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『若紫(大島本)』
「今日は、いと便なくなむはべるべき。宮の渡らせたまはむには、いかさまにか聞こえやらむ。おのづから、ほど経て、さるべきにおはしまさば、ともかうもはべりなむを、いと思ひやりなきほどのことにはべれば、さぶらふ人びと苦しうはべるべし」と聞こゆれば、
「よし、後にも人は参りなむ」とて、御車寄せさせたまへば、あさましう、いかさまにと思ひあへり。
若君も、あやしと思して泣いたまふ。少納言、とどめきこえむかたなければ、昨夜縫ひし御衣どもひきさげて、自らもよろしき衣着かへて、乗りぬ。
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第三章 紫上の物語(2) 若紫の君、源氏の二条院邸に盗み出される物語
[第三段 源氏、紫の君を盗み取る]
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