阻害事由や動機づけ不在の事例
○未だ追加中です。
○阻害事由や動機づけ不在を見つけるための頭の体操に使用していただければ幸いです。
○弁護士や弁理士の方等が参考にされることは歓迎ですが、研究や発表等の際の引用資料とする場合には、
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 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号  特許第5698726号 (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  本発明のトング1は、凹み9に形成された長い孔13に切込み15,19が設けられる。これにより、おでん等の食品23を把持して、串21を刺したり外したりするのに適する。
 発明の要約  【課題】食品を把持して、串を刺したり外したりするのに適したトングを提供する。【解決手段】2つのアーム3の先端に形成される把持部7が有する凹み9の中央に、長い孔13が形成される。この孔13の前方部と把持部7の前縁部17とを連通して、切り込み15が形成される。孔13の後方部には、第2切り込み19が形成される。この構造により、両把持部の両凹みで、食品を挟んで把持し、孔13を通して串21を刺し、または、串21を抜いて外すことができる。孔13は前後方向に長い孔13なので、左右方向の一致、不一致を確認しやすい。また、串21を抜くときに、串21との摩擦で、食品は、凹み9の中を前方へ移動する。この移動に追従して串21は、孔13から切込み15へ移動できるので、無理なく、串21を抜ける。同様に、串21を刺すときに、串21は、孔13から第2切込みへ移動できるので、無理なく、串21を刺せる。
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例のトングも、凹み(9相当)と孔62,64を有する。
副引例のトングも、切り込み(15相当)を有する。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。
 主引例 (引用文献1)
 

副引例 (引用文献2)
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁   引用文献1のトングの目的は、食品などを把持して煮汁などの液体から分離することであり、孔62または64は、熱い液体をこれらの孔を通すためのものであり、実際に引用文献1の図面では多数が形成されていて、孔が小さいことは明白です。さらに、小さな食品も扱えるようにするには、孔は小さくすべきことは明らかです。しかし、仮に、孔の小ささを維持しながら、串が通る大きさへ孔をぎりぎり大きくしたと仮定しますと、次のように、阻害理由が存在します。
 すなわち、そのような孔は、孔に通した串とその孔の間の隙間の大きさに限界があり、孔の大きさに余裕がありません。そして、初めの孔(参考図1の上側の孔62または64)に串を通すと、直ちに、串は食品にも刺さりますが、この食品は、トングによって保持されていますから、動きませんので、串が刺さる方向は直ちに決定されます。そのまま、その方向へ刺すしかありません。やがて串の先が、反対側の孔(参考図1の下側の孔62または64)に近づき、この反対側の孔への狙いが外れていたことがわかっても、串は食品に拘束されていますので、狙いを変えることは無理(参考図1)です。
 反対側の孔も、孔の大きさに余裕がありませんので、ほとんどの場合、狙いは外れます。よって、2つの把持部で把持した食品に、これら2つの把持部の孔を通して、串を容易に貫通させることは無理で、阻害理由になります。

  他方、引用文献1の孔62または64を、あえて大きくすると、その大きくなった孔から食品が漏れることになりますので、引用文献1のトングの目的が達せられないことになり、阻害理由が存在します。
意見書の参考図1 (主引例の図を加工した図)
 


 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号  特許第5079149号(旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  スプリンクラーヘッドの間隔が、満たされているか否かを簡易に知る簡易距離表示装置。
スプリンクラーヘッドのうち、一方21に、伸縮式の支持棒3を伸長し先端を位置させ、水準器10を用い、支持棒3を垂直状態にする。そして、レーザー照射手段5のレーザー光により所定角度θで上向き斜めに天井9を照射し、照射光を、他方のスプリンクラーヘッドへ近づける。
 発明の要約
 【課題】効率的に安全に天井における距離、例えば法律で規定されたスプリンクラーヘッドの間隔が、満たされているか否かを簡易に知る簡易距離表示装置を提供する。【解決手段】作業員7は、例えば天井9の2つのスプリンクラーヘッド39のうち、一方に、伸縮式の支持棒3を伸長し先端を位置させ、水平面内で互いに直交する位置に2つ配置された水準器11を用い、支持棒3を垂直状態にする。そして、支持棒3に設けられたレーザー照射手段5のレーザー光により所定角度θで上向き斜めに天井9を照射する。レーザー照射手段5と天井9との垂直距離L1は一定であり、所定角度θとによって、支持棒3の先端位置21から照射位置までの所定水平距離L2は、決まる。照射位置を、他方のスプリンクラーヘッド39へ近づければ、規定された間隔よりも、実際の間隔は短いか長いかが、簡易に示される。さらに、角度調整手段によって照射の角度を調整することで、所定水平距離L2を任意に調整することができるので、スプリンクラーの性能によって異なる距離に対応できる。
 拒絶理由における進歩性の否定
主引例も、レーザー光により上向き斜めに天井を照射し、天井面上の距離を知る。
副引例も、伸縮式の支持棒3を伸長し先端を天井に位置させ、光によって、設置物の位置を確認する
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁   引用文献2においては、レーザー機器は、天井パネルを正確な上下方向距離で設けるために、水平方向にレーザービームを発射するものですから、天井パネルとほぼ同じ、高い位置にレーザー機器を設けることは必須の要素です。
  そのため、引用文献1のレーザー照射手段を、引用文献2のレーザー機器の代わりにして、引用文献2の伸縮ポールに設けようとすると、やはり、高い位置に設けられることとなり、そうすると、水平方向の距離を求めるための三角形(本願発明の図1参照)が形成できず、そもそも本願発明が成立しません。よって、いわゆる阻害事由が存在します。
  また、本願発明は、巻尺などで距離を実測しなくても、距離を表示できることが要点です。ところが、引用文献2においては、床Fからレーザー機器までの高さであるy1+y2を求めるには、「スケール等で実測する(【0039】3行目)」ことや「スケールで計」る(【0040】3行目)ことが必要であり、結局は実測することを前提としています。よって、実測をしないですむという本願発明の要点が成立することを阻害してしまいます。
 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)


 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号  特許第4945005号 (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  二重になったバルーン1,3の間に遺灰をサンドイッチ状に収める。空中散骨を確実にする。
 発明の要約  【課題】空中散骨が失敗し落下してしまう可能性が少ない散骨用バルーン及び散骨方法を提供する。

【解決手段】第1バルーン1に遺灰7を入れ、この第1バルーン1の中に第2バルーン3を位置させ、この第2バルーン3に注入ガス5を注入することで第1、第2バルーン1,3を重ねた状態でともに膨らませ、膨らませた第1、第2バルーン1,3の口9を閉じ、高々度において破裂させ、よって、空中で散骨する。このとき、外側の第1バルーン1だけが破裂し内側の第2バルーン3が破裂しない場合には、遺灰7は直ちに空中散骨される。逆に、高々度において、外側の第1バルーン1が破裂しないで内側の第2バルーン3だけが破裂した場合には、遺灰7は外側の第1バルーン1の中に残り、この第1バルーン1の浮力により落下しない。この第1バルーン1はさらに高度を上げ、やがて破裂し、無事、空中散骨がなされる。

 拒絶理由における進歩性の否定
  主引例も、バルーンが二重になっている。
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁   引用文献1内側のバルーンが「浮遊」することによる「セレモニー効果」(引用文献1【0009】ご参照)を、その発明の効果にうたっています。そして、仮に、引用文献1において、内側のバルーンに注入するガスを増やして、本願発明のような完全なサンドイッチ状態とすると、この「浮遊」を達成することはできません。このため引用文献1はその装置機能を失ってしまいます。よって、いわゆる阻害要因が存在することとなるので、本願発明の進歩性を否定できません。
 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)
引用なし
[本来は複数の引例により進歩性の否定が提示されるべき]

