第89話(10.07.05)
Over Drive Special Pre AMP製作
T様から、ダンブル・オーバードライブスペシャルのプリアンプ部の作成依頼がありました。
スタジオに行くときは、このアンプだけを持っていけば、スタジオにあるアンプのパワーアンプを借りて(このPre
Ampの出力をEffect Returnに突っ込みます)
オーバードライブスペシャルの音が楽しめ、なかなか、面白そうなアンプになりそうです。
早速設計を開始します。今回はデザイン的にはスラント型のケースを利用しました。
T様の仕様により、このアンプ自体にはフットスイッチを取り付けず、単体で使用するときには、ミニスイッチで「Over Drive MODE」と「Boost MODE」を切り替えます。また、ジャックをつけており、外部のラッチスイッチでも「Over Drive MODE」と「Boost MODE」が切り替え可能となっています。(ナルホド、ナルホド)
しかし、設計的には、「Over Drive MODE」と「Boost MODE」でインジケーターが点灯・消灯するのですが、外部のラッチスイッチになったときに、このインジケーターをどうしよう???というのが、悩みの種でした。リレーのラインに抵抗を入れて、電流を検出することを考えましたが、リレーには抵抗を入れることが出来ず、あれこれ考え、何とか、スイッチつきのジャックで行けそうです。(しかし、後に、この論理が反対だったため、反転回路を入れる羽目になりました・・・orz)
T様と何度かメールをやり取りして、デザインや、仕様を決定しました。
テンションを上げるためにも、早速ケースを発注し、塗装を行います。同時に最大の部品である電源トランスをオーダーしました。電源トランスは正確な寸法がわからず、到着してから、微妙な位置を変更します。
プライマーが乾燥したら、ブラックを吹きつけ、水とぎをします。これを5〜6回繰り返しました。
ちょうど、梅雨時期なので、塗装はなかなか思うように進みません。
同時進行で、塗装が乾くのを待つ間に基板を作成していきます。
通常のアンプと同様にベーク板に部品を実装してゆきます。パワー部がない分、それほど大掛かりな基板ではありません。
これは、リレー基板で、同時に作成している、マーシャル風味なオーバードライブスペシャルの基板と一緒に写っています。
程なくして、電源トランスが出来上がってきました。
上蓋の部品との干渉や、搭載方法など、結構悩みましたが、何とか、位置が決まりました。真空管はベーク板で実装するための台を作成しました。
上蓋側はこれからシルク印刷を行いますので、下側に来る部品のみを配線して行きます。
一番の見せ所になる部分のシルク印刷の版下を作成し、印刷用の固定治具を作成して、印刷します。
今回のスラントシャーシは全部で3箇所印刷しなくてはいけませんので、乾くのを待って、次の印刷を行ってゆきます。
難関のシルク印刷が終わったところで、部品穴の加工を行ってゆきます。
ようやく上蓋側が完成!
これで、上側の部品を実装できます。
そして、上側と下側にまたがる配線を行って、再確認をして、エイヤ!と電源を一気に入れてしまいました (/ω\)
すばやく、各部の電圧を測定してゆきますが、一応設計値通りですので、一安心!
さて、今回のプリアンプは、サイドウッドを取り付けますので、友人の銘木店に出かけて、サイドウッド用のハードウッドを仕入れてきました。
立派な材木がたくさんあります。とても一人で持ち上げることは出来ません。
OSMOカラーのクリアも入手しました。口に入れても毒ではない塗料で、よくオモチャなどの塗装に使われます。
早速、帰宅してから、製材し、所定の大きさに切り出しました。
う〜ん、いい感じ!
これに、OSMOカラーを塗りこんでいくと、更に艶が増し、木目が出てきて、いい感じになります。
電源が入ったので、音だしを行います。
なかなかいい感じでしたが、問題が発覚しました。
1.
Volume、Treble、Middle、Bassの効き方が全部逆・・・orz・・・
2.
クリーンチャンネルでも、VOLUMEを上げると、発振する・・・・・・・オーマイガー・・・ ┐(-。―;)┌
ボリュームの効きが逆なのは、根性入れてすぐに直しましたが、発振は、なかなか大変です。しかもクリーンでも。。。初めての現象です。
あちこちの波形を追いかけながら、対策を打っていきます。
でも、発振の波形は「鶏が先か、卵が先か・・・」の状態になってしまい、暑さも相まって、頭が変になりそうになりながら、ようやくバッチリ効く対策を見つけました。
再度音だしを行い、発振が見事なくなっているのを確認しました。ヨカッタ・・ヨカッタ。
最後にせっかくですから、録音を行い記念撮影を行いました。
タバコの箱と一緒に撮ってみましたが、これ位の大きさです。
これなら、持ち運びも苦になりません。
サンプル音源です。
1曲目:
72年製のES335です。MIXとフロントを使い分けました。
オーバードライブモードでクランチ程度の設定です。
ナンバードPAFのイナたい感じが出ていて、GOODだと思います。(演奏の下手さは除きます・・・・)
2曲目:
使用ギターはBAKERのROBBEN FORD MODEL(ハムバッカー)
裏拍のカッティングギターは、クリーンモード
リードギターはドライブモードで、そこそこ歪ませています。リア→MIX→フロントとピックアップは切り替えています。
クリーンも太いし、ドライブも太いまま芯が残っています。チョリーンという感じがよく出ていて、自分的にはほぼ100点満点!(これまた、演奏の下手さは除きます・・・・)
今回のプリアンプの依頼主様から、感想が届きましたので、ご紹介します。
AKG様
お世話になっております。
本日無事に受け取りました。
夜間でしたので長くは試すことは出来ませんでしたが、
まずこのルックスに惚れ惚れしてしまいました。
正直期待していた以上の出来栄えで大変満足しております。
音質については、
今まで自分が使用していた機材がいかに「エフェクト音」であったか痛感させられました。
つないだギターの音がそのまま大きくなって出てくる印象で、そこに非常に感度の良い歪みが乗ってきます。
ピッキングに対する反応が抜群で、しばらく弾きこまないと人前では披露出来そうにありません。
その分、うまく弦をヒット出来た時は素晴らしい音が出てきますね。
このプリアンプで練習を重ねれば、表現力をかなり養うことが出来そうです。
家でこのような状態ですので、スタジオでの大音量はさらに苦戦を強いられそうですが、
それもまた楽しみで仕方ありません。
本当に望んだ以上のものを製作して頂き、御礼申し上げます。
今回のプリアンプは、ルックスこそ、エフェクター的ですが、中身はまったくの真空管アンプなので、エフェクターとはヘッドルームの余裕がまったく違います。
組み合わせるパワーアンプとの相性もあると思いますが、この小型のプリアンプから、ダンブルサウンドが出たときは、私も喜びと驚きでいっぱいでした。
気に入っていただけると、本当に、製作者冥利に尽きます。
末永く、お付き合いください。
皆様のオーダーお待ちしております(m_ _m)