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 『夕霧(大島本)

 ほどさへ遠くて、入りたまふほど、いと心すごし。ゆゆしげに引き隔てめぐらしたる儀式の方は隠して、この西面に入れたてまつる。大和守出で来て、泣く泣くかしこまりきこゆ。妻戸の簀子におし掛かりたまうて、女房呼び出でさせたまふに、ある限り、心も収まらず、物おぼえぬほどなり。
 かく渡りたまへるにぞ、いささか慰めて、少将の君は参る。物もえのたまひやらず。涙もろにおはせぬ心強さなれど、所のさま、人のけはひなどを思しやるも、いみじうて、常なき世のありさまの、人の上ならぬも、いと悲しきなりけり。ややためらひて、

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  第三章 一条御息所の物語 行き違いの不幸  [第八段 夕霧の弔問]

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