6.石川先生の声とその内容 

 ここに石川先生の声を録音したテープがあります。これは元はアルミで作られたレコードからコピーしたものです。古いためか、すごい雑音(ざつおん)が入っていますが、なんとか聞きとれます。かんだかい元気な、お声です。記録してみましょう。
 「私は石川倉次です。こうしてみなさんに声を聞いていただくことは、まことにうれしくぞんじます。私が盲唖(もうあ)教育にじゅう事して、こんにちの幸せを得ているのは、まったく小西先生のおひきたてによることで、日々ありがたく思っております。明治20年の末に先生からルイ・ブライユの点字をわが国の「かな」に当てる工夫をすすめられたが、私の考えではブ氏(し)の点字は6点で、そのへん化は63となるが同じ形のものをのぞくと、わずかに44となる。これに48の「かな」を当てることは無理(むり)だと思いました。ところが明治22年の末に、同りょうの遠山邦太郎(とおやまくにたろう)君がブ氏の点字の位置を少うしかえて、かなを当てられたが、同じ形のものや数符(すうふ)まで用いてもヤ行(ぎょう)の「ゐ」と「ゑ」がぬけていました。私はブ氏の列点法(れってんほう)をかえるならば大いにかえて、さいぜんの工夫(くふう)をすべきだと日夜、心血をしぼりました。その結果、ヤ行は母音(ぼいん)の「あ」「う」「お」を下にさげて、それに1点を加えて「や」「ゆ」「よ」と、ワ行は母音の「あ」「い」「え」「お」を下にさげたものを「わ」「ゐ」「ゑ」「を」に当て数符(すうふ)はブ氏のとまったく同じにしました。それで私は日本の盲人(もうじん)の心に目をあたえるという考えで、ブ氏の6点を「め」にしました。このほかに、ブ氏の点字ほとんどそのままのものへ「かな」を当てた伊藤文吉(いとうぶんきち)、室井孫四郎(むろいまごしろう)両生の案がありました。そこで明治23年の9月27日に点字選定会を開いたのを初めとして、同年11月1日(いちじつ)の第4回目の会でとうとう私の案に決定されました。もとより私ひとりの力でできたのではないが、多年腐心(ふしん)の結果がわが国の盲人方(もうじんがた)に光をあたええたのは、喜びかぎりないことで、この点字が今後わが国いく百万の盲人(もうじん)のあかりとなって、目あき以上の功せきをわが文化の上にたてられる人が出てこられることを、心からいのってやみません。」  
ここをクリックすると声が出ます。パソコンに保存(ほぞん)すれば、いつでも普通のパソコンで聞けます。ダウンロードには10分くらいかかります。
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