富士山の幕岩溶岩 2017年5月23日 調査、作成中

1. はじめに
 ふわふわした軟らかい富士黒土層は、広々とした大野原に分布し、サッカー場、スポーツ広場、ゴルフ場、陸上自衛隊の演習場として使われている。この富士黒土層と下位の三島溶岩の接触部を示す露頭は、なかなか見ることができない。 町田 洋 (1996年3月)によると、「富士黒土層は富士山南東麓の幕岩におけるように、薄い多数の火山灰やスコリア層から構成されることがわかる。」とある。富士黒土層を挾んで、上位、下位の溶岩ともに観察できるのではと期待して調査を始めた。

2.幕岩までの自然観察
 富士山スカイラインと須山口下山歩道の交差点から、野鳥や溶岩を観察しながらゆっくりと幕岩へ向う。(9時50分)
 交差点と須山御胎内の中間付近の露頭から、溶岩@を採取した。
30分程で須山口御胎内に着く、溶岩Aを採取した。
 須山口御胎内の溶岩はアザミ塚の噴火による溶岩と思われる。この溶岩流のなかには、途中崩れているが、長さ数十mの溶岩トンネルがある。溶岩トンネルの形状が人体の胎内に似ているので「御胎内」と名付けられた。洞穴内の御胎内祠には木花咲那姫の石像が安置され、安産の神として信仰されていたそうである。(「御胎内」は御殿場市印野の清宏園にもある。)
 富士山麓のクマザサ(熊笹)は一斉に全部枯れた。数年前、富士山麓の3合目付近へ野鳥観察に行ったときのことを思い出す。繁茂するクマザサのなかのコマドリは、数m先にいるのに鳴き声のみで姿を見せない。写真撮影ができず残念な思いをした。コマドリの写真撮影は時間をかけ、苦労したが、未だ成功していない。 その頃、珍しいクマザサの花を見て、枯れるのではと思ったのを覚えている。現在、幕岩付近はクマザサの枯れた黒い細い竹の残骸がいっぱいである。コマドリはクマザサが枯れて困っているに違いない。そのうちクマザサの芽が出て、地下茎が伸び、再びクマザサが繁茂するだろう。笹は40〜60年に1度一斉に花を咲かせて枯れると言われている。
幕岩へは11時30分頃着いた。

 
図1.国土地理院 2万5千分の1 印野
@、A、B、Cはサンプル採集地点
 
富士山麓のクマザサは一斉に枯れた。
 
枯れたクマザサ
 
図2.須山口下山歩道@と御胎内祠Aの溶岩
並べて比較すると違いがよく分かる。
右@の玄武岩は気孔が多く、黒っぽい、斑晶が少ない。斜長石、輝石の微晶が
ある。
左Aの輝石玄武岩は須山御胎内の溶岩、白い2〜3mmの斜長石を含む。
Aは新しい溶岩でアザミ塚の噴火で流出した溶岩と思われる。
 
図3.幕岩 
写真のブルーラインを境にして谷の左岸の幕岩溶岩Vと中央の幕岩溶岩Tが
分布する。
上流の一段上に中央の幕岩溶岩Tが時間的間隔を置いて流れ、
2段になっている。
 
図4.幕岩の右岸の溶岩は未調査である。
 
図5.中央の幕岩溶岩T サンプルB 輝石玄武岩
 
図6.左岸の幕岩溶岩V サンプルC 非結晶質玄武岩
 
図7.幕岩溶岩TBと幕岩溶岩VC
B中央の幕岩溶岩T
は輝石玄武岩、黒っぽい、気孔がある、
斜長石(大きさ2〜5mm)、輝石などを含む。
C左岸の幕岩溶岩Vは非結晶質玄武岩、斜長石や輝石の0.5mm以下の
微晶を含む。

BとCの見かけは大分違うが、同じマグマ溜まりからの流出でも、固結するまでの
時間差によっても差ができる。Bの鉱物はCより時間をかけて結晶したに
違いない。BはCより黒っぽく見えるが気孔があるためで成分には余り差がないと
思われる。

3. おわりに
 このフィールドには多種の溶岩露頭があり、溶岩の観察ができる。また、黒曜石など宝永噴火のテフラも採集できる。幕岩溶岩と幕岩溶岩に挟まれたスコリア、軽石、腐植質火山灰土などの観察は、不十分であった。調査に興味が持てたので、時間をかけた再調査を考えている。

下の幕岩溶岩分類の図表は、町田(1964)、宮地(1988)の資料を参考にして作成した。鍵層は、町田(1964)が作成した幕岩の柱状図から選択したものである。(再調査により、変更がある。)

 幕岩溶岩の分類と鍵層・時代など
 ・ 宝永テフラ(HO) 
  幕岩溶岩1 (MKL-T) 幕岩の中央B、厚さ2.5m
  幕岩溶岩U (MKL-U) 幕岩の右岸、厚さ2m
 ・ 幕岩溶岩V (MKL-V) 幕岩の左岸C、厚さ3m
 ・ 湯舟第2スコリア (YU-2)約2200年前
 ・ 砂沢(ずなさわ)スコリア (ZU) 2600年〜2800年前、厚さ6.8m。
   砂沢(ずなさわ)はZU分布の中心地(印野の溶岩隧道の西)の名。
  幕岩溶岩W (MKL-W)
 ・ 鬼界アカホヤ火山灰 (K-Ah) 約7000年前
  ( 三島溶岩 )          約1万年前


(ご意見、訂正した方がよい点など、ご指摘下さい。 aihara@mxz.mesh.ne.jp )


 幕岩へは前から行きたいと思っていたが、体力が衰え、諦めていた。井上さん、片山さんのサポートで実現でき、喜んでいる。二人に深く感謝したい。( 2017年5月31日 )