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『宿木(大島本)』
かくて後、二条院に、え心やすく渡りたまはず。軽らかなる御身ならねば、思すままに、昼のほどなどもえ出でたまはねば、やがて同じ南の町に、年ごろありしやうにおはしまして、暮るれば、また、え引き避きても渡りたまはずなどして、待ち遠なる折々あるを、
「かからむとすることとは思ひしかど、さしあたりては、いとかくやは名残なかるべき。げに、心あらむ人は、数ならぬ身を知らで、交じらふべき世にもあらざりけり」
と、返す返すも山路分け出でけむほど、うつつともおぼえず悔しく悲しければ、
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第四章 薫の物語 中君に同情しながら恋慕の情高まる
[第三段 中君と薫、手紙を書き交す]
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