第90話 Marshall風味Over
Drive Special(Dumblelator内蔵)製作
その1(2010.08.24):製作開始
その2(2010.09.10):火入れ、産声
その3(2010.10.02):サンプル音源、キャビネット製作
その4(2010.10.29):フットスイッチ作成、完成(最終音源アップ)
K様から、ダンブル・オーバードライブスペシャルの作成依頼がありました。
今回はいつも作りなれている、6V6、6L6の仕様ではなく、KT66で、コンデンサ、抵抗をマーシャルが昔使用していた物(コンデンサはSOZOレプリカ)、
トランスも、Fender系の物ではなく、Marshall系の物を使用したい。エフェクトループがほしいので、Dumblelatorを内蔵したい・・・・と、かなり、マニアックな仕様です。
そもそも、Dumblelatorは私も作成したことが無く、まずは、自分のOverDriveSpecialにて、取り付けて、実験を行うことにします。
真空管の本数は電源容量、取り付けスペースから見て、1本で何とかしなければならず、これが悩みの種です。普通に考えると、どうしても移送が180度ずれてしまうので、気分的によくありません。
まずは、位相をずらさず、1本で、「信号をLine
Levelまで、減衰させる→MIXING回路を作る→信号をPreAmp出力のレベルまで増幅させる」を行わなくてはなりません。・・結構な難問でした(T▽T)
無い知恵を絞り何とか、回路の案が出来ましたので、自分のOverDriveSpecialに取り付けて、実験をしてみます。
まずは、配線です。一度配線してあるメインボードの下を配線通す必要があるので、いったん、配線を外します・・・orz
コントロールは「HPF」「SEND LEVEL」「RETURN LEVEL」「MIX」としました。暫定的ですが(おそらくそのままになると思いますが・・・)アルミのL字アングルにポッドを固定して、配線しました。
安いのですが、なかなか定評があるTCのM350をおとりよせしました。
配線すると、リアパネルは、結構かっこいいことになります。
ディレイとリバーブが同時使用できます。音だしをしてみると、これがかなり酔えます。
今まで、空間系はスピーカーの出音をマイクで拾って、ミキサーに入れ、ミキサーのBUSにLEXICONのリバーブを入れて、外部のモニタースピーカーからWET音だけを出すというやり方をしておりました。
この方法はLarry Carltonも用いている手法で、アンプの音の経路にまったく影響を与えないので、確かにすばらしいのですが、何せ、システムが膨大になりすぎ、持ち出しは不可能でしたが、今回のDumblelator内蔵により、持ち出しは可能になります。
しかも、真空管で回路を構成しましたので、クランチ、ドライブのかかりり具合など懸念したほど音質劣化は無いようです。
というわけで、エフェクトループの回路構成が決定しました。
ん?よくよく見てみると、このM350とオーバードライブスペシャルの大きさはほぼ同じことに気がつきました。
もしかして内蔵も可能かも???
こんな感じで、すっぽりと収まります(`・ω・´)
しかし、KT66を手持ちの6V6のOverDriveSpecialに刺してみると・・・う〜ん・・・
きちんと図面を描かなければ、意外と厳しいかも・・・
まずは、基板を製作します。
いつもは、オレンジドロップの朱色のイメージなのですが、今回はSOZOとDALEの金皮抵抗がメインですので、見た目がずいぶんと変わって見えます。
次はシャーシのGNDポイントの塗装を剥がします。また、結構色々と穴のサイズが合わない箇所がありますので、加工していきます。
ポッド類、スイッチ類も、事前に加工できるところは、加工してしまいます。
ここは、ちょっとこだわりです。
バイアス調整なのですが、今まで、ペア管を購入して、調整していましたが、やはりペア管といえどもかなりバイアスがずれています。一度、ずれすぎて、ハムが出るまでになっていた事があり、今回から、AB級のアンプは独立してバイアス調整が出来るように工夫します。
また、間違って動かないように、シャーシの奥に引っ込むように部品をレイアウトします。
シャーシに部品を取り付け、GND BAR等も取り付けます。
トランスは本来最初に取り付けて、電源のデバッグを行ってから、安心して火入れを行うべきなのでしょうが、最近腰がアレなんで・・・重い部品は、最後に取り付けることにしました(T▽T)
