下記は昭和8年3月、三光堂松本常三郎長男達雄の結婚披露宴の模様を伝える蓄音器業界紙の記事です。 |
麗はしき春の宵
三光堂の慶事
金屏に梅と櫻の契りかな
松本前田両家は結ぶ
日本蓄音器界の業祖とも云うべき三光堂松本常三郎氏令息松本達雄氏(29)は明治大学を優等にて卒業し爾来父君経営の浅草三光堂に丁稚同様の実務に就いて勤務怠りなく今月に至ったが、嘗て業界の鬼将軍と謳われた京都の木村徳松氏の媒酌にて之も関西業界の重鎮前田弥三郎氏の令嬢よし子嬢(23)と今回結婚した。その披露会は去る23日午後5時半より上野精養軒にて催された。 会場は精養軒2階、入口に面して正装の新郎新婦は両親親近者と共に来賓を迎えた。控室では東喜代駒一の舞踊慢劇、藤間勘妙の舞踊長唄「蓬来」共にレコードを応用して妙技を現した。 当日の来賓は松本前田両家の親戚、達雄氏の友人、各方面の営業関係者等150名、やがて定刻食堂を開いて着席した。和気藹々裡にデザートコースに入る。媒酌人木村徳松氏代理京都西本孝雄氏は新郎新婦を紹介した。之に対し業界を代表して卸同業会長全連東蓄顧問中山喜源治氏、達雄氏友人代表西岡幸作氏、機関誌代表川本社長の祝辞、前田家親戚代表京都徳岡庄太郎氏、松本家親戚及同勤者代表岡幸次郎氏及び前田弥三郎氏の謝辞があり、終りて全連会長東蓄組合長小西孝二氏の音頭にて一同香りも高きシャンペンの乾杯をなし、最後に松本前田両家の萬歳を三唱して目出たくお開きになったが、櫻の如き新郎、梅の如き新婦、春は麗しき千金の宵であった。記者は両家の繁栄を祈るものである。 |
1933年(昭和8年)3月
原写真は白黒(モノクロ)写真です。これをカラー化してみました。