第67話(05.08.20)
ギタリストの為のアンプ検証 その4(A級、AB級の話)
さて第4回目です。だんだん難しいお話になってきました。
今回はA級、AB級についてお話します。
前回、「トランスからスピーカーに出す信号はトランスの入力であるパワー管の波形(バネの軌跡)の上側のバネと下側のバネの奇跡をそれぞれいいところを取って、合成する仕事なのです。
つまり、バネが2つある場合、一つのバネがきちんと仕事をしていれば、もう一つのバネは休んでいてもトランスで合成されると、関係なくなってしまうのです。」
というお話をしました。
これを逆に利用すると、プッシュプルアンプでは面白いことがおきます。
図1 図2
前回お話したバイアス(音がない状態でおもりを留めておく電圧)を変えてみます。
すなわち、図1の状態ではなく、図2のように両方のバネを引っ張る方向にバイアスをかけるのです。
この状態でバネが同じ分伸びると、ばねが伸びきってしまい、音で例えると歪みが多い部分になります。
しかし、トランスの合成の仕事のおかげで、この歪みの影響が無視できるようになるのです。
このため、パワーが大きくとることができるのです。
わかりにくいかもしれませんので、またがんばって、アニメーションで示してみます。
図3 図4
図3と図4の違いはバイアスの違いです。バイアスを深く(バネが伸びる方向)セットしておくと、バネは伸びて、歪みは増えますが、トランスの合成の働きで歪みは無視できるようになり、上のアニメーションのようにパワーが大きく取れるようになります。
これまでの、プッシュプルのバネの例えは、パワー管の入力(グリッド)を現しています。 わかりやすいように、A級とAB級の出力(プレート)とトランス、スピーカーのイメージを現してみたいと思います。
ここで、用語を当てはめますと、図3がA級。図4がAB級と呼ばれます。
A級が高級なイメージでAB級というと、安っぽく感じるかもしれませんが、そんなことは全くなく、私のイメージではギターアンプにはAB級があっていて、ハイファイステレオにはA級があっていると思います。
また、このおもりを留めておくためのバイアスという電圧を作る方式で代表的なのは固定バイアスと自己バイアスという方法です。
ギターアンプのメーカーの中には固定バイアス=A級 として謳って売っていることもありますので、ご注意ください。
固定バイアスと自己バイアスはA級、AB級とは全く関係なく実現できる技術です。