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 『須磨(大島本)

 三月二十日あまりのほどになむ、都を離れたまひける。人にいつとしも知らせたまはず、ただいと近う仕うまつり馴れたる限り、七、八人ばかり御供にて、いとかすかに出で立ちたまふ。さるべき所々に、御文ばかりうち忍びたまひしにも、あはれと忍ばるばかり尽くいたまへるは、見どころもありぬべかりしかど、その折の、心地の紛れに、はかばかしうも聞き置かずなりにけり。

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  第一章 光る源氏の物語 逝く春と離別の物語  [第二段 左大臣邸に離京の挨拶]

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