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 『椎本(大島本)

 闇に惑ひたまへる御あたりに、いとまばゆく匂ひ満ちて入りおはしたれば、かたはらいたうて、御いらへなどをだにえしたまはねば、
 「かやうには、もてないたまはで、昔の御心むけに従ひきこえたまはむさまならむこそ、聞こえ承るかひあるべけれ。なよびけしきばみたる振る舞ひをならひはべらねば、人伝てに聞こえはべるは、言の葉も続きはべらず」

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  第三章 宇治の姉妹の物語 晩秋の傷心の姫君たち  [第四段 薫、宇治を訪問]

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