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 『葵(大島本)

 大殿には、御もののけいたう起こりて、いみじうわづらひたまふ。「この御生きすだま、故父大臣の御霊など言ふものあり」と聞きたまふにつけて、思しつづくれば、
 「身一つの憂き嘆きよりほかに、人を悪しかれなど思ふ心もなけれど、もの思ひにあくがるなる魂は、さもやあらむ」
 と思し知らるることもあり。

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  第二章 葵の上の物語 六条御息所がもののけとなってとり憑く物語  [第三段 葵の上に御息所のもののけ出現する]

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