検索結果詳細


 『手習(大島本)

 「夢のやうなる人を見たてまつるかな」と尼君は喜びて、せめて起こし据ゑつつ、御髪手づから削りたまふ。さばかりあさましう、ひき結ひてうちやりたりつれど、いたうも乱れず、解き果てたれば、つやつやとけうらなり。一年足らぬ九十九髪多かる所にて、目もあやに、いみじき天人の天降れるを見たらむやうに思ふも、危ふき心地すれど、
 「などか、いと心憂く、かばかりいみじく思ひきこゆるに、御心を立てては見えたまふ。いづくに誰れと聞こえし人の、さる所にはいかでおはせしぞ」
 と、せめて問ふを、いと恥づかしと思ひて、

 168/682 169/682 170/682

  第二章 浮舟の物語 浮舟の小野山荘での生活  [第五段 浮舟、素性を隠す]

  [Index]