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 『総角(大島本)

 宮は、いつしかと御文たてまつりたまふ。山里には、誰も誰もうつつの心地したまはず、思ひ乱れたまへり。「さまざまに思し構へけるを、色にも出だしたまはざりけるよ」と、疎ましくつらく、姉宮をば思ひきこえたまひて、目も見合はせたてまつりたまはず。知らざりしさまをも、さはさはとは、えあきらめたまはで、ことわりに心苦しく思ひきこえたまふ。
 人びとも、「いかにはべりしことにか」など、御けしき見たてまつれど、思しほれたるやうにて、頼もし人のおはすれば、「あやしきわざかな」と思ひあへり。御文もひき解きて見せたてまつりたまへど、さらに起き上がりたまはねば、「いと久しくなりぬ」と御使わびけり。

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  第三章 中の君の物語 中の君と匂宮との結婚  [第六段 匂宮、中の君へ後朝の文を書く]

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