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 『明石(大島本)

 ほのかなるけはひ、伊勢の御息所にいとようおぼえたり。何心もなくうちとけてゐたりけるを、かうものおぼえぬに、いとわりなくて、近かりける曹司の内に入りて、いかで固めけるにか、いと強きを、しひてもおし立ちたまはぬさまなり。されど、さのみもいかでかあらむ。
 人ざま、いとあてに、そびえて、心恥づかしきけはひぞしたる。かうあながちなりける契りを思すにも、浅からずあはれなり。御心ざしの、近まさりするなるべし、常は厭はしき夜の長さも、とく明けぬる心地すれば、「人に知られじ」と思すも、心あわたたしうて、こまかに語らひ置きて、出でたまひぬ。

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  第三章 明石の君の物語 結婚の喜びと嘆きの物語  [第二段 明石の君を初めて訪ねる]

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