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 『賢木(大島本)

 夜深き暁月夜の、えもいはず霧りわたれるに、いといたうやつれて、振る舞ひなしたまへるしも、似るものなき御ありさまにて、承香殿の御兄の藤少将、藤壺より出でて、月の少し隈ある立蔀のもとに立てりけるを、知らで過ぎたまひけむこそいとほしけれ。もどききこゆるやうもありなむかし。
 かやうのことにつけても、もて離れつれなき人の御心を、かつはめでたしと思ひきこえたまふものから、わが心の引くかたにては、なほつらう心憂し、とおぼえたまふ折多かり。

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  第二章 光る源氏の物語 父桐壺帝の崩御  [第四段 源氏朧月夜と逢瀬を重ねる]

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