 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号   特許第5008165号 (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  装置本体3を背部に位置させ前腕7に固定した筋力トレーニングの装置。
 発明の要約  【課題】胸部筋のトレーニングに効果があり、手で把持する必要がないことから、トレーニングをしている最中でも他の作業を行うことができるトレーニング用具を提供する。【解決手段】本体3は、人5が両手を左右に拡げた状態で一方の前腕7から他方の前腕7までの長さに概略相当する長さを有し、直線的で、人5の力で弓状に屈曲でき、復元可能な弾性を有し、帯状である。装着は、この本体3の両端部に設けられて、本体3を人5の背部21に位置させた状態を維持して、人5の前腕7に固定される固定部17によって、おこなう。
 拒絶理由における進歩性の否定
主引例も、器具の本体を人の背部に位置させた状態を維持して、人の前腕に固定される。
副引例も、本発明の本体(3)に相当する器具を使用する。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁   参考図のように、引用文献1及び引用文献2の内容を組み合わせるため、引用文献2の用具の両端が、引用文献1のようにシャツの袖に取付けられた状態では、用具を使用しようとしても、シャツの袖が捻れたり、用具の中央部分が、人の背部で下方へ落っこちたりして、うまく用具を曲げることができず、本来的に、用具をトレーニングに使用できません。よって、いわゆる阻害要因が存在することとなるので、本願発明の進歩性を否定できません。
 主引例 (引用文献1)
 副引例(引用文献2)


 意見書の参考図


 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号  特許第5268181号  (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明

 発明のポイント  パッド3の後端に形成される押圧凸部9が枕13に接して、下顎骨5を顔前方へ押圧し、睡眠時無呼吸症候群(いびき)を改善する。
 発明の要約  【課題】大きな治療効果を期待でき、無意識に外すことの少ない睡眠時無呼吸症候群対策装具などを提供する。

【解決手段】下顎骨5の左右後縁7に接するパッド3をテープ15で皮膚に貼付ける。パッド3の後端に形成される押圧凸部9が枕13に接して、下顎骨5に顔前方への押圧する。睡眠時無呼吸症候群の原因となる舌根部や軟口蓋が気道内へのたれ下がりは、仰向けに寝た状態で、顔前から顔後へ生じる。よって、たれ下がりを防止する押圧方向にずれがない。従って、より大きな治療効果を期待できる。また、顔前より装着せず、顔後から装着でき、患者は寝ている間に無意識に装具などを外してしまうことが少ない。

 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の枕に一体形成されたjaw thrust supports(20,22、34、36)は、本発明のパッド3に相当する。
副引例の係止材4は、下顎の皮膚に取り付ける本発明のパッド3に相当する。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁

 引用文献1において、下顎骨の左右後縁に接する「jaw thrust supports(20,22、34、36)」は、いわゆる枕に一体的に形成されるものでありますが、この枕は、一般的にも、頭や首の後で使用するものです。引用文献1のFIG5でも、そのように描かれます。
 そして、引用文献2において、下顎への力は、下顎当接具3へ係止する係止材4によって加えられますが、この係止材4は顔の前に設けられます(引用文献2の図1,図9などご参照)。
 よって、頭や首の後で使用する枕(引用文献1)を、顔の前に設けられる係止材4(引用文献2)に係止させることで、力を加えても、枕は、頭や首に邪魔されて、全く、顔の前へは移動できません。このため、「あごを押し上げ」たり、下顎へ力を加えたりすることは、全く不可能です。
  よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できません。

 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)


 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号  特許第5729739号  (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  レーザー加工時の煙や粉塵を除去するため、集塵ダクト19の形状を、レーザー出射ヘッド3から加工対象9に向かって下向きに拡がる回転対象形状とする。この集塵ダクト19の下縁と加工対象9との間に設けられた間隙から、周囲の空気を供給する。集塵ダクト19に対して、水平断面において接線方向へ、排気パイプ接続し、負圧により排気をおこない、旋回流を生じさせ排気する。
 発明の要約  【課題】レーザー加工をおこなう際に加工対象から発生する煙や粉塵を集め、十分な集塵をおこなうレーザー加工集塵装置を提供する。特に、ガルバノスキャナーを使用して加工を行なった場合、加工速度が早いため発生する煙や粉塵も高速に舞い上がり、かつ、高速移動する。また、スキャナーの走査方向により様々な方向に舞い上がる。このため十分に煙や粉塵を除去することはできない。
【解決手段】レーザー出射ヘッド3から加工対象9に向かって下向きに出射されるレーザー光の回りを取り囲む集塵ダクト19を、回転対称の形状とする。この集塵ダクト19の下縁29と加工対象9との間に設けられた間隙から、周囲の空気を集塵ダクト19内へ供給する。あるいは集塵ダクト19の下端に接続された圧縮空気供給口33から、圧縮空気を集塵ダクト19内へ供給する。集塵ダクト19に対して、水平断面において接線方向へ、排気パイプ接続し、負圧により排気をおこなう。これにより、集塵ダクト19内に旋回流を生じさせ、旋回流のまま排気する。
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例には、ダクトが回転対象形状であり、ダクトの下縁の間隙から空気が供給され、内部に旋回流を発生させ、排気する技術が開示される。

副引例には、ガルバノスキャナーを使用してレーザー加工する技術が開示される。


これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 主引例 (引用文献1)
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁

引用文献1では、集塵ダクトの形状は、下に狭くなった逆円錐台状を有します(参考図2)が、これは、「供給された空気が、・・・環状隙間39により絞られて噴出することとなり、噴出する空気のエアブローとしての流速を増加することができ、高速で飛散する粉塵の集塵が可能となる(引用文献1【0081】)」ようにし、この増加した空気の流速を減速しないためのものです。

すなわち、仮に、引用文献1で、集塵ダクトの形状を本願発明のように、下に拡がった円錐台状にすると、集塵ダクトの下端とレーザノズル26Aとの隙間S(参考図2)が大きくなってしまい、空気の流速を減速してしまい、高速で飛散する粉塵の集塵が難しくなります。

参考図2:
引用文献1の図16に、円錐状の空間23描きこむことで、一部加工したもの)

よって、引用文献1で、集塵ダクトの下に狭くなった逆円錐台状は、技術的に目的のある、必須の形状です。

このような下に狭くなった逆円錐台状の集塵ダクトを有する状引用文献1に、本願発明の円錐状の空間23を描きこむと、参考図2に示しますように、狭くなった集塵ダクトの下端に、空間23が遮られてしまい、レーザー光が角度を変えて放射状に射出されるのに必要な円錐状の空間23(本願明細書【0019】)を、確保できません。

このため、引用文献1へ、引用文献2のガリバノスキャナーを備えたレーザー加工装置の内容を組み合わせるには、必要な円錐状の空間23の確保ができなくなり、いわゆる阻害事由が存在します。


 よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できません。

 副引例(引用文献2:一般的なガリバノスキャナーを備えたレーザー加工装置

 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号 特許第4947748号   (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  ベルト5をビンの蓋部の周囲に巻き回し、グリップ3を回動させてビンの蓋を開ける蓋開け具。グリップ3の略L字状11と、ベルト5の取り付け状態に、特徴があり、蓋開け作業を容易にできる。
 発明の要約  【課題】グリップ3に弧状に設けられたベルト5をビンの蓋部の周囲に巻き回し、グリップを回動させてビンの蓋を開ける蓋開け具において、ベルトが描く弧が円に近くなり易くて作業が容易であり、ベルトの弛みを除く作業があまり必要ではない蓋開け具を提供する。

【解決手段】グリップ3の上部に略L字状の上面部11が形成される。この略L字状の縦辺の先端である上段面部13と、略L字状の横辺である下段面部15と、略L字状の縦辺に貫通する横孔として形成され下段面部15に隣接する空間部17と、が形成される。そして、ベルト5は、空間部17の内部上面に一端19が固定され、略L字状の横辺が向かう方向へ設けられ、上面部11の上空を回って弧21を描き、空間部17に入り、一端19の下を二重状態になって通り、再び略L字状の横辺が向かう方向へ他端が延設される。

 

 拒絶理由における進歩性の否定 主引例のグリップにも、略L字状の部分がある。
副引例のベルトも、本発明と同様の取り付け状態にある。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
参考図
主引例(引用文献1)       副引例(引用文献2)
 
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁

一見すると、本願発明の構成要件のうち、引用文献1に不足する部分を引用文献2が補うように見えます。しかし、そのように見るには、引用文献2のベルトの方向とグリップの回動方向は本願発明からすると逆になっており、このため、引用文献1へ引用文献2を適用するには、阻害事由の存在が認められます。
参考図において説明します。

