体内の尿酸値が上昇してこの状態が長く続くと、関節内に尿酸の結晶が出来て、
ある日突然に激痛を伴う痛風発作を起こすことがある。
この痛風の原因となる尿酸はプリン体から生成される。プリン体を多く含む食
品を摂取すると大部分は腸管から排泄されてしまうが、一部は吸収されて肝臓
で代謝されて尿酸になる。
しかしこの食品から摂取されたプリン体は、体内の細胞の新陳代謝によって出
てくる大量のプリン体と較べると極めて量が少ない。
高尿酸血症は、従来説明されてきた高プリン体食品の摂取が主要な原因ではな
く、大部分は体内での細胞の新陳代謝によって、壊れた細胞の核から出てきた
プリン体が原因であると言われている。
ストレス、肥満、激しい運動、アルコール等が原因となって体内のプリン体が
過剰に生産される。
激しい運動、無酸素運動によって細胞が破壊されたり、細胞のエネルギーを大
量に消費した場合にはプリン体が増加する。
肥満が進んで内臓脂肪が多くなり高インスリン血症を来たすと、その増加した
インスリンが、尿細管で排出しなければならない尿酸を逆に再吸収して尿酸の
排出を阻害し、体内の尿酸を増やしてしまう結果となる。
アルコールを分解する時にも大量のエネルギーを消費するので、大量のプリン
体が生成され、その結果肝臓の代謝によって大量の尿酸が生成される。
ビールが痛風の原因になると長年言われてきたが、ビール自体のプリン体は
6.86mgで(焼酎0.03mg,日本酒1.21mg)、他のアルコール飲料に較べて決し
て多くはない。むしろビールの中のアルコールが問題となる。
高尿酸血症は他に高脂血症、高血圧症、尿路結石、腎障害を合併することが多
く、成人病のアドバルーンと考えて注意しておく必要がある。
尿酸は腎臓から尿に排出されるが、酸性尿では尿酸が溶けにくく、アルカリ尿
では溶けやすいので尿中に尿酸を排出しやすくする。日本人の場合、高尿酸血
症の約70%は尿酸の排泄障害によって起きると言われている。
高尿酸血症にならないためには、尿酸が過剰に生産されることを避けるととも
に、体内で生成された尿酸を排出することが大切である。このためには尿をア
ルカリ性に保つことが必要となる。
尿酸の排出を容易にするためには尿アルカリ化食品を毎日350g食べると良い。
牛乳、野菜、ウーロン茶、サラダ、ひじき、バナナ、グレープフルーツ、メロン、
芋,里芋、ヒジキ、わかめ,昆布、乾しいたけ、大豆。
尿酸を尿から排出するために一定量以上の尿量を確保しなければならない。
毎日2リットル以上の水分を飲む必要がある。この場合飲料としてはノンアル
コール、カロリー無しの水分がよい。
夏になって発汗が多いと尿量が減少する。その結果尿酸の排出が減って痛風を
発症することがある。脱水による尿酸の排泄の低下を防ぐためには、夏季には
水分を十分に飲んで尿量を確保しなければならない。
先に述べたようにアルコール性飲料を減らし、体重を標準体重に保つことを心
がけなければならない。激しい運動やストレスも出来るだけ避けなければなら
ない。以上のことは血中尿酸値をあげないための大切な条件である。
痛風、高尿酸血症になってしまって関節痛や腫脹等の痛風の症状がある場合、
または無症候性高尿酸血症の場合、ともに食事療法を行っても血中尿酸値が
8.0mg以下にならない場合には両者ともに薬物治療の対象になる。
血中尿酸値を7.0mg
程度、又はそれ以下(5.0mg〜6.4mg)に維持する必要がある。