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『蜻蛉(大島本)』
いと夢のやうにのみ、なほ、「いかで、いとにはかなりけることにかは」とのみいぶせければ、例の人びと召して、右近を迎へに遣はす。母君も、さらにこの水の音けはひを聞くに、我もまろび入りぬべく、悲しく心憂きことのどまるべくもあらねば、いとわびしうて帰りたまひにけり。
念仏の僧どもを頼もしき者にて、いとかすかなるに入り来たれば、ことことしく、にはかに立ちめぐりし宿直人どもも、見とがめず。「あやにくに、限りのたびしも入れたてまつらずなりにしよ」と、思ひ出づるもいとほし。
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第三章 匂宮の物語 匂宮、侍従を迎えて語り合う
[第二段 匂宮、右近を迎えに時方派遣]
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