 仮に、引用文献1へ引用文献2をあえて適用しようとすると、引用文献2のベルトは、参考図のような姿勢にするしかなく、誤った使用が前提になります。

 そのような誤った使用において、参考図の図中右方向へグリップをあえて回動すると、ベルトは緩んでしまい、引用文献2第1図の状態になってしまうので、蓋を開けることはできません。すなわち、引用文献2は、装置として機能しません

よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できません。

 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号 特許第4886919号  (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明


参考図1(本願発明の図1(A)に点線で描く手を加えて加工したもの)

 発明のポイント  歯科治療の充填剤を無駄なく充填できるよに、ピンセット状の本体の両端に、ピストン6、シリンダ9を設ける。
 発明の要約  

【課題】歯科治療で貴重な充填剤を無駄にすることがなく、充填をスムーズに行なうためにそれほど粘度を小さくする必要がなく、洗浄も面倒でない歯科充填器具を提供する。

【解決手段】ピンセット状の一方の先端5に設けられたピストン6が、ピンセット状の両端が閉じるときに、他方の先端7にシリンダ9に設けられたシリンダ9に、挿通され、シリンダ9内部の充填剤13が、シリンダ9から充填される。従来のように、長いノズルやチューブを必要とせず、長いノズルやチューブを貴重な充填剤13で満たして無駄にすることがない。また、それほど充填剤13の粘度を小さくする必要がない。更に、洗浄は面倒でない。

 拒絶理由における進歩性の否定 主引例は、本発明のピンセット(V字状の本体と認定される)に相当する部分124,125を有する。
副引例は、V字状の本体(25,27)の両端にピストン11とシリンダ10を有する。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
参考図2(引用文献1の図に点線で描く手を加えて加工したもの)


参考図3(引用文献2の図に点線で描く手を加えて加工したもの)


参考図4(引用文献2の図に点線で描く手を加えて加工したもの)

 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁    

本願発明は、参考図1に示すように、ピンセット状の先端に設けたピストン6とシリンダ9とを働かせるために、ピンセット状、すなわち審査官のいうV字状の本体3を手で挟んで両端を閉じなければなりません。また、V字状の本体3の長さを生かすためには、手で挟む部分は、先端ではなく、ピストン6とシリンダ9よりも本体後方でなければなりません。

 

 しかし、引用文献1には、ピストンとシリンダよりも本体後方には、手で挟める部分はほとんど存在せず、仮に挟んでも、参考図2に示すように、ピストンとシリンダとが働らく十分な力は得られません。よって、引用文献1の装置は働かないことになり、阻害要因が存在します。

 また、引用文献2には、ピストンとシリンダよりも本体後方には、手で握る部分が存在します。しかし、参考図3に示すように、この手で握る部位は、その形状により、手の親指や人差指が当接すると予定されている部分があり、これらの部位から推定して、本体の後方のみならず先端近くまでに、なります。

 そして、V字状の本体の長さを生かすために、あえて、本体後方を握ると、参考図4に示すように、ピストンとシリンダとが働く十分な力は得られません。よって、引用文献2の装置は十分には働かなくなり、阻害要因が存在します。このため、本願発明は、いわゆる発明の進歩性を満たします。


よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できません。

阻害要因(阻害事由)存在の例  事件番号 特許第5248644号  (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  手袋の内側の保護具5を、指輪型にし、緊急時に、手袋から手を抜きやすいように、脆弱部位15を形成する。
 発明の要約  

【課題】手袋の内側に取付けて指を保護する保護具を、作業性の良い指輪型にするとともに、緊急時に、手袋から手を抜きやすい作業手袋を提供する。

【解決手段】手袋本体3の内側に、指先にはめられて指先を保護する指輪型の保護具5を取付ける。この保護具5に指先方向に向かって線状に、強度の弱い脆弱部位15を形成する。保護具5の取付は、指輪型の保護具5の円周方向において複数の取付箇所で行なわれ、これら複数の取付箇所の間に脆弱部位15が形成される。脆弱部位15は切欠19や溝17を有してなる。緊急時に、手袋から手を抜こうとし、指輪型の保護具5から指を抜こうとすると、指輪型の保護具5の脆弱部位15が引き裂かれ、よって保護具5が破断されることで、保護具5から指を容易に抜くことができ、手袋から手を抜くことができる。

 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の開放部18を、線状に形成して強度の弱い脆弱部位とすることは、容易である。
(副引例との組み合わせは論じられていない) 
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁

 引用文献1で、開放部18が設けられる目的は「手袋ごしに触れている物体の感覚が伝わる」(引用文献1の5ページ16行目)よう機能させるためです。ところが、審査官の指摘のように、開放部18を「線状に形成」にすると、参考図(A)または(B)どちらの場合も、この機能が果たせなくなります。開放部18が狭すぎるからです。よって、引用文献1において、開放部18の機能を阻害することになります。阻害事由が存在します。よって本願発明は進歩性を有します。

 よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できません。
 主引例 (引用文献1)

 副引例 (引用文献2)


 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号   平成27年(行ケ)第10120号
 本発明
  主引例
(ドイツ特許第512667号公報)

高圧蒸気の還流を遮断する装置に利用されるモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁において,シャフト9の下側端部のところでスピンドル12を構成し,モータのエアギャップに高圧の作用のもとでステータ体xに当接するように配置され,ロータがある空間がモータのステータから分離されて定置の部品に密閉式に密着して高圧シールが実現され,相互に可動の部品でのシールを回避した両方の側で開いた中空体からなる弾力性あるシール体zを有するモータと,モータのハウジング3と,弁座に密着する弁部と,下側端部が弁部であり,スピンドル12を介して,回転するスピンドルナット13と結合されている遮断機構aとからなるモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁。
 発明のポイント  モータ駆動双方向弁において、薄板パイプ38と、Oリング等のシール材39を嵌装するシール構造のため、シール材39は移動部分との接触がなくなるので、弁の負荷が安定する。
 発明の要約
 【請求項1】ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁において,回転軸(28)の左端部にリードスクリュー(28a)を形成し,ロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するように配置され,Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ(38)を有する正逆回転可能なモータDと,このモータDの取付板(23)との間に装着されたスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する弁体(22)と,先端部(25a)がこの弁体(22)の保持板(22a)に固定され,前記リードスクリュー(28a)と螺合して,左右に移動する弁体移動手段25とからなることを特徴とするモータ駆動双方向弁。
 無効審判請求における進歩性の否定 主引例の弾力性あるシール体zが、本発明のシール構造に相当する。よって、本発明は容易に発明できる。 
 知財高裁における阻害要因(阻害事由)存在の判断  仮に、・・・、シール体zにOリング等のシール材を嵌装すれば、Oリング等のシール材を介してシール体zに外力が加わることとなり、この外力により弾力性あるシール体zが変形してロータと接触したり、あるいは気密性が失われたりするおそれがあるため、そのような構成を採用することには阻害要因がある。
よって、容易には発明できない。

 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号 平成22年(行ケ)第10345号
 本発明 特表2001-515169
 発明のポイント  触媒(4)と圧力波機械(5)との間に加熱装置(22)を配置する。
 発明の要約
 火花点火機関(1)は、圧力波機械(5)を備え、また、三元触媒(4)を包含する。触媒および圧力波機械の両方のコールド・スタート特性を改善するために、加熱装置(22)が、触媒と圧力波機械との間に配置してある。汚染物質成分HC、COおよびNOxをより良好に除去するために、三元触媒の後に酸化触媒(12)が設けてあり、この酸化触媒は圧力波機械の出口と排気管(11)との間に配置してある。このようにして、圧力波機械から来る過剰空気で酸化触媒を作動せしめることができる。この組み合わせにより、比出力を向上させると同時に、組み合わせ全体のコールド・スタート特性を向上させながら汚染物質をかなり低減することができる。
 拒絶査定不服審決における進歩性の否定 主引例に副引例の加熱装置(排気冷却中間加熱器10)を適用する際に、触媒と圧力波過給機との間に加熱装置を置くことは、単なる設計変更に過ぎない。
よって、これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 判決における阻害要因(阻害事由)存在の判断  1)主引例の機能から、コールドスタート時に圧力波過給機に流入する排気の温度を上昇させる作用が生じるとは考え難く、むしろ、吸気の吹き抜け量の増加により、圧力波過給機を冷却する可能性を内包するから,圧力波機械に流入する排気を加熱する構成を採用する上では阻害要因がある。

