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 『総角(大島本)

 逢ふ人からにもあらぬ秋の夜なれど、ほどもなく明けぬる心地して、いづれと分くべくもあらずなまめかしき御けはひを、人やりならず飽かぬ心地して、
 「あひ思せよ。いと心憂くつらき人の御さま、見習ひたまふなよ」
 など、後瀬を契りて出でたまふ。我ながらあやしく夢のやうにおぼゆれど、なほつれなき人の御けしき、今一たび見果てむの心に、思ひのどめつつ、例の、出でて臥したまへり。

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  第二章 大君の物語 大君、中の君を残して逃れる  [第六段 薫、相手を中の君と知る]

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