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『蜻蛉(大島本)』
宮は、この人参れり、と聞こし召すもあはれなり。女君には、あまりうたてあれば、聞こえたまはず。寝殿におはしまして、渡殿に降ろしたまへり。ありけむさまなど詳しう問はせたまふに、日ごろ思し嘆きしさま、その夜泣きたまひしさま、
「あやしきまで言少なに、おぼおぼとのみものしたまひて、いみじと思すことをも、人にうち出でたまふことは難く、ものづつみをのみしたまひしけにや、のたまひ置くこともはべらず。夢にも、かく心強きさまに思しかくらむとは、思ひたまへずなむはべりし」
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第三章 匂宮の物語 匂宮、侍従を迎えて語り合う
[第四段 侍従、京の匂宮邸へ]
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