 2)副引例の排気冷却中間加熱器(10)は,熱交換により高圧圧縮段の過給機に入る排気を冷却するから,圧力波機械に流入する排気を加熱する構成を採用する上では阻害要因がある。

 よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できない。
 主引例 (引用文献1 特開昭62-20630号)
 副引例 (引用文献2 特公昭60-2495号)

 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号   特許第6084382号
 本発明



主引例 (引用文献1)特開2007-063782号公報


副引例 (引用文献2)特開平10-061362号公報
図1

図3


引用文献8(特開平06-306859号公報 )(段落[0011])
【0011】以上のように組み立てた掘削管1を地上で掴み、地盤13にハンマーによって打ち込む。削孔14を掘削中にケーシング2を通して水を送る。水はビット3内のバネ11の力に抗して弁球12を押して流れ、通水孔8を通って削孔14内に流れ出て地上に掘削土砂を運ぶ。(図3)所定の深さ掘削後、栓体15をケーシング2内に落とし込む。実施例では栓体15として鋼球が使用されている。栓体15は受け部材10の内側のテーパー状周面を伝って、弁孔9の中心に正確に当たり、弁孔9を塞ぐ。(図4)ケーシング2内にアンカーの引張材16を挿入して配置し、硬化材であるセメントミルク17を充填する。(図5)この後、地上にてケーシング2端部に加圧ヘッド18を被せ、セメントミルク17を圧送してケーシング2内の圧力を高める。この圧力によってビット3のOリング7をビットキャッチャー5の溝4から外し、ビット3をケーシング2から離脱させる。(図6)加圧されたセメントミルク17は更に削孔14に流れて、周辺地盤に浸透する。この状態でケーシング2を削孔14から引き抜き、セメントミルク17の硬化を待って引張材16を定着させる。
 発明のポイント  掘削装置1内に設けられる位置情報発信装置7は、削孔途中での取外しと再装着を可能にする着脱機構9を装備する。これによりパーカッション掘削を行う際の衝撃から位置情報発信装置7を確実に保護する。
 アウターピース3内に流体(セメントミルク)を送り込んでその圧力によってインナーピース5を前方へ押し出し撤去する。
 発明の要約  【要約】
【課題】土質に左右されることなく計画線形に沿って正確に削孔できるようにする。
【解決手段】削孔装置1は、ロッドに連結されるアウターピース3と、アウターピース内に押し出し可能に収容されるインナーピース5と、ゾンデ・ロケータ方式による位置検知に用いられる位置情報発信装置7を有する。位置情報発信装置は、該発信装置の削孔途中での取外しと再装着を可能にする着脱機構9を装備し、内部にゾンデや傾斜計を格納している。削孔途中でパーカッションを使用する場合には、着脱機構のラッチ93を解除して置情報発信装置だけを一時的に回収する。これにより、位置情報発信装置を衝撃から確実に保護できる状態で、削孔装置の先端に打撃力を与えることができる。パーカッションが終了したら、位置情報発信装置を元の位置に押し戻しアウターピースに再装着する。これによりゾンデ・ロケータ方式による正確な位置検知を再開できる。

【請求項1】 ロッドの先端側に連結されるアウターピースと、 前記アウターピースに前方へ押し出し可能に収容され、傾斜した土圧受け面を含み、削孔完了後に前方へ押し出すことによって撤去されるインナーピースと、 前記ロッドを介して送水される削孔水を吐出するための送水孔と、 前記アウターピース内に装着され、削孔作業の途中での取外しと再装着を可能にする着脱機構を具備し、ゾンデ・ロケータ方式による位置検知に用いられる位置情報発信装置と、を有 しており、前記位置情報発信装置は、前記インナーピースを前記アウターピース内に残したままで、該アウターピースから取外すことが可能である、ことを特徴とする削孔装置。
【請求項12】 請求項1に記載の削孔装置を用いた注入管の敷設方法であって、 先端に削孔装置を備えたロッドを押し込みつつ削孔水を送水しながら削孔する工程と、 パーカッションが必要な場合に、インナーピースをアウターピース内に残したままで、位置情報発信装置を取外して一時的に回収する工程と、 パーカッション完了後に前記位置情報発信装置を再装着する工程と、 削孔完了後に前記位置情報発信装置を回収する工程と、 削孔が完了し前記位置情報発信装置を回収した後、先端側にパッカーを有する注入管をロッド内に挿入し、該パッカーを膨張させて送水孔を閉塞し、アウターピース内に流体を送り込んでその圧力によってインナーピースを前方へ押し出し撤去する工程と、 を含むことを特徴とする注入管の敷設方法。
 拒絶理由における進歩性の否定  主引例の掘削装置に、副引例の着脱機構を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。
 すなわち、主引例(引用文献1)(特に、段落[0028]-[0052]及び図1参照)に記載された発明の「アウタツール6」、「インナビット20」、「噴射孔27」、及び
「ゾンデケース10とゾンデ17」は、それぞれ請求項1に係る発明の「アウターピース3」、「インナーピース5」、「送水孔43」、及び「位置情報発信装置7」に相当する。
 副引例(引用文献1)に記載された発明は、着脱機構に関して、削孔作業の途中に着脱が可能であることの記載がない点で請求項1に係る発明と相違するが、引用文献2(特に、段落[0012]-[0015]及び図1,3参照)に記載される着脱機構のように、作業途中で着脱を行う構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 
また、引用文献8(段落[0011])には、通水孔を塞いだ後に、セメントミルクの圧送によって先端のビットをケーシングから離脱させることが記載されている。これらを適用して、パッカーの膨張により送水孔を閉塞し、シール材を送り込んで、その圧力によってインナーピースを押し出す構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁 (6-3)阻害要因1
 審査官殿は、引用文献8を挙げ、引用文献1発明において「インナーピースを押し出す構成」とすることは当業者が容易になし得たことである、と指摘しています。
 しかしながら、引用文献1発明では、「インナビット20を具備するインナツール7」を回収するための様々な工夫を設け、更に、インナツール抜止め用の係合受け部14まで設けています(引例1の段落[0036],[0032]等)。つまり、引用文献1発明では、インナツールを押し出す構成(インナツールが回収できなくなる構成)とすることを排除しており、引用文献1発明でそれを採用することはあり得ないものと思料いたします。
 また、引用文献1に引用文献8を適用して、「インナツール7を押し出す構成」とした場合には、それに連結している「ゾンデケース10とゾンデ17」も同時に押出してしまうことになり、その場合、削孔再開時に「ゾンデケース10とゾンデ17」の再利用ができなくなるといった致命的な問題が発生します。さらに、引用文献1の装置構成において、ひとたびインナツール7を押し出せば、自在掘削装置から土圧受け面13が失われることになるため、削孔再開時の方向制御(曲線掘削のための方向制御)が不能となるといった致命的な問題が発生します。

(6-4)阻害要因2
 引用文献1の段落[0022]には、「回収用線状体を引き戻してインナツールを回収する発明として構成される」と記載されています。また、引用文献1の段落[0036]には、「インナツール7は、先端側から順にインナビット20、ラッチ部21、関節部22、ゾンデ格納部23を前後間で連結して備える」と記載されています。つまり、引用文献1発明では、インナビット、ラッチ部、関節部、ゾンデ格納部(位置情報発信装置)が連結されており、インナツール7を引き抜いて回収する際には、これらの全てが連結された状態でアウタツール6から同時に引抜けることになります。
 そうすると、引用文献1発明において、インナビット20をアウタツール6内に残しつつ、インナツール7の一部である「ゾンデケース10とゾンデ17」だけを分離してアウタツール6から取り外す場合には、「インナツール7」全体の回収が不可能になります。つまり、引用文献1発明を、本願発明の如く「インナビット20をアウタツール6内に残したままで、『ゾンデケース10とゾンデ17』をアウターピースから取外す」ことは、インナツールの回収を前提とする引用文献1発明の機能・作用を完全に奪うことになります。 

よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できません。

 阻害要因(阻害事由)の例  事件番号    (旧かたかべ特許事務所出願)特許
 本発明  発明のポイント  
 発明の要約  
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の

副引例の
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における阻害要因(阻害事由)存在の抗弁  よって組み合わせようとすると阻害要因が存在することになり、容易には発明できません。

 主引例 (引用文献1)  副引例 (引用文献2)


動機づけ不在の例   事件番号  特許5727070   (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
   
発明の
ポイント
 本発明の釘2は、地震の際に、中央部16が左右に変形して、地震による振動エネルギーを吸収する。
中央部16には窓20が設けられ変形しやすくなっている。
発明の
要約
 【課題】木造構造物の制振性能を向上できる、制振釘およびこれを用いた制振構造を提供する。【解決手段】表側の木材4から打ち込まれて貫通し裏側の木材6に達して両木材をとめる釘において、表側の木材4に位置する釘上部14と、裏側の木材6に位置する釘下部18と、釘上部14と釘下部18との間にあって横断面積が釘上部14や釘下部18よりも小さい釘中央部16と、を有する。これにより、表側の木材4と裏側の木材6との間に働く振動の繰り返し荷重により釘中央部16が変形を繰り返すことで振動エネルギーを吸収する。この釘は、全体が板状の金属部材8によって形成され、上端が直角に屈曲して頭部10となり、釘中央部16は幅が小さくされ、または窓20が開けられて横断面積が小さくなっている。また、釘上部14、または釘下部18には木材との摩擦を大きくするための凹凸22が幅方向に形成される。
拒絶理由における進歩性の否定  主引例の釘も、地震の際に、変形して、地震による振動エネルギーを吸収する。
副引例の釘の中央部にも、発明の窓20と同様の穴314が設けられている。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。
 意見書における
動機づけ不在の抗弁
 
引用文献2の釘中央部の穴314は、タイン316と呼ばれる歯部を形成するためのもので、このタイン316は、側面に突出するつかみ・締め付け部材318,320によって、工作物をつかみ・締め付けて固定する機能を有することを、その技術内容の要旨としています。 このように引用文献2の釘中央部は工作物を固定し、その固定の状態で、工作物に対し相対的に、静止させていたいのですから、引用文献1の釘のように釘中央部での変形を繰り返えさせ、工作物に対し相対的に動かそうとする如き、動機づけは存在しえません。
よって組み合わせようとする動機づけが存在せず、容易には発明できません。
 主引例 (引用文献1)

 副引例 (引用文献2)


 動機づけ不在の例  事件番号 特許第5406403号   (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  手袋本体3の内側に、指先7を保護する指輪型の保護具5を取付け、保護具5の開口部17を傾斜させておく。これにより、緊急時に指を抜こうとするときに、保護具5が立ち上がり開口面積が大きくなり、抜きやすい。また、保護具5が外れたり欠けたりすることもない。
 発明の要約
 【課題】手袋の内側に取付けて指を保護する指輪型の保護具を、緊急時に、手袋から手を抜きやすくし、かつ、指に怪我を負わせる可能性を抑止する。【解決手段】手袋本体3の内側に、指先7にはめられて指先7を保護する指輪型の保護具5を取付ける。この保護具5の指輪型を形成する楕円状の後縁13を、側方から見て、上向きに傾斜させる。取付は、指輪型の保護具5の円周方向において、上部の先端と、下部の後端との2箇所19で行なう。これにより、通常は、後縁13は傾斜しているので、開口部17が作用する面積は小さく、指にフィットし、作業しやすい。しかし、緊急時に、手袋から手を抜こうとして、手を上下左右にゆすると、後縁13は、ある瞬間に立ち上がり、開口部17の実際の大きな面積が作用し、指を抜きやすい。破断することもないので、破断による怪我はなくなり、指に怪我を負わせる可能性を抑止できる。
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の手袋も、内側に、指先を保護する指輪型の保護具5を取付けてある。
副引例の手袋も、保護具が傾斜している。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における  の抗弁 [1]動機付け不在その1
引用文献2のように保護具が手袋の「外側に」付けられるものは、保護具と指の間に手袋が存在しますので、指は手袋から抜けやすく、保護具には直接に触れません。そのため保護具が指から抜けにくいという問題が、そもそも、存在しません。このため、引用文献2,3のものを、引用文献1のものへ組み合わせようとする動機付けが存在しません。

換言すると、指先が保護具から抜けにくくなるのは、指先を抜こうとするときに、指先の皮膚と保護具の滑りが悪く、保護具の後縁によって皮膚が押されることでしわが寄り、このしわが邪魔になって、抜けにくくなります。

 ところが、引用文献2のように保護具と指の間に手袋の生地が存在すると、この生地と指との滑りが良くなり、また、皮膚にしわが寄らず、指が抜けにくいという問題が、存在しません。

[2]動機付け不在その2
引用文献2のように保護具が手袋の「外側に」付けられるものは、本来、保護具が外れたり、欠けたりすることがあっても問題のない分野で使用されるものです。これを裏付けるように、引用文献2の分野は,たとえば、土掘り作業(引用文献2段落0009の5行目)です。

 このため、引用文献2の手袋は、保護具が外れたり、欠けたりすることで製品への混入異物になることが忌避される他分野では、始めから使用されません。そのような使用は想定されません。

 本願発明は、混入異物になることが忌避される分野のものです(本願の出願当初明細書段落0002の5行~段落0003の2行目)。このように分野が異なり、引用文献2のものを、引用文献1のものへ組み合わせようとする動機付けが存在しません。

 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)


動機づけ不在の例  事件番号   特許第5805011号 (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  フラット式の扉の下端に設けられるボールキャスターの構成を工夫してレールから脱線しにくくする。また、レールの屈曲を工夫し、かつ、扉の厚み角部を斜めにカットし、両の扉が接触しにくくし、接触による脱線を防止する。

*フラット式の扉:両の扉を閉じたときに両の扉の面が同一面(フラット)になる。
 発明の要約  【課題】扉が脱線しにくいフラット引戸を提供する。
【解決手段】扉3の下端に設けられたボールキャスター31が、下レール7に形成される断面が上向きのコの字状の下溝33に、入って転動しつつ移動する。このボールキャスター31を構成しボール37を支持する円筒部分35の下縁が、下溝33内に位置することで、ボール37は、その丸み39が、レール7の下溝33の側壁や縁に触れることが無く、よってボール37がレール7の縁を乗り越えることを防止でき、脱線しにくい。さらに、左右の扉3は、閉じた状態から開き始めにおいて、互いに対向する左右方向内側の縦辺部41の厚み角部が、斜めにカット43された形状を有することにより、そのカット43された分だけ、開き始めに互いに接触しにくい。よって、接触に伴う脱線を防止できる。
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の扉も、ボールキャスターが本発明と同様の構成を有している。また、レールの屈曲も同じで、扉の厚み角部が斜めにカットされている。
副引例の扉も、フラット式である。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における  の抗弁  引用文献1と本願発明は、目的、効果が全く反対です。引用文献1のような非フラット式の左右の扉を「近づけ接触させる」ための技術を用いて、本願発明のようにフラット式の扉を「遠ざけ接触させない」ようにすることは、通常は思いつかず、このため動機づけが不在です。
 よって組み合わせようとする動機づけが存在せず、容易には発明できません。
 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)
一般的なフラット式の扉

動機づけ不在の例  事件番号 特許第5248644号 (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  手袋の内側の保護具5を、指輪型にし、緊急時に、手袋から手を抜きやすいように、脆弱部位15を形成する。
 発明の要約  

【課題】手袋の内側に取付けて指を保護する保護具を、作業性の良い指輪型にするとともに、緊急時に、手袋から手を抜きやすい作業手袋を提供する。

【解決手段】手袋本体3の内側に、指先にはめられて指先を保護する指輪型の保護具5を取付ける。この保護具5に指先方向に向かって線状に、強度の弱い脆弱部位15を形成する。保護具5の取付は、指輪型の保護具5の円周方向において複数の取付箇所で行なわれ、これら複数の取付箇所の間に脆弱部位15が形成される。脆弱部位15は切欠19や溝17を有してなる。緊急時に、手袋から手を抜こうとし、指輪型の保護具5から指を抜こうとすると、指輪型の保護具5の脆弱部位15が引き裂かれ、よって保護具5が破断されることで、保護具5から指を容易に抜くことができ、手袋から手を抜くことができる。

