第57話(05.02.23)
ギタリストの為のアンプ検証 その1(シングル、プッシュプルPART1)
今回はギタリストの為の電気講座1回目ということで、数回に渡り、真空管アンプについて私なりの説明をしたいと思います。
電気って、目で見えない物なので、できるだけ身近にある物に例えて説明するようにしてみますので、最後まで読んでみてください。
今回はトランスと、出力段の方式についてです。
トランスについて
真空管のアンプでは、通常最終段にあるパワー管(6L6とか6V6、EL34とかEL84とか言うやつです)が直接スピーカーを鳴らしているわけではありません。必ずトランスというパーツがスピーカーとパワー管の間に入っています。(※1)
スピーカーって8Ωとか16Ωとか4Ωとかいうでしょ?この抵抗値は真空管からしてみると、ものすごく小さい値なのです。(=真空管から見たら、もの凄く重い負荷なのです)
真空管というのは、エンジンにたとえると、回転数はすごく高いけれど(電圧が高い)、トルクが低い(=出力インピーダンスが高い)エンジンなのです。えーと、例えると、小排気量のバイクが馬力を稼ぐために回転数を、ものすごく上げるようになっているのとよく似ていますね。トラックなんかタコメーターが3000回転位しかないのに対して、250CCのオートバイは平気で20000回転位までメーターがあるでしょ?これは、結局馬力は回転数とトルクの積なので、トルクのないエンジンの馬力を上げるには、回転数を上げれば馬力を稼ぐ事ができる為、回転数で勝負しているのですね。真空管は電圧を上げて馬力(=出力)を稼いでいます。
でも、エンジンの場合、その力をタイヤに伝えるとき、エンジンが直接タイヤを回す訳ではありません。間に必ず、タンスミッション(ギア)が入りますね。真空管アンプにおけるトランスは、まさにこのトランスミッションに相当します。現にちゃんとギア比に相当する、巻き数比というものが存在しております。
これで何となくトランスの役割がわかったでしょうか?回転数を犠牲にしてトルクに変換している、まさにトランスミッションなのです。真空管アンプの場合は電圧を犠牲にして出力インピーダンスを下げて、ワッテージを得るというところです。
そして、私が最近思うのは、真空管アンプが良いと言われるのは、少なからず、このトランスが関係しています。トランジスタのアンプではトランスを使用せず、スピーカを直接ドライブ可能ですが、真空管は上記のような理由で直接スピーカーをドライブできません(※1)
しかし、このトランス、見ようによっては発電機に見えます。(ちょっと難しくなりそうなので、別の機会に述べます)つまり、通常は出力が電源以下しか出せないのですが、いざと言うときには、電源以上の出力を出します。、、、すなわち発電機なのです。そういえば、トランスって自転車についているダイナモと同じつくりをしているんですよねw
出力段の方式について
トランスのところで例えた話しはちょっと忘れてもらって、シングルとプッシュプルを例えで話してみると、、、重りをバネで吊す時のことを考えてもらった方が良いと思います。
一番シンプルな出力方式は、シングルエンド(単にシングルアンプとかいう)と呼ばれる物です。原理的には重りを1つのバネで吊します。
代表的なのは、FENDERのCHAMP等です。最近音が良くて感心したアンプではコーネルのロマーニです。(私の経験ではギターアンプでシングルアンプは良いとがする物があまりありませんでした。)
長所は、回路が単純になり、部品も少なくて済む事です。ですので小型アンプに多いです。
短所はパワーがあまりとれない、(これは日本では長所にもなり得ますが、、)電源のノイズを受けやすいという事です。
シングルアンプのイメージ図
次に代表的なのは、プッシュプルという形式です。これは重りを2つのバネで吊します。
この形式のアンプはたくさんあります。FENDERでいうとデラリバ以上のクラスのアンプは全てがこの形式です。4個で吊しているアンプは更にパラレルプッシュプル(パラレル=並列)と言います。
長所はシングルと同じ真空管を使用しても2倍以上のパワーを引き出せるということ、電源のノイズを受けにくいので、電源を安価にできるということ。
短所は回路が複雑になると言うことでしょう。
プッシュプルアンプのイメージ図