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2001.2.22



今日は、画像は全くないです。
まぁ、そんなに毎日毎日いい症例はないと言うことだ。
っていうか俺の苦労も考えれ

と、ジャブもそこそこに、本日は「びまん性肺疾患の鑑別のまとめ」について
述べることとするのである。


「びまん性肺疾患」というのは、昨日もちらっと言ったがやっかいな疾患で、
非常に多彩な疾患があり、なおかつ、それぞれが非常に多彩な像を呈する
のである。

なもんで、それらを鑑別するのは非常に難しい。
と言うよりも、ひとつの疾患に絞れる方が稀であろう。多くは「可能性が
高いのはこれ、あとはこれとこれが鑑別に挙がる」とか「これとこれとこれが
鑑別に挙がるけど、どれかは断定できないんで臨床所見と対比しとくれ」とか
そういうレポートになることが多いのである。

ただ、その中でも、画像を見て「可能性が高いのはこれ」と分かること、そして
「これとこれが鑑別に挙がる」ということが分かること、これは非常に大事で
ある。
試験で実際に聞かれるのも、そして日々の仕事に必要なのも、そういう知識なの
だから。

というわけで、そういうアプローチで、今回の話は進めていくこととする。


びまん性肺疾患で、まず大事なこと。それは「病変がどこにあるか」である。
つまりは「病変の局在」の話だ。
「病変の局在」をしっかり把握すると言うことは、「肺の組織学的構造のうち
どういった部分が冒されているかを把握する、ということと同義であり、
それと「各々の疾患がどの辺を冒すか」を突き合わせて、鑑別を絞ろう、という
戦略なのであるな。

それでは、ひとつひとつ行ってみよう。

  1. 小葉中心性分布
    これは、
    径3mm以下の小結節性病変や濃度上昇領域が、
    胸膜及び肺静脈と2〜3mmの一定の間隔を有し、
    肺動脈及び末梢気道と連続する病変」
    という判定基準に当てはまるものである。
    そもそも、「小葉中心性」って言うからには「肺小葉の中心」にある
    病変なわけで、細気管支、肺動脈、小葉中心部の間質内に
    存在するリンパ組織
    といった、いかにも中心にありそうなもの、
    そしてその周囲の肺胞に病変がある場合、このような像を
    呈してくるわけである。
    例えばびまん性細気管支炎(DPB)。これは肺の過膨張と
    びまん性小葉中心性変化が特徴。あと結核を含めた経気道感染、
    珪肺なんかはこういう像を呈してくる。好酸性肉芽腫症
    これ+嚢胞って感じ。

  2. 小葉辺縁性分布
    これはさっきの逆。二次小葉の辺縁に存在する場合であるな。
    この場合は、小葉間隔壁、あるいは小葉辺縁の肺胞に病変がある
    ことになる。
    小葉間隔壁は小葉の外壁であるから、隔壁そのものの病変は正確には
    「辺縁」ではないわけだが、CT上そこまで区別できないんで、一緒に
    ひっくるめるらしい。
    判断基準としては、
    肺静脈や比較的太い肺動脈、気道壁の不規則な腫大や凹凸
     
    が見られたり、胸膜面の凹凸が見られるとき」
    肺静脈や比較的太い肺動脈に重なったり、胸膜に接した
    小結節病変

    と言った感じになろうか。
    さっき言った小葉間隔壁の肥厚は、後述のリンパ行性疾患で見られる。
    あと肺水腫とか。

  3. 汎小葉性分布
    肺病変が、中心にも辺縁にも、つまり二次小葉全域にほぼ均等に
    存在
    する場合、このような像となる。
    判定基準としては、
    「濃度上昇領域と健常な境界の領域が明瞭に直線的に描出される」
    小葉大(約1cm四方の領域)の広がりを持つ病変」
    の2点となるわけだが、実際には1cm四方で済むことはなかなか無く、
    隣接する小葉が幾つか同様の変化を呈する、つまり「一辺数cmの多角形
    吸収値上昇域」となることが多い。この場合も境界が直線であることは
    大きなポイントである。