 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の開放部18を、線状に形成して強度の弱い脆弱部位とすることは、容易である。
(副引例との組み合わせは論じられていない) 
 意見書における動機付け不在の抗弁

<動機付けの不在1>
 引用文献1で、開放部18が設けられる目的は「手袋ごしに触れている物体の感覚が伝わる」ように機能させるためですが、開放部18を「線状に形成」にすると、この機能が果たせません。このため、「線状に形成」にしようとする動機付けは、引用文献1においては、存在できません。動機付けの不在です。よって本願発明は進歩性を有します。

<動機付けの不在2>
 引用文献1の係合部14は、引用文献1の請求項1に記載されることから、引用文献1の技術の必須要件です。このため、審査官が指摘するように仮に「・・・・。開放部18を・・・脆弱部位とする・・・・」にしても、係合部14は必須要件として引用文献1の保護部材10には依然として存在し続けることになります。そして、存在し続ける係合部14の強度が邪魔をして保護部材10は引き裂かれ破断することはありません。よって、開放部18を、本願発明における脆弱部位にしようとする動機付けが存在できません。よって本願発明は進歩性を有します。
  よって組み合わせようとする動機づけが存在せず、容易には発明できません。

 主引例 (引用文献1)

 副引例 (引用文献2)

動機づけ不在の例  事件番号 特許第5019403号   (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  円柱状の軸A,Bの両端に接合手段としての面ファスナー1bを設ける。これにより複数のA,Bを接合し自由に造形できる玩具を提供できる。
 発明の要約  【課題】硬質素材且つ接合部に凹凸部を設けた組み立て玩具は、組み立て時にパーツを組み合わせる方向、位置に制限があり、造形する物体の具体性を表現するにあたり、どうしても物足りなく感じる面があった。
【解決手段】本願発明による組み立て玩具は、パーツを、スポンジや綿などの軟質軽量の素材を雄雌混在の面ファスナーと着脱性を有する布で被覆し円柱状の軸とし、その両端部分に接合手段として雄雌混在の面ファスナーを設けたものである。これにより、軸の両端を軸の任意の位置で接合させる事が可能となり、物体における具体性を自由且つ簡単に表現できる事を可能とした。また、パーツの軸には留め具などの凹凸がない為、非常にスマートな、美観に優れた物体を造形する事ができるものである
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例のA、Bは本願発明の円柱状の軸に相当する。
副引例のタブ40は本願発明の接合手段としての面ファスナーに相当する。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における動機付け不在の抗弁 引用文献1へ引用文献2を適用することには、いわゆる動機付けの不在が認められます。
 すなわち、引用文献2は、構成部分12と称されるブロック体同士を、両面が係止面となっているタブ40を間に挟んで、接合するものです。よって、その接合
の際には、一方のブロック体を他方のブロック体へ押し付けなければ、タブ40が機能せず、そのためには、ブロック体の接合面は、ある程度の硬さを有し、且つ平らでなければなりません(引用文献2Fig8)。したがって、引用文献2の適用は、ある程度の硬さを有し、且つ平ら接合面を有する対象物に限られ、柔らかく、平らでない対象物への適用は想定されていないとされるべきです。
 しかし、引用文献1の接合が行われる面は、柔らかく、しかも平らではありません。柔らかく、平らでなくても、留め具2,3同士を、直接に指で押して接合できます。
 このため、引用文献2の引用文献1への適用には、動機付けの不在が認められます。
 もっとも、引用文献2でもタブ40を直接に手で押して接合できる場合もあります(引用文献2Fig9)が、特殊な接合形態であり、引用文献1には対応する接合状態がありません。すなわち、引用文献2のこのようにタブ40の片面が露出した状態の接合形態に対応する、留め具2や留め具3の片面が露出した状態の接合形態は、引用文献1では存在しえません。このため、やはり、引用文献2の引用文献1への適用は想定されていないとされるべきであり、動機付けの不在が認められます。
 よって組み合わせようとする動機づけが存在せず、容易には発明できません。
 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)

動機づけ不在の例  事件番号  特許第5506070号  (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  ビン7の蓋9を開ける蓋明け具において、ベルト5に接する押圧部21を設けることで、ベルト5の弛みをなくす。
 発明の要約  【課題】
 グリップに設けられたベルトをビンの蓋部の周囲に巻き回し、グリップを所定方向へ回動させてビンの蓋を開ける蓋明け具を改良し、ベルトが、より弛みにくく、滑りにくい、蓋開け具を提供する。

 【解決手段】
 グリップ3の上部に、略L字状のL字部11が形成され、このL字部11の縦辺13に貫通して、横孔としての空間部15が形成される。ベルト5は、この空間部15の内部上面に一端が固定され、このベルト5の他端33は、L字部11の略L字状の横辺17が向かう方向へ、延設され、L字部11の上空を回って円弧を描き、ビン7の蓋9の周囲に巻き回わされた状態で、再び、空間部15に入り、ベルト5の一端の下を二重状態になって通り、再び、L字部11の略L字状の横辺17が向かう方向へ延びる。そして、押圧部21が、このL字部11の略L字状の横辺17に、突設され、L字部11の略L字状の横辺17が向かう方向へ、縦辺13から離れて位置し、ベルト5の下面に接し、ベルト5の弛みをなくす。
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の蓋開け具に、副引例の押圧部を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における動機付け不在の抗弁  引用文献1に対して組合せが想定される引用文献2、3,4では、ベルトの二重状態の部分が存在せず、そのような存在しない部分の滑りを防止しようとする動機付けは、これら引用文献2、3,4には本来的に生じ得ません。
 引用文献2、3,4に、ベルトの二重状態の部分が存在しないことを、以下、説明します。
 まず、引用文献2では、第2頁第10行~11行に「ベルト4の係合端4a側は嵌環Wで環状部Gの形出可能である」とあります。この「嵌環W」がどのような形状構造を有する金具なのか引用文献2からは不明ですが、この「嵌環W」によってベルト4から「環状部G」の形が作り出されると読めます。このように「環状部G」は「嵌環W」によって形を作り出されるのであれば、「環状部G」を摩擦によって作り出すためのベルトの二重状態の部分はあえて必要ありません。このことを裏付けるように、引用文献2の図2にも、二重状態の部分は認められません。
 引用文献3の図2では、ベルトの二重状態の部分は、見かけ上はありますが、この部分で、ベルトの一方は自由端になっており、この自由端の向く方向は、グリップ4の力が働く方向とは逆ですから、力を受けることができません。このため、実際には、滑りにくくし力を受けてより容易に蓋を開けるための二重状態の部分ではありません。
 
引用文献4の図1では、ベルトの二重状態の部分は、ありません。一見、二重に見えるのは、ベルトは一方の端を折り返して取付けた部分です(第2頁第1~4行をご参照)。
 以上のように、引用文献2、3,4では、ベルトの二重状態の部分が存在しません。そのような存在しない部分の滑りを防止しようとする動機付けは、これら引用文献2、3,4には本来的に生じ得ません。
 よって組み合わせようとする動機づけが存在せず、容易には発明できません。
 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)
参考図1(引用文献2の図2を元にしたもの。比較のために反転した)

参考図2(引用文献3の図2を元に左右を逆にしたもの。比較のために反転した)

参考図3(引用文献4の図1を元に左右を逆にしたもの。比較のために反転した)


