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 『行幸(大島本)

 世の人聞きに、「しばしこのこと出ださじ」と、切に籠めたまへど、口さがなきものは世の人なりけり。自然に言ひ漏らしつつ、やうやう聞こえ出で来るを、かのさがな者の君聞きて、女御の御前に、中将、少将さぶらひたまふに出で来て、
 「殿は、御女まうけたまふべかなり。あな、めでたや。いかなる人、二方にもてなさるらむ。聞けば、かれも劣り腹なり」
 と、あふなげにのたまへば、女御、かたはらいたしと思して、ものものたまはず。中将、

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  第三章 玉鬘の物語 裳着の物語  [第六段 近江の君、玉鬘を羨む]

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