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『薄雲(大島本)』
「心に知らで過ぎなましかば、後の世までの咎めあるべかりけることを、今まで忍び籠められたりけるをなむ、かへりてはうしろめたき心なりと思ひぬる。またこの事を知りて漏らし伝ふるたぐひやあらむ」
とのたまはす。
「さらに、なにがしと王命婦とより他の人、この事のけしき見たるはべらず。さるによりなむ、いと恐ろしうはべる。天変しきりにさとし、世の中静かならぬは、このけなり。いときなく、ものの心知ろし召すまじかりつるほどこそはべりつれ、やうやう御齢足りおはしまして、何事もわきまへさせたまふべき時に至りて、咎をも示すなり。よろづのこと、親の御世より始まるにこそはべるなれ。何の罪とも知ろし召さぬが恐ろしきにより、思ひたまへ消ちてしことを、さらに心より出しはべりぬること」
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第四章 冷泉帝の物語 出生の秘密と譲位ほのめかし
[第二段 冷泉帝、出生の秘密を知る]
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