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『葵(大島本)』
御いらへ、時々聞こえたまふも、なほいと弱げなり。されど、むげに亡き人と思ひきこえし御ありさまを思し出づれば、夢の心地して、ゆゆしかりしほどのことどもなど聞こえたまふついでにも、かのむげに息も絶えたるやうにおはせしが、引き返し、つぶつぶとのたまひしことども思し出づるに、心憂ければ、
「いさや、聞こえまほしきこといと多かれど、まだいとたゆげに思しためればこそ」
とて、「御湯参れ」などさへ、扱ひきこえたまふを、いつならひたまひけむと、人々あはれ がりきこゆ。
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第二章 葵の上の物語 六条御息所がもののけとなってとり憑く物語
[第五段 葵の上、男子を出産]
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