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『蜻蛉(大島本)』
「うつつの世には、などかくしも思ひ晴れず、のどかにて過ぐしけむ。ただ今は、さらに思ひ静めむ方なきままに、悔しきことの数知らず。かかることの筋につけて、いみじうものすべき宿世なりけり。さま異に心ざしたりし身の、思ひの外に、かく例の人にてながらふるを、仏などの憎しと見たまふにや。人の心を起こさせむとて、仏のしたまふ方便は、慈悲をも隠して、かやうにこそはあなれ」
と思ひ続けたまひつつ、行ひをのみしたまふ。
[第三段 匂宮悲しみに籠もる]
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第二章 浮舟の物語 浮舟失踪と薫、匂宮
[第二段 薫の後悔]
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