84話(10.04.22

エミッタフォロアを越えるVolume Pedal用バッファ

 

Volume Pedal用に音質変化が少なく、いかにもバッファを入れました的な音にならないようなバッファを模索しており、ご依頼があり、モデファイを行い、御好評をいただいていますので、エッセイに取り上げようと思います。

 

まずは、理想とするバッファを考えて見ますと、、、

 

@音質変化(すなわち高域の劣化)が少ない。

AボリュームペダルMAXの状態では、ギター直の音量が得られること。

Bバッファなどによる変な味付けが無いこと。

 

という事でしょうか。

通常考えられるエミッタフォロアによるバッファを考えてみます。(下の回路図)

動作を簡単に説明すると、出力(エミッタ)のインピーダンスがどんなに変化しても、入力(ベース)から見たインピーダンスは変わらない・・・

トランジスタの特性上ベースとエミッタ間の電圧は常に0.6Vを保とうとするわけです。(Vbe=0.6V)ですので、たとえばベース(ギターの出力)から1Vp-pの信号が来たとすると、それよりも0.6V降下した電圧で出力しようとします。

これがエミッタフォロアの原理なのですが、唯一の欠点と言えば、出力(アンプに送る信号)はその振幅を一度R1に入力してから、電圧として取り出すのです。そのため、出力インピーダンスはR1によってしまいますし、この部品の音のようなものが感じられると思います。

また、原理原則からいって、出力は必ず0.6Vp-pの音量が低下します。大信号(たとえば10Vp-p程度)で0.6Vでたいしたことは無いですが、ギターのピックアップの出力は0.5vp-p程度ですので、このVbeはあまり無視できないものとなります。

 

シミュレーション上、負荷のボリューム(VR1R2)は小さめの値を使用しています。

 

通常のエミッタフォロア(バッファ)回路

 

上記のエミッタフォロアの周波数特性は以下のようになります。

通常のギターでの音域では、問題ないといっていいと思います。(でも高域は少し落ちています)

緑はエミッタフォロアの出力で、赤の線はボリュームの出力です。低域が少し落ちているのはVR1R2の値が実際よりも少し厳しい値にしているからです。

 

              通常のエミッタフォロア(バッファ)周波数特性

 

 

上記のR1の問題点を改善するために、回路を試行錯誤しました。回路は一応秘密とさせてください(笑)

その結果と、上記の通常のエミッタフォロアの特性を重ね合わせて見ます。

高域の特性も改善されていますが、それよりも、注目すべきはVbe=0.6Vの原理が改善されて出力レベルが大きくなって、原音に近づいています。

緑の線の上にあるのが、改善後のバッファの出力で、青い線がボリュームの出力です。(シミュレーション上、もちろんボリュームの位置と定数、使用するトランジスタはエミッタフォロアと同じにしています。)

 

              通常のエミッタフォロア(バッファ)と改善バッファの周波数特性

 

この回路を実際に組み込んだ例を、ご紹介します。実際に耳で聞くと違いが良くわかりました。

 

まずはSho-Budです。

当初、FETを使ったソースフォロア(トランジスタのエミッタフォロアと等価です)でバッファを入れて使っておられたようなのですが、音量が下がる、いかにもFETという音がするので、改善したいということでした。

 

元々付いていたバッファ回路を取り外します。

 

企業秘密(笑)なので、一応モールディングさせていただきました。

これを、入れることにより、上記の悩みは解消され、アンプギター直接続と音が変わらなくなったようです。

 

次は、EARNIE BALLのボリュームペダルです。これもまた良く出来たボリュームペダルだと思います。

 

まずは、配線がシールドされていないので、シールドに変更します。

 

 

基板を作成し、もとの基板にカメの子状態にして取り付けます。

 

 

組み込んだ状態です。

電池ケースは内部に追加し、フロントパネルにDCジャックを追加しました。

 

もちろん、モデファイ承ります。こちらまでお問合せください。

 

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