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『幻(大島本)』
入道の宮の渡りはじめたまへりしほど、その折はしも、色にはさらに出だしたまはざりしかど、ことにふれつつ、あぢきなのわざやと、思ひたまへりしけしきのあはれなりし中にも、雪降りたりし暁に立ちやすらひて、わが身も冷え入るやうにおぼえて、空のけしき激しかりしに、いとなつかしうおいらかなるものから、袖のいたう泣き濡らしたまへりけるをひき隠し、せめて紛らはしたまへりしほどの用意などを、夜もすがら、「夢にても、またはいかならむ世にか」と、思し続けらる。
曙にしも、曹司に下るる女房なるべし、
「いみじうも積もりにける雪かな」
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第一章 光る源氏の物語 紫の上追悼の春の物語
[第二段 雪の朝帰りの思い出]
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