ヒーター配線と、ソケットを取り付け、基板取り付け用の穴をあけてゆきます。
基板を取り付けたところです。ここからは、じっくり配線を行ってゆきます。
アウトプットトランスの線がメインボードの下を通りますので、先に取り付けます。
ここで、今回のDumblelatorのコントロール部の作成をします。
OverDriveSpecialのリアパネルには、コントロール部が入らないので、別途設ける必要があります。
エフェクターの製作と同じ要領ですが、アルミのシャーシを塗装し、シルク印刷を施します。
裏側から見ると、この位置にコントロールボックスが付きます。
プリ管の奥なので、手に当たらないくらいの寸法ですが、当たってもそれほど熱くはありません。(汗)
(つづく)
ここからは、ただ、ひたすら配線を進めていきます。
後から写真でみると、面白いように進んでいるのですが、実際はなかなか根気がいる作業です。
電源周りの配線に近づいたので、電源トランスを装備して、配線を進めます。
緑色の線は、シールド線です。入力段や、オーバードライブ段などのハイインピーで、ゲインが高いところに使用しました。
一通り配線が終了したので、火入れ式を行いますが、通常は火入れ式の前に一度は+B電源、、ヒーターの確認くらいは行ってから、配線を進めるので、特に大きな間違いなどは無いはずですが、今回は重量を考えて、電源トランスを最後に取り付けたので、今回が全くの処女飛行になります。
こういうとき、先人の知恵で、私は電源電圧の100Vを落として実験を行います。これなら、ある程度配線が間違っていたとしても、部品を壊すような事故は無いと思われるからです。(でも、その前に十分配線のチャックは行いますよ|゚∀。)ゝ”)
まずは、実験用の真空管で、電源を入れて、バイアスを深めの値に調整してしまい、各部の電圧をチェックしていきます。
特に、異常はなさそうでした。 |゚∀。)ゝ“
異常なしを確認したので、真空管を発注し、取り付け、KT66用にバイアスをあわせます。
パワー管はGOLD LIONのKT66(依頼主様の指定)で、ちょーデカ。。。。プリ管は、色々織り交ぜてみました。
プリ管を説明しますと、
初段:MULLARD12AX7
これは、ダンブル・オーバードライブスペシャルの場合、オーバードライブでも、ブーストでも、全て、この初段の真空管を通る事になりますので、もっとも重要な管といえるでしょう。少し高価ですが、MULLARDを奢りました。
オーバードライブ段:SVETLANA12AX7
今回、マーシャル風味を目指しておりますので、ドライブ段にはマーシャル採用の、この管を採用します。
エフェクトループ段:JJ ECC83
あまり、理由は無いのですが(^^;)、特にここは音質的には重要なところではないので、まずまずの物が入っていれば良いかな・・・と
フェーズインバーター管:SOVTEC12AX7WB双極マッチド
ムラード型のフェーズインバーターの場合、定電流で引いた場合を除いて、それほど、上下の精度が出ていないと感じます。ですので、ACバランスをとるためにも、ここは双極マッチドを採用しました。
また、高めのGmを選びましたが、少し歪むのが早く感じます。
まずは、産声を録音してみましたが、KT-66(私は使ったのは今回が初めてでしたが・・)がとてつもなく低音を出します。
ですので、録音はBASSとMIDDLEをかなり絞って行いましたので、ダンブルサウンドからは少しイメージが外れてしまいました。
(興味のある方は、私のブログで音が聞けます)
その後、美味しい中域を残しつつ、邪魔な低域を極力削り取るために、定数をアレコレいじっていきます。
(つづく)
キャビネットの製作も進めてゆきます。
まずは、パイン材を寸法通りカットして、ダブテール加工を施します。
ボンドを付けて組み上げます。直角を確認し、一日乾燥させます。
その後、フロントの飾りの凹を治具を使って、加工します。
ここまで、終了したら、角Rを落としてゆきます。
削り作業が一段楽したので、全体的にスポンジングをして、トーレックスを貼る前にきれいにしておきます。
内部と、受木を黒く塗ってゆきます。
コーナー金具があたる部分を加工します。
トーレックスを貼って行きましょう。
底を貼ったら、全体的に貼ってゆきます。
なんか、リアルタイムではないので、淡々と解説してますが、いいでしょうか?