  4. 気管支血管周囲性分布
    これは、肺血管や気道壁そのものの凹凸や肥厚を呈するものである。
    我々が「気管支血管束の肥厚」と呼んでいる類のものだ。
    この所見は、まず、当然の事ながら、組織学的に血管や気管支壁その
    ものの肥厚を呈する疾患で見られる。いい例が慢性気管支炎
    この疾患では、気管支壁が慢性炎症に伴って肥厚するわけで、CTで
    それがばっちり見られるわけである。
    また、この気管支血管束には、豊富なリンパ組織があるので、リンパ
    行性の進展を示す疾患も、気管支血管束の肥厚を起こす。
    代表的なのは癌性リンパ管症サルコイドーシス。また
    LIP(リンパ性間質性肺炎)、悪性リンパ腫とかのリンパ増殖性疾患も
    鑑別に挙がる。あと、リンパとは関係無いけど肺水腫な。
    また後述するが、この気管支血管束の他にも、小葉中心部、小葉間隔壁、
    胸膜直下にリンパ組織が多いので、リンパ行性の疾患がこういう部分の
    肥厚などを起こしてくることがある。

  5. 二次小葉構造と関係無い分布
    今までは、「二次小葉」という、肺のある意味基本的なユニット単位で
    病変分布を考えてきたのだが、実は、それらの構造に全く関係無く、
    ランダムに肺野内に分布する結節性病変、というのも存在する。
    こういう分布を示すのは血行性進展を示す疾患ってことに
    相場が決まっていて、つまりは悪性腫瘍の転移粟粒結核である。



「分布」に関してはこんなもんだろう。

で、「どこにあるか」が分かったら、今度は「どんな病変か」を考えて
いくことにしよう。つまりは「病変の性状」という話だ。

  1. 肺野濃度上昇
    まぁ、常識的に考えて、非常にわかりやすいのはこれだな。
    ただ、一口に「肺野濃度上昇」と言っても、中には大きく分けて2つの
    パターンがある。
    ひとつが「すりガラス様変化 ground-glass opacity」。これは「内部の
    肺血管が認識可能な
    、比較的淡い濃度上昇」のことである。
    ってことは、もうひとつは「内部の肺血管が認識不可能な
    強い濃度上昇」であり、これを「consolidation」という。
    ただし、consolidationには無気肺は含まれない。あくまで体積が
    きちんとあって、かつ、濃度上昇が強いもの、と言うことであるな。
    なお、イメージ的に、consolidationが「肺胞内に空気以外のものが
    いっぱい詰まった状態」、すりガラス様変化は「肺胞内に空気以外の
    ものが少し入ってるけど空気も入ってる状態」だと考えれば、それぞれの
    変化の成り立ちがわかりやすいかも知れない。

  2. 肺野濃度低下
    当然、これも異常である。
    気腫性変化がこれ。ブラやブレブ、あとは好酸性肉芽腫症の嚢胞や
    感染、転移性腫瘍に伴う空洞もこのジャンルに入る。DPBの過膨脹も
    ここでいいだろう。

  3. 結節
    まぁ、これはいいだろう。
    結節を見たとき問題となるのが、特にびまん性の場合は、それが小葉
    中心性であるのか否か。胸膜直下にあってリンパ行性が疑われる場合、
    血行性で二次小葉に関係無い場合もあったな。


以上を把握しておけば、面接でびまん性肺疾患のCTなんぞをポンと出された
時にも、「どこに」「どんな」病変があるかを、とりあえず答えることが出来る
わけである。

じゃあ、一歩進んで、その病変の局在と性状から、それぞれが果たしてどんな
疾患なのか、それに関して言及するには‥‥それはまた明日のお楽しみであり、
俺は今日はもう寝るのである。(^^;;


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