第10回 盲ろう者と点字

 今回、直接、点訳とは関係ありませんが、 視覚と聴覚に障害がある場合の援助の1つの方法を紹介します。
 盲ろうと言っても先天的に両方の障害がある場合は少なく、単一障害から 病気または老化のために重複障害になる場合が多いのです。私の元上司にあたる 全盲の方は最近風邪をひいたら、その後ずっと聴力が衰えたままになってしまったと 言っておられました。
 このように初め視覚に障害があり、あとで聴覚に障害が出た場合は リアルタイムの通信手段として点字が使えます。指に点字をうっていく指点字 とかブリスターというタイプライターがその例です。また私は以前、パソコンで 通信のソフトを作り、キーボードより点字を入力し、ピンディスプレイという 点字が浮き出てくるディスプレイにより会話を伝えたこともあります。
 今回はブリスターという機器を紹介しましょう。普通点字タイプには点字が 凹面で出るものと凸面で出るものと2種類あり、ブリスターは後者です。 普通、タイプは点字紙に打つので凸面式でもリアルタイムに読むのは 難しいのですが、ブリスタ-はテープに出るので読み手が通訳の左手にいれば 大体講演の内容もリアルタイムに読めます。「大体」と言ったのは、打った瞬間の 文字はタイプの中にあるので、次の語が打たれて順送りされなければ 読めませんから、多少のズレは出る訳です。
 ブリスタ-は大変優れた機器ですが、外国製の盲人タイプに見られるような 外国人の大きな手に合わせた点字が出るので、慣れないとやや読みにくい ということはあります。また普通には盲学校でも使われないので、 特別なルートで購入または貸与を受ける必要があります。
 点字の読みに習熟した人と、タイプ打ちに熟達した人の組み合わせですと、 講演すべてをそのまま伝えることも出来ます。ただし通訳者が要約してくれた方が 良いという読み手もいます。点訳に進まなくても、点字を盲ろう者の 通訳に役立てることが出来るということを学んで下さい。    

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