少なくとも、右下肺野には濃度上昇域がある。左下肺野も網状の濃度上昇を
呈しているように見える。掲載した写真がショボいんで分かりにくいが。 では、今回の鍵であるCTである。
両肺に、びまん性にすりガラス状の吸収値上昇を認める。
「うげ、びまん肺かよ」と思ったあなた! あなたは正しい。(^^; 確かに、びまん性肺疾患は鑑別が多く、イヤなジャンルである。 が、だ。 何かに気がつかないか? 次のThin slice CTを見ていただければ、俺が何を言いたいのか、お分かりに なると思う。 拡大してみよう。
分かったっしょ? 「吸収値上昇域に重なって、粗大な網目状の変化がみられる」のである。 びまん性肺疾患で、すりガラス状の吸収値上昇域と重なって、網目状の変化が 見られる疾患。 癌性リンパ管症やサルコイドーシスとしては、粒状変化や気管支血管束の 肥厚に乏しい。 すりガラス状変化は間質性肺炎や過敏性肺炎も鑑別に挙がるが、こんな網目を 呈する例は見たことがない。 「マスクメロン状変化」とか「crazy paving appearance」とか、 そういう単語が出てこれば、正解にはあと一歩である。 というわけで、正解は、皆さんご存じ「肺胞蛋白症」である。 この疾患、「肺胞内にPAS反応陽性の糖蛋白質が沈着する」というのが 本態らしい。つまり、即物的に言えば「PAS染色で染まる」って事やね。 原因は不明。何らかの物質の吸引が原因って説もあるけど、はっきりしない らしい。 4:1で男性に多い。どんな年齢でも起こるが、30〜40代に多い。 多くは咳や軽度の労作時呼吸苦、胸痛などで発症するらしい。 治療だが、多くは肺胞洗浄で治るんだが、効かないものもあるとか。 症状は亜急性に進行することが多く、急激な悪化は感染をかぶっている ことが多いとか。気をつけよう。 ところで、これは肝心なことなんだが、肺胞蛋白症に必ず今回のような マスクメロンが見られるわけではないってことは覚えている必要がある。 ものの本によると、肺胞蛋白症のCTは、 ・air bronchogramが目立ち、細菌性肺炎に似るが辺縁は比較的明瞭な症例 ・過敏性肺炎に似て、辺縁明瞭なすりガラス状変化を示す症例 ・すりガラス状変化もあるが網目状変化が目立つ症例 の3パターンあって、特に3番目(つまりは今回みたいなの)が多い、と 書いてある。マスクメロンが多いことは多いのだな。 逆に、こういうマスクメロンを見たら、一撃で「肺胞蛋白症」と診断できる のである。 肺胞蛋白症はマスクメロンとは限らないが、マスクメロンは肺胞蛋白症なのだ。 だから、この網目が目立たなければ、当然、間質性肺炎や過敏性肺炎は鑑別に 挙がるわな。 あ、あと、この網目は何が網目に見えているのかというと、何となく想像 できる通り、小葉間隔壁の肥厚がそう見えるらしいぞ。 とゆーわけで、本日はここまでである。 ←問題へ。 ←トップへ。 |