質問が無ければ、先へ進みます。(・ω・)ノ
シャーシ用の穴をあけるのですが、これは、ベニアにシャーシの穴位置をあらかじめ写しておいたものを治具とします。
シャーシをはめてみたところです。
バッチリです。|゚∀。)ゝ“
シャーシをはめてみたところで、桟の部分を作成します。
それが終了したら本当は、桟にトーレックスを巻くのですが、写真が無いみたいなので、リアパネルを作成し、トーレックスを貼ります。
今回は、TCのエフェクターM350を内蔵し、リアパネルから、手を入れることになりますので、パネルの開口部は大きく作成します。
リアパネルにトーレックスを貼っている最中です。このときは、トイレに行きたくなっても、一服したくなっても、手が離せません(`・ω・´)
キャビネットの中にM350を入れたところです。
やはりバッチリ、はまります。
リアパネルを取り付けたところです。
何とかコントロールは可能だと思います。
次は、フロントグリルを作成します。
はめてみたところです。
パイピングなしでも無骨でかっこいいと思いましたが、パイピングは欲しいとの依頼者様の意向で、パイピングを施します。
ハンドル、足を取り付けて、キャビネット完成です (`・ω・´)シャキーン
低域の改善も進めていました。
サンプル音源はこんな感じです。
続いて、ハードウッド製のフットスイッチを製作します。
ダンブルはハードウッドのフットスイッチが非常にお洒落な感じがします。
ブビンガを所定の厚みに削ります。これは、自動カンナという機械が重宝するのですが、非常におが屑を吐き出します。
また、ザグリ用の治具を製作し、ルーターで、ザグリ加工をします。
フットスイッチの傾斜にあわせて、マイターソーを傾斜させてカットします。
意外と、細かい作業が続きます。
切り出し終わった部品です。
これをクランプを駆使して組み上げて行きます。
ボンドが乾いたらスポンジを使用して綺麗にクリーニングします。
さて、内部の回路を作成して、部品とともに組み込みます。
裏蓋を作って組み合わせ、フットスイッチが完成しました。
音質の改善も行い、最終的には、こんな音です。
粘り気バッチリなチェロのようなサウンド!自信作です。
依頼者様から感想が届きましたので、紹介いたします。
まずポイントはその音質ですね。これは他のアンプではなかなか得られない独特のトーンです。
無理に例えるならクリーンはプレキシマーシャル系のミッドハイに重心がある感じや、フェンダー系のフィルター感がありつつもトレブリーな感じではなく、パンチのあるダークなミッドロー中心のサウンドです。
ブライトスイッチなどのおかげで、太くてもハカランダ指板のようなエッジ感も残せて安心(笑
これ普通はあまり抜けにくい音質なんですが良く前に出て、この音質で抜けてくるのは最近では限定で出た、ジミやクラプトン仕様JTM45/100リイシューぐらいしか聞いたこと無いかも。
ところがオーバードライブですとオールドマーシャル系のエッジが出て上の倍音が盛大に乗ってくるタイプではなく、オレンジのシングルチャンネルのアンプのようなみっちりしたドライブトーンで、濃厚なバイオリントーンが魅力です。
ゲインを低めに設定すると、クリーンに上下の倍音が乗って太くなり、サスティーンが伸びるだけで歪みを感じさせません。
これ良くバランスの取れたギターのクランチみたいな感触で、ミッドはさほど歪まず前に出て、ゴリゴリのローエンドとか邪魔な帯域が歪んで引っ込む感じです。。。よくわからない説明ですね f^_^;)
それにしてもダンブル系のアンプって本当に使ってみないとわからないですね。
噂やイメージ、予想よりはるかに個性的なアンプで早くもプレイスタイルに影響が。
楽器や機材にインスピレーションを受けてフレーズが湧くなんてホント幸せです。
ピッキングの位置やアングル、フィンガリングによる粘りなど良くトーンや音量に反映され、辛いけど楽しいと言いますか、久々に楽器と格闘するような、ギターを弾くのに夢中になる毎日を送っております。
音質の好みやバンドで必要なトーンと言う視点から見れば、まだ多少煮詰めなければならない部分もありますが、ギターをプレイするのが好きな人には一度は必ず試してもらいたいと思えるアンプです。
ワイドレンジで音楽的と言うかギター的なトーンて実はほとんど無いですよね?低音の処理が難しいんでしょか?。。。
とにかく今回の仕様は大満足です!
もっと腕が上がったらゲインを下げて、カールトンのようなパキパキなトーンにチャレンジします
ここまでの苦労が報われるご感想ありがとうございます。
私も、今回はKT66やSOZOなど、初めての事が多かったので、、自分でもかなり勉強になりました。
皆様のオーダーをお待ちしております。 m(_ _)m