 動機付け不在の例  事件番号  特許第5079149号 (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  スプリンクラーヘッドの間隔が、満たされているか否かを簡易に知る簡易距離表示装置。
スプリンクラーヘッドのうち、一方21に、伸縮式の支持棒3を伸長し先端を位置させ、水準器10を用い、支持棒3を垂直状態にする。そして、レーザー照射手段5のレーザー光により所定角度θで上向き斜めに天井9を照射し、照射光を、他方のスプリンクラーヘッドへ近づける。
 発明の要約
 【課題】効率的に安全に天井における距離、例えば法律で規定されたスプリンクラーヘッドの間隔が、満たされているか否かを簡易に知る簡易距離表示装置を提供する。【解決手段】作業員7は、例えば天井9の2つのスプリンクラーヘッド39のうち、一方に、伸縮式の支持棒3を伸長し先端を位置させ、水平面内で互いに直交する位置に2つ配置された水準器11を用い、支持棒3を垂直状態にする。そして、支持棒3に設けられたレーザー照射手段5のレーザー光により所定角度θで上向き斜めに天井9を照射する。レーザー照射手段5と天井9との垂直距離L1は一定であり、所定角度θとによって、支持棒3の先端位置21から照射位置までの所定水平距離L2は、決まる。照射位置を、他方のスプリンクラーヘッド39へ近づければ、規定された間隔よりも、実際の間隔は短いか長いかが、簡易に示される。さらに、角度調整手段によって照射の角度を調整することで、所定水平距離L2を任意に調整することができるので、スプリンクラーの性能によって異なる距離に対応できる。
 拒絶理由における進歩性の否定
主引例も、レーザー光により上向き斜めに天井を照射し、天井面上の距離を知る。
副引例も、伸縮式の支持棒3を伸長し先端を天井に位置させ、光によって、設置物の位置を確認する
 意見書における動機付け不在の抗弁   引用文献1と2を組み合わせて本願発明の進歩性を否定するにあたり、引用文献2においては、本願発明のように水平方向の距離を正確に求めるための技術ではなく、上下方向の距離を正確に求めるための技術であり、よって本来的に目的が異なり、この異なりにより、組合せの動機付けは存在しません。
  すなわち、引用文献2においては、吊り金具HC(引用文献2図1参照)は、既に、水平方向の所定間隔で設置されています(引用文献2【0033】2行目~【0034】)。このため水平方向の距離を正確に求めることは、おそらく既に解決されています。そして、水平方向に発射されるレーザービームは、床Fからの高さ(すなわち上下方向の距離)であるy1+y2を正確に求めるためのものです。よって、水平方向の距離を正確に求めるための本願発明とは、本来的に目的が異なります。
  このため、引用文献1の水平方向距離を正確に求めるためのレーザー照射手段を、引用文献2の上下方向の距離を正確に求めるためのレーザー機器の代わりにして、引用文献2の伸縮ポールに設けようとする動機付けは、そもそも不在しないと言えます。
 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)


動機付け不在の例  事件番号  特願2014-50889  (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  レーザー加工時の煙や粉塵を除去するため、集塵ダクト19の形状を、レーザー出射ヘッド3から加工対象9に向かって下向きに拡がる回転対象形状とする。この集塵ダクト19の下縁と加工対象9との間に設けられた間隙から、周囲の空気を供給する。集塵ダクト19に対して、水平断面において接線方向へ、排気パイプ接続し、負圧により排気をおこない、旋回流を生じさせ排気する。
 発明の要約  【課題】レーザー加工をおこなう際に加工対象から発生する煙や粉塵を集め、十分な集塵をおこなうレーザー加工集塵装置を提供する。特に、ガルバノスキャナーを使用して加工を行なった場合、加工速度が早いため発生する煙や粉塵も高速に舞い上がり、かつ、高速移動する。また、スキャナーの走査方向により様々な方向に舞い上がる。このため十分に煙や粉塵を除去することはできない。
【解決手段】レーザー出射ヘッド3から加工対象9に向かって下向きに出射されるレーザー光の回りを取り囲む集塵ダクト19を、回転対称の形状とする。この集塵ダクト19の下縁29と加工対象9との間に設けられた間隙から、周囲の空気を集塵ダクト19内へ供給する。あるいは集塵ダクト19の下端に接続された圧縮空気供給口33から、圧縮空気を集塵ダクト19内へ供給する。集塵ダクト19に対して、水平断面において接線方向へ、排気パイプ接続し、負圧により排気をおこなう。これにより、集塵ダクト19内に旋回流を生じさせ、旋回流のまま排気する。
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例には、ダクトが回転対象形状であり、ダクトの下縁の間隙から空気が供給され、内部に旋回流を発生させ、排気する技術が開示される。

副引例には、ガルバノスキャナーを使用してレーザー加工する技術が開示される。


これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 主引例 (引用文献1)
 意見書における動機付け不在の抗弁

引用文献1では、集塵ダクトの形状は、下に狭くなった逆円錐台状を有します(参考図2)が、これは、空気の流速を減速しないためのものです(引用文献1【0081】)。そして、仮に、引用文献1で、集塵ダクトの形状を本願発明のように、下に拡がった円錐台状にすると、集塵ダクトの下端とレーザノズル26Aとの隙間S(参考図2)が大きくなってしまい、空気のる流速を減速してしまうので、高速で飛散する粉塵の集塵が難しくなります。
 よって、引用文献1で、集塵ダクトの形状を本願発明のように、下に拡がった円錐台状にする動機づけは、存在しません。

参考図2:
引用文献1の図16に、円錐状の空間23描きこむことで、一部加工したもの)

 副引例(引用文献2:一般的なガリバノスキャナーを備えたレーザー加工装置


 動機付け不在の例  事件番号   特許第5008165号 (旧かたかべ特許事務所出願)特許
 本発明
 発明のポイント  装置本体3を背部に位置させ前腕7に固定した筋力トレーニングの装置。
 発明の要約  【課題】胸部筋のトレーニングに効果があり、手で把持する必要がないことから、トレーニングをしている最中でも他の作業を行うことができるトレーニング用具を提供する。【解決手段】本体3は、人5が両手を左右に拡げた状態で一方の前腕7から他方の前腕7までの長さに概略相当する長さを有し、直線的で、人5の力で弓状に屈曲でき、復元可能な弾性を有し、帯状である。装着は、この本体3の両端部に設けられて、本体3を人5の背部21に位置させた状態を維持して、人5の前腕7に固定される固定部17によって、おこなう。
 拒絶理由における進歩性の否定
主引例も、器具の本体を人の背部に位置させた状態を維持して、人の前腕に固定される。
副引例も、本発明の本体(3)に相当する器具を使用する。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。
 意見書における動機付け不在の抗弁   参考図のように、引用文献1の用具は、チューブの様な抵抗要素(【0039】12行目参照)であり、その長手方向へ引っ張って伸縮させて使用するものです。これに対して、引用文献2の用具は、曲げて使用するものであり、その長手方向へ引っ張るものでもなく、伸縮させて使用するものでもありません。このように、用具の使い方が根本的に違うことから、引用文献1へ引用文献2の用具を組み合わせることの動機付けは存在しないとされるべきです。よって、本願発明の進歩性を否定できません。
 主引例 (引用文献1)
 副引例(引用文献2)


 意見書の参考図


 動機付け不在の例  事件番号  特願2011-202475 (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  二重になったバルーン1,3の間に遺灰をサンドイッチ状に収める。空中散骨を確実にする。
 発明の要約  【課題】空中散骨が失敗し落下してしまう可能性が少ない散骨用バルーン及び散骨方法を提供する。

【解決手段】第1バルーン1に遺灰7を入れ、この第1バルーン1の中に第2バルーン3を位置させ、この第2バルーン3に注入ガス5を注入することで第1、第2バルーン1,3を重ねた状態でともに膨らませ、膨らませた第1、第2バルーン1,3の口9を閉じ、高々度において破裂させ、よって、空中で散骨する。このとき、外側の第1バルーン1だけが破裂し内側の第2バルーン3が破裂しない場合には、遺灰7は直ちに空中散骨される。逆に、高々度において、外側の第1バルーン1が破裂しないで内側の第2バルーン3だけが破裂した場合には、遺灰7は外側の第1バルーン1の中に残り、この第1バルーン1の浮力により落下しない。この第1バルーン1はさらに高度を上げ、やがて破裂し、無事、空中散骨がなされる。

