみに私の場合計算上(トランス1次側)5.3W

 位ですね。しかし、真空管の5Wはなめてはいけません。結構すさまじい音がでます。

 

 

上記のように回路がかなり簡略化できそうです。

 

 

3,まだプッシュプルを作っていませんので偉そうなことはいえませんが、シングルアンプの歪みは2次高調波が

 主成分といわれています。オーディオアンプの場合は嫌われていますが、歪みで耳に心地よい歪みは偶数次

 の高調波です。ですので、歪ませた音は気持ちが良いと思います。

 

シングルが劣っていると思われる点を列挙しますと

 

1,パワー管は基本的に入力に比例して電流が増加しますので、アウトプットトランスに電流容量が必要となり

 ますので、大型になってしまいます。通常購入できるアウトプットトランスと、電源を考えると10Wとるのは

 容易ではないと思います。

  プッシュプルの場合は片側の電流が増加しているとき、反対側は必ず電流が減ってゆきますので、電流

 の合計値は常に一定ですから、トランスがあまり大きくならずにパワーが取り出せます。

  

2,また、作った感じで思うのですが、低域の特性が良くないと思います。低音弦で歪みっぽい音がしたりします。

 これは、いろいろ対策をとってみましたがまだ、改善されていません。

 

こんなところでしょうか、シングルがいいか、プッシュプルがいいかというのはいろいろな場所で論議されているよう

ですが、まあ趣味の世界ですから人それぞれ好みがあって良いと思います。

 

 

AKG#1のお話に入りますと、設計はまずプリアンプ、パワーアンプの真空管を決定することからはじめます。

私はブギーの真空管を交換したときに残っていたブギーのお下がりでとりあえずはじめることにしました。

(うまく行ったら、新品の真空管に交換しようと思っていました)

ですので、プリ管は12AX7、パワー管は6L6となりました。

 

次にそれぞれの真空管の特性表を引っぱり出してきます。WEBの検索で12AX7、6L6とかいれるとたくさん

でてきます。(いい時代ですね)

ここから、プレートの負荷を決めてLoadLineを決めます。プリ管の場合は抵抗で調整できますが、パワー管

の負荷は抵抗ではなくアウトプットトランスの1次側のインピーダンスになります。すなわちあまり選択の余地は

ないのです。またLoadLineを引くとわかりますが、電圧が減少していった場合、電流は増えてゆきますが、

アウトプットトランスは流せる電流値が決まっていますので、この定格を越えないようにLoadLineを引く必要

があります。やってみるとわかるのですが、パワー管については制約が多いです。

 

エクセルで表を作成しました。ワッテージ、負荷抵抗値を入れるとグラフにすぐに反映されて便利だと思います。

 

このようにして決めた後、最大で電流値がどのくらいか?電圧は何V必要か?を見極めて電源の設計を

します。電源用のトランスはこのようにして選択します。

 

次にトーン回路です。私はFENDERのトーン回路を採用しました。作ってから気がついたのですが、FENDER

のトーン回路ってすべて絞った状態では音がでなくなります。

ちょっと考えると、高域用の250pFのコンデンサが、プリ管のプレートからGNDに張り付くのです。(恐ろしい)

ですので、必ず高耐圧の250pFを使ってください。焼けると思いますよ。私のは600V耐圧の物ですので

特に問題ありませんでした。

 

また、トーン回路は本来のアンプにとってあまり必要な機能ではなく、ないほうが素直な特性が出せると思い

スイッチでトーンの回路が生きるか、バイパスするかを選べるようにスイッチをつけました。

しかし、バイパスした際12AX7と12AX7の間をコンデンサで結合することになりますが、このコンデンサの

値がなかなか決まらないです。ちょっと音が太すぎたり、細すぎたりで、まだちょうど良い物が見つかりません。

おそらく数百pFに収まると思います。

 

パワー管は6L6はビーム管といわれる管です。理論上15W取り出せます。私がみた特性表ではスクリーン

グリッドが200Vの条件でした。

ビーム管の接続方法としては

 

1,5極管結合

2,3極管結合

3,ウルトラリニア結合

 

があるようです。(現在私が知っているのはこれだけですがほかにおもしろい結合があったら教えてください)

3のウルトラリニアは試していませんが、5極管結合と3極管結合の違いが試せるようにアンプの裏側に

スイッチできり換え可能なようにしました。

これは気をつけていただきたいのですが、パワー管のプレートにスイッチがつくことになりますので、スイッチ

の定格を満足してください。(小さいスイッチではだめです)また、感電しますので気をつけましょう。(私は

最初の切り替えで感電しました。100Vとは違いかなり痛い感電です。)

3極管結合では明らかにパワーが落ちてしまいますが、音が柔らかく、優しい音になります。これがまた魅力的

です。おそらく次のアンプでも、このスイッチはつけるでしょう。

 

 

セパレート時代のAKG#1です

 

 

キャビネットは最初セパレートにしていました。これには訳があって、ビルドインのアンプというのは構造上、スピーカー

の振動をアンプが拾ってしまいます。それを増幅しますから、結局ハウリングのような現象が起きやすくなります。

最初早く完成させたくて、配線をいい加減にやってしまったため、アンプをコツコツとたたくとスピーカーから、もろ

にその音が聞こえておりましたので、とりあえず、しばらくセパレートでやっていました。

その後、配線作業をやり直して、振動の影響も少なくなってきたので、当初の目標であったビルドインアンプの

キャビネットを作成して現在の姿になっております。12inchセレッション、10InchEV10InchFENDERのスピーカを

試してみましたが、10InchFENDERが一番あっていると思われたし、重さも軽くなるので、FENDERのスピーカー

を取り付けています。

定数を変更したり、スイッチを増設したりということは、今でもやっていますので、音はその都度変化していっています。

その際に、アンプ部がいじりやすいように、裏蓋はマジックテープで固定してすぐにメンテナンスできるようにしています。

このアイディアも次回採用したいです。大きさも手頃で気に入っています。長時間の動作も確認がとれましたので、安定

していると思います。

 

 

          ビルドインに改造したシングルアンプです。

 

          スピーカーネットをはずしたところです。

 

回路図はこちらです。(最終とあっているかな?)

 

02.08.19

写真を整理していて、AKG#1の作成中の写真が出てきたので、忘れないうちに整理しておきます。

 

まずは、シャーシの加工です。真空管が刺さる場所と、コントローラは反対側に来るように(FENDER方式)にレイアウト

しました。

大きな穴、四角い穴は先にドリルで大まかに穴あけして、あとでヤスリで仕上げます。

 

 

 

次に塗装です。ホームセンターで好きな色のスプレーを買ってきて数回に分けて塗りましょう。

私はワインレッドのつもりでを選びましたが、鉄筋の色でした(悲)、、、でも、これはこれでなかなかに味があっていいかも。

 

 

このシャーシに部品を組んで行きます。配線は全て手配線になります。意外と早く終わりました。

小さいシャーシを選んでしまったので、配線と部品の組順に苦労しましたが、何とか、、、

 

 

後は、測定とチェックです。

測定器(発振器と、FFTアナライザ)はPCで代用できます。なんと便利な世の中でしょうか、、(ちなみに私のリンク

にあります)

ダミーロード(8Ω30W程度の抵抗)をつなぐのを忘れないようにしましょう。

このときのOPT(スピーカー駆動用トランス)は春日無線製の3000円くらいの安い物を使っていましたが、後で

ノグチトランス製に変更しました。

スピーカーもそれなりに試してみましたが、小さめで良い音のするFENDER(セレッション)製の10Inchにしました。