海溝型地震の連動と津波地震  中学生・高校生のみなさんへ 

 「東日本大震災から考える、東海地震への備え」  古村 孝志 東京大学地震研究所教授 (2011年10月15日)の講演を聞いて、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)はどんな地震だったのか、また初めて聞く「津波地震」について、中学生・高校生のみなさんへ伝えたいと思います。

1.プレートテクトニクス
 地球は厚さ約70Kmの幾つかのプレート(岩石の板)でおおわれています。
海のプレートと陸のプレートが接するところでは、海のプレートが陸のプレートより重いので、
海のプレートは陸のプレートを引きずり込みながら、陸のプレートの下へもぐり込んでいきます。
引きずられる陸のプレートにひずみが溜まり、限界に達すると逆断層による破壊がおこり、地震が発生します。(海溝型地震)
また、もぐり込みにともなって、マグマができ火山活動も起こります。
いろいろな地学現象を説明しようとする、このような考えをプレートテクトニクスといいます。

 
日本周辺のプレート
海のプレート→太平洋プレート、フィリピン海プレート
陸のプレート→北アメリカプレート、ユーラシアプレート 

2.海溝型地震
 これまで東北地方の太平洋プレートが沈み込む日本海溝には、A 三陸はるか沖(M7.1〜8.0)、B 宮城県沖(M7.5〜8.0)、C 福島県沖(M7.4くらい)、D 茨城県沖(M6.7〜7.2)などにM8以下の地震がバラバラに単独で発生してきました。
しかし、今度の東北地方太平洋沖地震ではこれらの4つの地域(下図A,B,C,D)の地震が同時に発生してしまいました。連動したと表現します。南海トラフでは連動して、海溝型の大地震がよく起こります。
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は連動したので、地震を起こした断層面も広く、震源域は幅200Km長さ500Kmにもなり、想定したM 7.5がM 9になりました。地震のエネルギーは想定の180倍になってしまいました。

 
過去の地震を調べると1896年明治三陸地震、1677年延宝房総沖地震など津波地震がありました。
B宮城県沖の東方には津波地震の空白域があって、今回動いたようです。
     東北地方太平洋沖地震=A,B,C,Dの連動+津波地震

3.津波地震 
 普通の海溝型地震は深さ10Km〜40Kmのやや深いところの陸のプレートが急激にずれ動いて、溜まったエネルギーを解消することで発生します。
 今回の地震では、海溝の浅いプレート境界付近で数分かけてゆっくりとズレ動く津波地震が発生しました。
津波地震はゆっくり動くので、地震動は弱いのですが、浅い部分の変動のため、大きな海底地殻変動が生じ、大津波が発生しました。
釜石沖に設置された、東京大学や東北大学の海底ケーブル津波計の記録(下図左)を調べると、普通の海溝型地震によって発生した津波と津波地震によって発生した津波が2段階になっていることが分かります。下図左右を照らし合わせてご覧ください。
地震の直後から、普通の海溝型地震により、ゆるやかに2mまで海面が盛り上がり(下図右のF1による上昇)、次に津波地震により、5mまで海面が急上昇(F2による上昇)したことが分かります。

 
海底ケーブル津波計の記録
 
F1が普通の海溝型地震を起こす断層(深さ10Km〜40Km)、ズレ動き量は10m〜24m。
F2が津波地震を起こす断層(深さが浅い10Km以内)、ズレ動き量は42m〜57m。
57mも動いたとは驚きですね!
(私は陸側の海溝斜面に堆積した付加体が崩れたのだと思ったのですが?)

4.南海トラフで起きる4連動地震の可能性
 過去の南海トラフの地震を見直すと、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)と同じような大連動が起きた証拠があることが分りました。
証拠1、1707年の宝永地震は東海、東南海、南海地震の3つが連動し、M 8.4〜8.7の巨大地震でした。
証拠2、1605年の慶長地震はM 8.0程度の津波地震であったようです。
巨大津波の痕跡1、高知県土佐市の蟹ガ池、徳島県の田井ノ浜の池では、高知大学の調査で、2000年前のものと見られる、厚さ50cmの巨大津波による津波堆積物が発見されています。
巨大津波の痕跡2、大分県佐伯市の龍神池では、1300年前の巨大津波による厚い津波堆積物が発見されています。

駿河湾から南西の方向へ発生する東海地震、東南海地震、南海地震が同時に連動し(宝永地震のような)、これに津波地震(慶長地震のような)が連動して、大連動が起きると東北地方太平洋沖地震と同じような巨大津波が発生する可能性があります。

 
南海トラフの4連動巨大地震=東海・東南海・南海の3連動地震+津波地震