 拒絶理由における進歩性の否定
  主引例も、バルーンが二重になっている。
 意見書における動機付け不在の抗弁   引用文献1は、内側のバルーンが「浮遊」することによる「セレモニー効果」(引用文献1【0009】ご参照)を、その発明の効果にうたっています。この「浮遊」を達成するには、第1バルーンと第2バルーンとは重なった状態になってはならず、両バルーンは互いに自由に動く状態でなければならなりません。よって、両バルーンの間に遺灰を位置させたサンドイッチ状態を現出させる動機付けが存在し得ません。よって、引用文献1は、本願発明の進歩性を否定できません。
 主引例 (引用文献1)
 副引例 (引用文献2)
引用なし
[本来は複数の引例により進歩性の否定が提示されるべき]


 動機付け不在の例  事件番号 特許第4947748号   (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明
 発明のポイント  ベルト5をビンの蓋部の周囲に巻き回し、グリップ3を回動させてビンの蓋を開ける蓋開け具。グリップ3の略L字状11と、ベルト5の取り付け状態に、特徴があり、蓋開け作業を容易にできる。
 発明の要約  【課題】グリップ3に弧状に設けられたベルト5をビンの蓋部の周囲に巻き回し、グリップを回動させてビンの蓋を開ける蓋開け具において、ベルトが描く弧が円に近くなり易くて作業が容易であり、ベルトの弛みを除く作業があまり必要ではない蓋開け具を提供する。

【解決手段】グリップ3の上部に略L字状の上面部11が形成される。この略L字状の縦辺の先端である上段面部13と、略L字状の横辺である下段面部15と、略L字状の縦辺に貫通する横孔として形成され下段面部15に隣接する空間部17と、が形成される。そして、ベルト5は、空間部17の内部上面に一端19が固定され、略L字状の横辺が向かう方向へ設けられ、上面部11の上空を回って弧21を描き、空間部17に入り、一端19の下を二重状態になって通り、再び略L字状の横辺が向かう方向へ他端が延設される。

 拒絶理由における進歩性の否定 主引例のグリップにも、略L字状の部分がある。
副引例のベルトも、本発明と同様の取り付け状態にある。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
参考図
主引例(引用文献1)       副引例(引用文献2)
 
 意見書における動機付け不在の抗弁

 参考図の左側に引用文献1の第1図を、角度を修正して、記載します。参考図の右側に引用文献2の第2図を、左右を逆にして記載します。左右を逆にするのは、引用文献2のベルトの姿勢を、本願発明のベルトの姿勢と同じにするためです。
 このようにして引用文献1と2を左右に比べると、なるほど一見して、本願発明の構成要件のうち、引用文献1に不足するベルトの部分を、引用文献2のベルトに置き換えることで、本願発明が完成し、あたかも進歩性が否定されるように見えます。
 しかし、この参考図に明らかなように、グリップの回動方向は、引用文献1では本願発明(本願図3中の方向24)と同じ方向(図中右方向)ですが、引用文献2では逆方向(図中左方向)になります。すなわち、引用文献2においては、参考図の図中右方向へグリップを回動すると、ベルトは緩んでしまい(引用文献2第1図の状態になってしまう)、蓋を開けることはできません。

 つまり引用文献2は、参考図の右方向へグリップを回動する使用は本来しないので、そのような誤った使用姿勢でのベルトを、引用文献1へ、<適用>することは本来考えられず、<適用>の動機付けが不在である、と認められます。よって、本願発明は進歩性を有します。


 動機付け不在の例  事件番号 特許第4886919号  (旧かたかべ特許事務所出願)
 本発明


参考図1(本願発明の図1(A)に点線で描く手を加えて加工したもの)

 発明のポイント  歯科治療の充填剤を無駄なく充填できるよに、ピンセット状の本体の両端に、ピストン6、シリンダ9を設ける。
 発明の要約  

【課題】歯科治療で貴重な充填剤を無駄にすることがなく、充填をスムーズに行なうためにそれほど粘度を小さくする必要がなく、洗浄も面倒でない歯科充填器具を提供する。

【解決手段】ピンセット状の一方の先端5に設けられたピストン6が、ピンセット状の両端が閉じるときに、他方の先端7にシリンダ9に設けられたシリンダ9に、挿通され、シリンダ9内部の充填剤13が、シリンダ9から充填される。従来のように、長いノズルやチューブを必要とせず、長いノズルやチューブを貴重な充填剤13で満たして無駄にすることがない。また、それほど充填剤13の粘度を小さくする必要がない。更に、洗浄は面倒でない。

 拒絶理由における進歩性の否定 主引例は、本発明のピンセット(V字状の本体と認定される)に相当する部分124,125を有する。
副引例は、V字状の本体(25,27)の両端にピストン11とシリンダ10を有する。
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
参考図2(引用文献1の図に点線で描く手を加えて加工したもの)


参考図3(引用文献2の図に点線で描く手を加えて加工したもの)


参考図4(引用文献2の図に点線で描く手を加えて加工したもの)

 意見書における動機付け不在の抗弁    

本願発明は、参考図1に示すように、ピンセット状の先端にピストン6とシリンダ9とを設けるので、ピンセット状、すなわち審査官のいうV字状の本体3の長さを生かした歯科治療ができ、長いノズルやチューブを必要としないため、種々の利点を有するものです。

 しかし、引用文献1には既に長いノズル132が設けられ(参考図2参照)、引用文献2にも既に長いノズル14が設けられています(参考図3、4参照)。このため、V字状の本体の長さを生かし長いノズルやチューブを必要としないことを目的とする発明を、引用文献1、2に基づいて行おうとする動機付けは、存在しません。必要ないためです。よって、本願発明は、いわゆる発明の進歩性を満たします。


 動機付け不在の例  事件番号   平成27年(行ケ)第10120号
 本発明
  主引例
(ドイツ特許第512667号公報)

高圧蒸気の還流を遮断する装置に利用されるモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁において,シャフト9の下側端部のところでスピンドル12を構成し,モータのエアギャップに高圧の作用のもとでステータ体xに当接するように配置され,ロータがある空間がモータのステータから分離されて定置の部品に密閉式に密着して高圧シールが実現され,相互に可動の部品でのシールを回避した両方の側で開いた中空体からなる弾力性あるシール体zを有するモータと,モータのハウジング3と,弁座に密着する弁部と,下側端部が弁部であり,スピンドル12を介して,回転するスピンドルナット13と結合されている遮断機構aとからなるモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁。
 発明のポイント  モータ駆動双方向弁において、薄板パイプ38と、Oリング等のシール材39を嵌装するシール構造のため、シール材39は移動部分との接触がなくなるので、弁の負荷が安定する。
 発明の要約
 【請求項1】ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁において,回転軸(28)の左端部にリードスクリュー(28a)を形成し,ロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するように配置され,Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ(38)を有する正逆回転可能なモータDと,このモータDの取付板(23)との間に装着されたスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する弁体(22)と,先端部(25a)がこの弁体(22)の保持板(22a)に固定され,前記リードスクリュー(28a)と螺合して,左右に移動する弁体移動手段25とからなることを特徴とするモータ駆動双方向弁。
 無効審判請求における進歩性の否定 主引例の弾力性あるシール体zが、本発明のシール構造に相当する。よって、本発明は容易に発明できる。 
 知財高裁における動機付け不在の判断  引例におけるシール体zは,弾力性ある部材であり,それ自体でシール構造を成すとともに,ステータxとロータyとを隔てる役割をも果たしていることから,さらにOリング等のシール材を用いる必然性は全くなく,さらに薄板パイプを設ける必然性も認められないから,引用発明において,薄板パイプ及びOリング等のシール材を採用する動機付けがない。
よって、容易には発明できない。

動機づけ不在の例  事件番号    (旧かたかべ特許事務所出願)特許
 本発明  発明のポイント  
 発明の要約  
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の
副引例の
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における動機付け不在の抗弁  よって組み合わせようとする動機づけが存在せず、容易には発明できません。
 主引例 (引用文献1)  副引例 (引用文献2)


動機づけ不在の例  事件番号    (旧かたかべ特許事務所出願)特許
 本発明  発明のポイント  
 発明の要約  
 拒絶理由における進歩性の否定 主引例の
副引例の
これら2つの例を組み合わせることで、本発明は容易に発明できる。 
 意見書における動機付け不在の抗弁  よって組み合わせようとする動機づけが存在せず、容易には発明できません。
 主引例 (引用文献1)  副引例 (引用文献2)