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『玉鬘(大島本)』
「わが君は、いかがなりたまひにし。ここらの年ごろ、夢にてもおはしまさむ所を見むと、大願を立つれど、遥かなる世界にて、風の音にてもえ聞き伝へたてまつらぬを、いみじく悲しと思ふに、老いの身の残りとどまりたるも、いと心憂けれど、うち捨てたてまつりたまへる若君の、らうたくあはれにておはしますを、冥途のほだしにもてわづらひきこえてなむ、またたきはべる」
と言ひ続くれば、昔その折、いふかひなかりしことよりも、応へむ方なくわづらはしと思へども、
「いでや、聞こえてもかひなし。御方は、はや亡せたまひにき」
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第三章 玉鬘の物語 玉鬘、右近と椿市で邂逅
[第四段 右近、玉鬘に再会す]
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